[写真]記者会見する岡田副総理、2012年1月19日、筆者撮影(以下同)。
きょうは岡田副総理の記者会見に行ってきました。
定例は「火曜日と金曜日の午後3時」が基本。きょうは行政刷新会議があったので、その後の説明(ブリーフィング)を含めた臨時の記者会見ということだったようです。
場所は財務省の隣にある「合同庁舎4号館」というところで、いつもの「国会議事堂前駅」より一つ手前の「霞が関」駅で降りていきました。ここは、かつて私が担当していた総務庁があった庁舎で、14年ぶりに入りました。私は2009年9月の政権交代直後に外務省の記者会見で質問しましたが、これは1回限り。「日本雑誌協会会員社に載った署名記事が半年で2つ以上に満ちていない」と報道課長から言われて、その後出られませんでした。ちなみに1回限りのときも、他の方のブログなどにあるように、「囚人扱い」されてしまい、私はあまりに滑稽で笑ってしまいました。今回はそれ以来でしたが、内閣府大臣官房広報課さんが事前に警備員にも、受付にも名簿を用意してくださったので、とても気持ちよく入ることができました。
[写真]合同庁舎4号館(左)。
これは霞が関の「潮見坂」という坂の下(財務省側)から、永田町(国会議事堂・官邸)方面を映した写真です。左が合同庁舎4号館。真ん中に国会議事堂が見えます。合同庁舎の影にうっすらと映っているのがかつてのホテルニュージャパン。20年来買い手が付かず解体されず野ざらしのまま赤坂に異様な姿を晒し続けていましたが、現在はアメリカ資本の保険会社のタワーになっています。
[写真]合同庁舎4号館。
かつて「総務庁北方対策本部」が入っていたこともあり、合同庁舎4号館には「北方の領土 かえる日 平和の日」という看板があります。同じ文言の看板は東京駅八重洲北口など全国の目抜き通りにあります。この合同庁舎4号館の看板も、時折見ていますが、きょう改めて「いつ?」とつぶやきたくなりました。
記者会見場は、民主党本部と違い、やはり政府機関ということで、特有な緊張感を感じました。記者クラブ員の記者さんからは、固有名詞などの確認がより一層必要になるなどのプレッシャーが伝わってきます。私の頃は、旧総務庁の記者クラブはのんびりした雰囲気で、兼務する官邸記者クラブに資料を持ち帰って、ゆっくり週末に向けて記事を書いていくという雰囲気でした。今はネット速報もあるので、雰囲気が違いますが、どうもこの建物は、私は好きなのかも知れません、けっこうリラックスしていました。
首相官邸4階の大会議室で行政刷新会議(野田佳彦議長)をすませた後、岡田副総理が合同庁舎4号館4階の会議室に移動して開かれました。なぜそうするのかは私もよく分かりません。
さて。本題の記者会見のポイントは2つ。党行政改革調査会(中川正春会長)の意見書を踏まえて、特別会計の廃止(一般会計化)などを決定しました。それと、独立行政法人の統廃合などを決定しました。ともに第180通常国会に法案が出ます。行政刷新会議は法的根拠があるし、総理が議長です。あとは法案が国会を通るかどうかということになります。ダメならば、「信を問う」ところまで行く可能性がありますが、とにもかくにも法案を出さないとどうにもなりません。その前の2月・3月の解散はないと、私は考えています。
「道路特会」と「治水特会」の廃止(一般会計化)が決まりました。4・5兆円が特別会計のサイフから一般会計のサイフに移ります。第169国会の時点では、「暫定税率」の名の下に集めたガソリン税の上乗せ分(当時は1リットル当たり25円に相当)が道路特会を通り抜けると摩訶不思議なことに「道路づくりの大事さを理解してもらうミュージカルの開催費」に化けているというマジックが長妻昭さんらの手で明かされました。ただ、当時は「笑い事」だった気がします。
これについて、第169通常国会の野党時代の審議が、4年経って、政府・与党として(法案が成立すれば)実現することに感慨はありますか、と質問しました。岡田副総理は「当時は、マッサージ椅子とかいろいろなことが出てきましたけど」「まあ、それもありますがやはり無駄な道路が、一般会計ではなくて特別会計から無駄な予算の執行があった」「社会資本整備特別会計がなくなるということは大きなことだと理解しています」と語りました。
そこで、「ガソリン値下げ隊は間違いでなかったと思いますか?」と聞いてみました。岡田さんは「最後はガソリン値下げ隊ががんばり過ぎてしまったんですが、予算委員会の議論のなかで、馬淵澄夫・予算委員らが、(歳入である)道路特定財源の問題や、いかに無駄な道路をつくらないかという採算(費用対効果 B by C)の問題の議論が主流でした。そういった議論を思いおこすと、ああここまで来たか、と感慨を覚えざるを得ません」と語りました。
岡田さんは陛下からは「国務大臣」として認証を受けているだけです。それ以外は、官邸から野田佳彦首相からもらった補職辞令により、「副総理」とか「行革相」とか「一体改革相」という肩書きがついています。
岡田さんは初入閣のときは、「外務大臣」という補職辞令を1つだけもらいました。外務省には外局もありません。予算0・5兆円だけの官庁です。
今回は、副総理(内閣法に定める内閣総理大臣の職務代理順位1位者)を入れて、補職辞令が9つもでています。同じ大臣でも、マルチタスクが必要な、まったく違ったおもむきの「政権を担うことの重荷」を岡田さんはいま、直面しています。ぜひ官僚のみなさんは、「○○省事務官」ではなく、「国家公務員」あるいは「日本の官僚(法律上「官僚」という言葉はありません)」として岡田副総理を支えてください。誰のためでもない、日本のためです。国難ですから。
この記者会見には、内閣府だけでなく、財務省、経済産業省の官僚もいました。質問者は、自動車関連の雑誌の記者さんだと思いますが、「自動車安全特会の自動車検査登録勘定が独立行政法人へ移管予定」になったことについて質問が出ました。岡田副総理は答えられず、壁際の自席にひかえていた財務官僚が入れ知恵に行きました。ここまでなら、国会でも良くある光景ですが、けっきょく財務官僚もペーパーのどこに該当する記述があるか見つけられなかったようで、岡田さんから自席に戻るよう言われて戻りました。岡田さんは「後でお答えします」と答えました。副総理周りにいるような財務官僚が、内閣改造直後とはいえ、説明できないという光景はかなりの衝撃でした。
[写真]一部修正しています。
14年ぶりにこの建物に入って、やはり官僚(国家公務員キャリア採用組)のレベルが劣化していることを実感せざるを得ない衝撃のシーンでした。例えば、私は「道路特会」、「治水特会」と書いていますが現在の正式名称はそれぞれ、「社会資本整備特別会計道路整備勘定」、「社会資本整備特別会計治水勘定」です。特会を統合して、特会内の別勘定にするという小手先の改革を続けてきたことで、財務官僚や国交官僚が全体を理解できないところまで来てしまっています。しかも、「分かりません!」のひと言が言えずに傷口が化膿したのが、今の永田町・霞が関の現状です。こりゃ、何とも「日本的だ」という表現しかないでしょう、好きではありませんが。
民主党政権がうまく行かないのは、官僚主導でも政治主導でもなく、官僚のレベルが劣化したからだと思うのですが、それだと責任転嫁ですし、何も前に進まなくなるのでやめておきましょう。余裕がなくなり訳が分からなくなって、「省庁間の連絡」という官僚が最も優位性を持っていた分野がシッチャカメッチャカになっているのかもしれません。でも、しょうがありません。現実を見つめるべきです。とにもかくにも、まずはサイフの透明化と単純化が必要です。「無駄」があるだけ、幸せな国です。「無駄」を整理すれば、オカネが出てくるというのは、GDP世界3位の豊かな国だということです。それと人作りが大事です。
官僚のみなさん、もう一踏ん張り、がんばってください。外から見れば、これでも官邸や国会は以前より良くなっています。混乱していますが。一部の省の一部の局が情報を外に出さないということはなくなってきていると感じます。官僚のみなさん、もう一踏ん張りです。
独立行政法人については、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)とUR(旧住宅・都市整備公団)の統合が保留になりました。岡田さんは「URは貧しい方の住まいなどで重要だ」という考えを示しました。そのうえで、「住宅金融事業」については、株式会社化の余地があると示唆しました。こうなると、住宅金融が全銀協加盟の市中銀行と同じ存在になる可能性があり、政府関係機関であるという現在の優位性が失われます。ただ、やはり副総理会見ということもあり、岡田さんは公的に検討しているわけではないと強調しました。この辺は、ある意味、岡田さんも「インテリヤクザ」ぶりがみられて安心しました。国民としても、副総理がインテリヤクザなら最強だし、頼もしい限り。岡田さんもあまり「イメージ」を気にせず地を出せば道が拓けると私は確信します。そういう意味では、「東大法学部出の通産官僚」というイメージを持つ人には、それはまったく違う、むしろ逆です、と私は言いたいです。
司馬さんが書いています。少佐だけど、General(将官)だったのが秋山真之だったと。generalには「総合的に」という意味があります。海軍軍人というは海軍官僚であり、国家公務員です。そういった時間軸でも空間軸でもグランドデザインが描ける官僚はいなくなったんだと考えます。全滅はしていないとは思います。出身省庁に偏らない人事や、外資系企業などに転出した人材を再採用することなどもあり得るでしょう。とにもかくにも、予算・決算をはじめ、統治のしくみを作り直さないことにはどうにもなりません。政治家も官僚も、本質をとらえ、雑事を捨て去ることが、国難および、それぞれの人生の苦難から抜け出す唯一の道です。
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