渡辺恒雄あとつぎ宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[訃報]さようなら参議院議員・大石尚子さん

2012年01月04日 21時07分56秒 | その他

[写真]大石尚子さん、参議院ホームページから。

 かなり驚きました。民主党参院議員(全国比例)の大石尚子(おおいし・ひさこ)さんが、2012年1月4日、亡くなったそうです。享年75。衆参あわせて、勤続9年5ヶ月。

 心から、ご冥福をお祈りいたします。

 先の第179臨時国会中(10月下旬)にお元気なお姿をお見受けしました。ただ、今改めて、第179臨時国会の参議院本会議押しボタン式投票結果をみたところ、11月21日の本会議では投票しています。が、12月2日、7日、そして、会期末だった平成23年20011年12月9日の本会議では投票の記録が残っていません。欠席ということでしょう。

 言うまでもなく大石尚子さんは、日露戦争、とくに日本海海戦の英雄である元海軍中将・秋山真之(あきやま・さねゆき)の実の孫(娘の娘)です。真之らを主人公にしたNHKスペシャル大河ドラマ「坂の上の雲」が12月放送され、3年がかりで完結しました。しかし、最後の4回分が放送されていた間は、体調を崩されていたようです。第179臨時国会では「参院倫選特」(政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会)の筆頭理事を務めていました。

 哀悼を込めて、2009年11月17日の政権交代後初の第173臨時国会での参院外交防衛委員会の国会傍聴記を下に載せさせていただきます。これは会員制ブログの方に当時載せたものです。現在は会員制ブログは、今後の政治日程限定となっていますが、当時は傍聴記も載せていました。

 訃報の直後にこういうことを書くのも気が引けます。しかし政治空白は許されません。現在、名簿で次点なのは斎藤勁さんです。同じ民主党神奈川県連ですが、斎藤さんは現在衆院議員で官房副長官です。衆院の任期は「2013年8月ないしは解散」まで、大石さんの任期は「2013年7月まで」となります。斎藤さんの官房副長官職は慣例として「衆院枠」とされていることもあり、斎藤さんはおそらく繰り上げ当選を辞退するとみるのが妥当です。その場合は、第44回衆院選で落選した元衆院議員、玉置一弥(たまき・かずや)さんが対象となり、6年半ぶりの国政復帰となりそうです。玉置さんは衆院通算8期のベテラン。世襲議員であり、労組出身ではありません。京都の日産労連のはたらく仲間の応援を受けていました。衆院議員としては新進党解党までがんばり、新党友愛では国対委員長を務めました。私は玉置国対委員長の担当記者を務めさせていただきましたが、とてもとても人柄がいい人です。新進党解党から第2次民主党結党の段階で、かなり深刻に悩んでいた30歳代の議員の相談に乗っていました。

 大石先生は、上品で、おしとやかで、清楚で、大所高所から物事を見ている議員でした。良識の府・参議院、旧貴族院の薫りがする議員でした。現在、参議院でそのような議員、さらに言えば、参院民主党(民主党・新緑風会)では大石先生しかいないという状態にまで参議院は変わり果ててしまいました。強いて言えば、自民党の宮沢洋一さん。ただ、大石さんの訃報で、参議院には上品な議員がまったくいない状態になったと考えます。しゃべり方から違いますからね。参議院の制度は抜本的に変えないといけません。

 おととしあたり、官報で、玉置さんの政治団体が解散されたという総務大臣告示を見ました。ちょうど塩爺こと塩川正十郎さんの政治団体と同じ日でした。だから、玉置さんは引退したのだ、と私は認識していました。ですから、仮に玉置一弥・参院議員となったら、玉置さんにはいっさいのしがらみのない大所高所からの発言を期待します。玉置さんは宮澤解散(第40回衆院選)で落選しています。ですから、民社協会ベテランでは異例なことに、細川・羽田内閣に参加していません。勤続20年なのに、与党経験は0日のはずです。「シー、黙ってて」と言われそうですが。

 大石さんは、民社党の神奈川県議や、民主党の衆院議員を経て、第21回参院選に出馬。このときは全国比例次点となりましたが、山本孝史(やまもと・たかし)さんのあとを次いで、参院議員のバトンを受け継ぎました。ちなみに、大石さんは神奈川県会議員としては、映画の松竹大船撮影所労組出身の金子県議から民社の議席を受け継いでいます。この金子県議の子息が、神奈川選挙区選出の金子洋一参院議員です。そしてまたバトンタッチすることになります。

 あるいは、神奈川では、きのうとおとといの2日間、箱根駅伝があり、大石さんより半世紀以上後に生まれたすばらしい若者たちが圧倒的な新記録を更新しました。だから、襷リレーと言ってもいいですが、「民社の襷」は地味ながらしっかり受け継がれていることになります。まさに古豪です。

 大石尚子さん、ありがとうございました。

[会員制ブログから引用はじめ]

「波静かな委員会を期待」に議場わく 秋山真之・栗林忠道の実孫が防衛大臣に質問(2009年11月17日付)

 11月17日の国会で、日露戦争の英雄である秋山真之・海軍中将と、太平洋戦争で硫黄島総指揮官だった栗林忠道・陸軍中将の各々の孫が北澤俊美防衛大臣と岡田克也外務大臣に質問するという珍しい出来事がありました。

 秋山真之(さねゆき)はNHKが今月29日から3年間にわたり放送するスペシャルドラマ「坂の上の雲」(司馬遼太郎原作)の主人公です。日露戦争の決着をつけた日本海海戦のほとんどの作戦図は海軍参謀だった秋山が書いた物です。

【2009-11-17 参院外交防衛委員会 大臣所信表明に対する一般質疑】



 秋山真之の実孫である、大石尚子(ひさこ)参院議員(民主党・新緑風会、全国比例)が午後の参院外交防衛委員会で質問に立ちました。今国会から初めて外防委のメンバーに加わっています。


 海軍の参謀だった秋山は、日本海海戦のスタートを本国に「本日天気晴朗なれども波高し」と打電しました。

 大石さんは質問の冒頭、「この委員会を、実り多い、波静かな委員会として」と切り出し、議場が大いに沸きました。

 「本日天気晴朗なれども波高し」--。


 司馬遼太郎著「坂の上の雲」(文春文庫)によると、秋山は文学者になりたかったようですが、家計の事情から海軍に進みました。この電文は、日本海海戦により非欧米国として初めて「一等国」に踊り出て、そして、坂の上の雲から、先の大戦へと転落していく我が国の未来を暗示している、ととらえることができる名文です。明治の「官僚答弁」はすごかったと感じさせます。


【2009-11-17 衆院安全保障委員会 大臣所信表明に対する一般質疑】

 これに先立つ午前中の衆院安全保障委員会でも、同じく岡田外相と北澤防衛相がコンビで一般質疑にのぞみました。


 自民党の新藤義孝・衆院議員への北澤防衛相の答弁に私は驚きました。

 北澤防衛相によると、新藤議員の祖父は、太平洋戦争の硫黄島総指揮官として戦死した栗林忠道・陸軍中将で、長野にゆかりのある人物だとして、「その孫とここで議論できることは名誉だ」としました。梯久美子著「散るぞ悲しき」(新潮社)によると、栗林は部下に「玉砕」をいさめさせながら、最後に戦死しています。最期を見届けた部下が一人も生還していないので、最期の姿はよく分からない面があるようです。

 新藤議員は、北澤大臣の答弁に虚をつかれたようで、「しっかり追及しないといけないことは追及しますよ」と反論しましたが、声を小さくしながら、「ふれていただいてありがとうございます」とお礼を述べました。

 戦争や決闘ではなく、国会の中で戦う。日本を代表する軍人の孫たちがスーツを着て、国会の中で防衛大臣と議論で戦う。日本が平和であることが確認できました。

[引用終わり]

[当ブログ内の関連エントリー紹介]
秋山真之の孫・大石尚子さん「人生は有限であります」と与謝野馨大臣の入閣に理解
[紹介おわり]


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◎民主党は衆院小選挙区も「身を切る」 野田総理の年頭記者会見

2012年01月04日 14時35分52秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗

[画像]平成24年、2012年の年頭記者会見にのぞむ首相で民主党代表の野田佳彦さん(首相官邸ホームページから)

 総理で民主党代表の野田佳彦さんは平成24年(2012年)1月4日(水)朝10時から、首相官邸で記者会見しました。

 野田内閣総理大臣年頭記者会見 -首相官邸ホームページ

 その後、伊勢神宮に向かいました。

 野田さんは、1票の格差をなくす定数是正と、民主党マニフェストが定める「衆院の定数80削減」に関して、新しい考え方を示しました。

 総理は、「あのーこないだまとめた税調の中での文章でも、「最初は比例80(削減)うんぬん」と入っていたと思いますが、「(比例の文字がとれて、)定数削減」に変わったと思うんです」と述べました。

 実際に、確認したら、先月29日の「税制抜本改革骨子」には、たしかに定数削減だけで、比例とは書いてありません。




[画像]民主党の税制調査会などが先月29日にまとめた「税制抜本改革骨子」、民主党ホームページから。

 あらためて確認しましたが、ペーパーには、消費税増税の前に、民主党として「衆議院議員定数を80削減する法案を出す」としか書いてありません。細川護煕内閣が成立させた政治改革関連法施行時は、「小選挙区300、比例200」でした。現在は「小選挙区300、比例180」になっています。

 自民党の細田博之さんは比例を30削減して、「比例150」を主張しています。これとは別に定数是正で「0増5減案」を採用すべし、としているので、定数是正と定数削減の双方が実現すると、「小選挙区295、比例150」になります。ですから、自民党は「35削減」ということになります。これには総選挙で支援を受ける公明党への配慮があります。

 公明党ら7つの中小政党は比例定数(現在は180)の削減に反対しています。そのうえで、小選挙区比例代表連用制や中選挙区制など様々なプランが混在する状況となっています。

 民主党は、「小選挙区300、比例100」を主張してきました。が、7つの中小政党はもとより、自民党も乗らないことになると、公職選挙法改正案は参議院で通りません。

 これに関して、民主党最高顧問の岡田克也さんは、昨年末のブログで次のように述べています。

岡田かつやTALK-ABOUTの2011年12月30日付エントリーから引用はじめ]

 昨日(29日)の夜遅く、深夜12時に近くになり、社会保障と税の一体改革の中の税の部分についての党内合意ができました。

(中略)

 もう1つ私が申し上げたことは議員定数の削減です。マニフェストで、衆議院の比例定数を80議席削減することを謳っています。そのことはしっかりやらなければいけません。しかし、それを実現するにあたって、比例だけで80議席と言った瞬間に、公明党や社民党、共産党、あるいは与党の国民新党ですら、これに反対してそこで話が止まってしまいます。したがって、法案は通らないわけです。そういうことではダメなので、比例80議席削減はマニフェストで書かれたことだが、同じ80議席でも小選挙区も削るという覚悟を持ってやらないと、与野党間で話はできない。そういう覚悟を持ってくださいということを申し上げました。 つまり、言うだけではダメなので、絶対に比例で80議席削減すべきだということは簡単ですが、それは簡単には実現しませんので、さらに身を削り小選挙区も削り、トータルで80議席削減とする。本当に覚悟を示すならそういう覚悟を持ってくれと皆さんに申し上げました。 いずれにしても、文章を直しながら最終的に合意されたことはよかったと思います。(後略)


[引用おわり]

 岡田さんが「小選挙区でも定数削減をすべきだ」と主張して、修文(文章の手直し)がされたようです。

 野田さんや岡田さんは新進党勢で都市部選出なので、公明党との人脈面、心情面での結びつきが強いです。また、岡田さんは米国型の二大政党制を「カルテルのようなもの」と批判し、比例を活用して、第3党が二大政党の一翼に躍進するしくみを目指しています。著書の「岡田語り。」では2010年の英国での政権交代をみて、「常に単独政権であり、主要政党は2つしかないということは、寡占状態でもあるということなので、今ひとつ柔軟性を欠くわけです。二大政党が自己革新を怠れば、常に第三政党がそれに取って代わるというしくみを用意しておく必要があります」と話しています。「岡田語り。」の299ページ。

 定数是正や新区割りの前提となる2010年国勢調査では、鳥取県の人口は59・2万人、全国は12623万人でした。仮に鳥取県を1区(全県区)だけにすると、小選挙区は単純計算で全国で213必要になります。いくら身を切ると言っても、この213議席より少なくしろという極端な案はいけません。民主主義の最低限のコストです。ただ、213だけでは足りません。47都道府県の基礎配分(1人別枠方式)をなくし、そのうえで47都道府県内で1票が平等な線引きをするには、のりしろが必要です。おそらく250小選挙区前後以上は、必要でしょう。「小選挙区250、比例150」となります。世論の後押しがあれば自民党と公明党も、衆参とも賛成するでしょう。

 ここからは、民主党の第46回衆院選の選挙戦術だけに絞って考えます。300小選挙区のまま、最高裁判決にもとづく定数是正、すなわち1人別枠方式廃止と2010年国勢調査の反映をします。その後、ここ10年間の市町村合併も配慮して新しい区割りを線引きします。まず、東京都は定数が増えます。それは小選挙区割りが狭くなり、区割り変更する選挙区は増えます。このほか、長野県、岐阜県、静岡県で定数が1つ増える可能性があります。いちがいには言えませんが、第45回衆院選まで使われた小選挙区割りは変更され、1つの選挙区が狭くなります。

 でも、民主党長野県連は、現行3区で羽田孜さんが引退する後継者問題に加えて、2・4・5区では自民党支部長が追い上げており、すでに逆転しているとの見立てもあります。1区は自民党支部長がいまだに空席ですが、もともと人口が多い(1票が軽い)選挙区なので、区割りが狭くなる可能性が高くなっています。現職(篠原孝さん)は自分が有利な新選挙区を選べばいいわけですが、後援会員では淋しさもあり、党全体の力は出づらくなるでしょう。このような情勢で、6人目の総支部長を立てるのは至難の業。しかも、全体が総崩れになる危険性があります。民衆党岐阜県連でも同様。1区(岐阜市)では女性の3政治家(野田聖子・自民党衆院議員、笠原多見子・民主党衆院議員、佐藤ゆかり自民党参院議員)による長きにわたる裏切り合戦で、有権者はうんざり。日本一政治不信が強い地域とも言われます。その名の通り正直な、現職小選挙区勝ち上がりの民主党1期生・柴橋正直さんまであおりを食って投票率が下がる可能性が指摘されています。4区は、高地の飛騨高山で、自民党後援会が強い地域です。実力のある1区、5区の民主党現職も1期生ですから、ここも線引き変更は避けたいし、6人目の支部長擁立にはとても頭が回らないでしょう。静岡でも、1区・2区・4区・7区などで自民党系が優勢との観測があります。静岡県も一部に、平成の大合併の名残りが残ったままなので線引き変更は必至。静岡県連は9人目の支部長を擁立する余力はあるでしょうが、現職優先の守りの選挙が絶対的に迫られますし、それが正しい戦術でしょう。

 このように考えると、現職が多いが、組織は弱い民主党としては、小選挙区の総定数を削減し、長野・岐阜・静岡などの衆院5人区~8人区の県はそのままの状態で闘う。また、定数増の可能性が残る神奈川県、愛知県、埼玉県の3県は、民主党が現職が圧倒的に多い県です。現職が多ければ、区割り変更があったらより有利な選挙区を選べばいいのですが、変わらない方が楽だという考え方があるでしょう。とくに県連がしっかり作られている、愛知、埼玉両県連はそう考えるのがフツーです。

 岡田さんの三重県はおそらく定数1減の全1~4区となるでしょうが、新区割りに応じて、1人を比例東海ブロック単独に回すことになるでしょう。民主党は第46回衆院選では、2回ぶり(全国的には3回ぶり)に比例名簿単独上位登載者が出るでしょう。

 対する自民党。元職、地方議員、公募内定者も含めて支部長争いが収束していません。小選挙区定数削減は痛いところ。でも、比例を削りすぎると公明党の支持が離れるという痛し痒し。この問題は実に政治らしい問題で、民主党幹事長代行の樽床伸二さんは、持ち前の明るく気さくな性格で、あまり難しく考えずに、「腹合わせ」で落とし所に軟着陸してほしいと考えます。ちなみに、法案さえできれば、国会での審議は、衆参合計4日間もあれば成立するでしょう。

 総理は記者会見で、「我々の考え方はもちろんあります。まとまっています。ただし、ほかの野党のご意見もあるんですね。それを踏まえてどうやって削減に持っていくかというところに最後まで心を砕くことになると思いますが、どっちにしろですね、定数削減は最後には実現しなければいけないというふうに思います」と強調しました。ここは有権者の監視を強くしていけば、最後は、9党はまとまるでしょう。まずは第180通常国会の4次補正予算成立後に、定数是正などを盛り込んだ区割り審(内閣府におかれた衆議院選挙区画画定審議会、村松岐夫会長ら7人)設置法改正案のスピード成立が必要です。

【野田さんはチャーチル?、Never never never never give up!】

 野田さんは記者の質問に答える格好で、きのう(2012年1月3日火曜日)、母校である千葉県立船橋高校の同窓会に出席したときのエピソードを披露しました。140人ほどが出席したと報じられています。同級生から手紙を渡されたそうです。その手紙には次のような趣旨のことが書いてあったそうです。

 おい野田、船橋高校の世界史の授業を覚えているかい?

 The most famous 6 words (世界で最も有名な6語) のことを。

 チャーチル(Winston Churchill)の言葉さ。


 Never Never Never Never Give Up! 


[写真]Sir Winston Churchill (wikipedia)


 という趣旨のことが書かれていたそうです。野田さんは忘れていたそうです。

 これはチャーチルが保守党党首として首相だった1941年10月29日、彼の母校である名門パブリックスクール、ハーロー校(Harrow School)を訪れた際のスピーチのようです。この前年に、フランス・ベルギー・オランダ・デンマーク・ノルウェーの英国の対岸の大陸諸国はすべて、ナチス・ドイツに占領されています。そして、英国は爆撃され、とくにロンドンは毎日爆撃を受けていました。


[写真]爆撃された英国国土を視察するチャーチル首相、「ヨーロッパの歴史 欧州共通教科書」から。

 上のチャーチル首相が爆撃地を視察する写真が、この「世界で最も有名な6語」を言った時期に重なっているでしょう。

 チャーチルは言葉の力を持った政治家でした。2010年5月のBBCテレビの「英国総選挙開票特番」も、英国議会のビッグベンの後ろにチャーチルの姿がうつり、戦後65年たっても、どの首相よりも大きくチャーチルが描かれていて、驚きました。25歳で初当選した2世議員のチャーチルは、国王ジョージ6世のもと、65歳で初めて首相になりました。遅咲きの政治家でした。それなのに、なぜこれほど大きな政治家になったかというと、それは国難の舵取りをしたからです。その姿が、同級生からみて、今の野田さんと重なるところがあったんだろうと。だから手紙を事前にしたためて、そっと渡したのでしょう。政治家というのは、苦しくても誰かが背中を見ていて、つまずいたり、元気がなさそうだったり、たまの正月に会う機会があれば、そっと背中を押す。それが政治家と支持者の関係です。だから、政治家は嘘は最低限にしないといけないし、赤信号は絶対に渡ってはいけないのです。いつもその背中は見られ、人として見抜かれている。ただ、野田さんのような力のある政治家にとっては、それはむしろ好都合であり、今はインターネットもありますから、有権者も含めて、実にすばらしい時代が到来しています。ちなみに、国難の舵を取ったチャーチルは、戦争終結の前月の総選挙に負けて、労働党に政権交代しました。その後、現国王エリザベス2世のもと、首相に返り咲いています。

 平成24年、2012年「君子豹変す」と野田さんは予告しています。私はまだ、具体的なイメージがありません。ですが、経済成長と財政再建の両立に向けて、優先順位をつけ、一つ一つ山を乗り越えていく。第45期衆議院の任期はわずか1年半となりましたが、そんなちっぽけなことはどうでもいいことです。日本国はずっと続きます。きょうの夕飯より、100年後の朝食を。

 私たちも、ネバー、ネバー、ネバー、ネバー、ギブ・アップ、「あきらめない、あきらめない、あきらめない、けっしてあきらめない」。



 ところで、このチャーチルの話は、日経新聞の犬童文良(いんどう・ぶんりょう)記者の質問に答えるなかで出たエピソードです。犬童記者は、日本における英国二大政党政治研究の第一人者として知られた犬童一男・神戸大学名誉教授の子息です。記者会見では、東京新聞の三浦耕喜・記者がトップバッターとして、「今年は、総理もおっしゃいましたけれども、様々な意味で日本の将来を左右する重要な年になると思います。我々としても、総理に国民への説明を求める機会が多々あるかと思いますので、どうぞよろしくお願い致します」と総理に伝えました。ジャーナリストの江川紹子さんの質問の際には、総理が「高校の後輩ですよね」と声をかけるシーンがありました。

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