[写真]大石尚子さん、参議院ホームページから。
かなり驚きました。民主党参院議員(全国比例)の大石尚子(おおいし・ひさこ)さんが、2012年1月4日、亡くなったそうです。享年75。衆参あわせて、勤続9年5ヶ月。
心から、ご冥福をお祈りいたします。
先の第179臨時国会中(10月下旬)にお元気なお姿をお見受けしました。ただ、今改めて、第179臨時国会の参議院本会議押しボタン式投票結果をみたところ、11月21日の本会議では投票しています。が、12月2日、7日、そして、会期末だった平成23年20011年12月9日の本会議では投票の記録が残っていません。欠席ということでしょう。
言うまでもなく大石尚子さんは、日露戦争、とくに日本海海戦の英雄である元海軍中将・秋山真之(あきやま・さねゆき)の実の孫(娘の娘)です。真之らを主人公にしたNHKスペシャル大河ドラマ「坂の上の雲」が12月放送され、3年がかりで完結しました。しかし、最後の4回分が放送されていた間は、体調を崩されていたようです。第179臨時国会では「参院倫選特」(政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会)の筆頭理事を務めていました。
哀悼を込めて、2009年11月17日の政権交代後初の第173臨時国会での参院外交防衛委員会の国会傍聴記を下に載せさせていただきます。これは会員制ブログの方に当時載せたものです。現在は会員制ブログは、今後の政治日程限定となっていますが、当時は傍聴記も載せていました。
訃報の直後にこういうことを書くのも気が引けます。しかし政治空白は許されません。現在、名簿で次点なのは斎藤勁さんです。同じ民主党神奈川県連ですが、斎藤さんは現在衆院議員で官房副長官です。衆院の任期は「2013年8月ないしは解散」まで、大石さんの任期は「2013年7月まで」となります。斎藤さんの官房副長官職は慣例として「衆院枠」とされていることもあり、斎藤さんはおそらく繰り上げ当選を辞退するとみるのが妥当です。その場合は、第44回衆院選で落選した元衆院議員、玉置一弥(たまき・かずや)さんが対象となり、6年半ぶりの国政復帰となりそうです。玉置さんは衆院通算8期のベテラン。世襲議員であり、労組出身ではありません。京都の日産労連のはたらく仲間の応援を受けていました。衆院議員としては新進党解党までがんばり、新党友愛では国対委員長を務めました。私は玉置国対委員長の担当記者を務めさせていただきましたが、とてもとても人柄がいい人です。新進党解党から第2次民主党結党の段階で、かなり深刻に悩んでいた30歳代の議員の相談に乗っていました。
大石先生は、上品で、おしとやかで、清楚で、大所高所から物事を見ている議員でした。良識の府・参議院、旧貴族院の薫りがする議員でした。現在、参議院でそのような議員、さらに言えば、参院民主党(民主党・新緑風会)では大石先生しかいないという状態にまで参議院は変わり果ててしまいました。強いて言えば、自民党の宮沢洋一さん。ただ、大石さんの訃報で、参議院には上品な議員がまったくいない状態になったと考えます。しゃべり方から違いますからね。参議院の制度は抜本的に変えないといけません。
おととしあたり、官報で、玉置さんの政治団体が解散されたという総務大臣告示を見ました。ちょうど塩爺こと塩川正十郎さんの政治団体と同じ日でした。だから、玉置さんは引退したのだ、と私は認識していました。ですから、仮に玉置一弥・参院議員となったら、玉置さんにはいっさいのしがらみのない大所高所からの発言を期待します。玉置さんは宮澤解散(第40回衆院選)で落選しています。ですから、民社協会ベテランでは異例なことに、細川・羽田内閣に参加していません。勤続20年なのに、与党経験は0日のはずです。「シー、黙ってて」と言われそうですが。
大石さんは、民社党の神奈川県議や、民主党の衆院議員を経て、第21回参院選に出馬。このときは全国比例次点となりましたが、山本孝史(やまもと・たかし)さんのあとを次いで、参院議員のバトンを受け継ぎました。ちなみに、大石さんは神奈川県会議員としては、映画の松竹大船撮影所労組出身の金子県議から民社の議席を受け継いでいます。この金子県議の子息が、神奈川選挙区選出の金子洋一参院議員です。そしてまたバトンタッチすることになります。
あるいは、神奈川では、きのうとおとといの2日間、箱根駅伝があり、大石さんより半世紀以上後に生まれたすばらしい若者たちが圧倒的な新記録を更新しました。だから、襷リレーと言ってもいいですが、「民社の襷」は地味ながらしっかり受け継がれていることになります。まさに古豪です。
大石尚子さん、ありがとうございました。
[会員制ブログから引用はじめ]
「波静かな委員会を期待」に議場わく 秋山真之・栗林忠道の実孫が防衛大臣に質問(2009年11月17日付)
11月17日の国会で、日露戦争の英雄である秋山真之・海軍中将と、太平洋戦争で硫黄島総指揮官だった栗林忠道・陸軍中将の各々の孫が北澤俊美防衛大臣と岡田克也外務大臣に質問するという珍しい出来事がありました。
秋山真之(さねゆき)はNHKが今月29日から3年間にわたり放送するスペシャルドラマ「坂の上の雲」(司馬遼太郎原作)の主人公です。日露戦争の決着をつけた日本海海戦のほとんどの作戦図は海軍参謀だった秋山が書いた物です。
【2009-11-17 参院外交防衛委員会 大臣所信表明に対する一般質疑】
秋山真之の実孫である、大石尚子(ひさこ)参院議員(民主党・新緑風会、全国比例)が午後の参院外交防衛委員会で質問に立ちました。今国会から初めて外防委のメンバーに加わっています。
海軍の参謀だった秋山は、日本海海戦のスタートを本国に「本日天気晴朗なれども波高し」と打電しました。
大石さんは質問の冒頭、「この委員会を、実り多い、波静かな委員会として」と切り出し、議場が大いに沸きました。
「本日天気晴朗なれども波高し」--。
司馬遼太郎著「坂の上の雲」(文春文庫)によると、秋山は文学者になりたかったようですが、家計の事情から海軍に進みました。この電文は、日本海海戦により非欧米国として初めて「一等国」に踊り出て、そして、坂の上の雲から、先の大戦へと転落していく我が国の未来を暗示している、ととらえることができる名文です。明治の「官僚答弁」はすごかったと感じさせます。
【2009-11-17 衆院安全保障委員会 大臣所信表明に対する一般質疑】
これに先立つ午前中の衆院安全保障委員会でも、同じく岡田外相と北澤防衛相がコンビで一般質疑にのぞみました。
自民党の新藤義孝・衆院議員への北澤防衛相の答弁に私は驚きました。
北澤防衛相によると、新藤議員の祖父は、太平洋戦争の硫黄島総指揮官として戦死した栗林忠道・陸軍中将で、長野にゆかりのある人物だとして、「その孫とここで議論できることは名誉だ」としました。梯久美子著「散るぞ悲しき」(新潮社)によると、栗林は部下に「玉砕」をいさめさせながら、最後に戦死しています。最期を見届けた部下が一人も生還していないので、最期の姿はよく分からない面があるようです。
新藤議員は、北澤大臣の答弁に虚をつかれたようで、「しっかり追及しないといけないことは追及しますよ」と反論しましたが、声を小さくしながら、「ふれていただいてありがとうございます」とお礼を述べました。
戦争や決闘ではなく、国会の中で戦う。日本を代表する軍人の孫たちがスーツを着て、国会の中で防衛大臣と議論で戦う。日本が平和であることが確認できました。
[引用終わり]
[当ブログ内の関連エントリー紹介]
秋山真之の孫・大石尚子さん「人生は有限であります」と与謝野馨大臣の入閣に理解
[紹介おわり]
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