[画像]28日付公明新聞4面から。
1月29日週は、政府・民主党が、「年金改革の全体像」を野党に示して、与野党協議への参加をお願いする局面を迎えています。
年金一元化は言うは易く行うは難し。そして、「最低保障年金(月7万円)と所得比例年金のベストミックス」の設計が必要です。政府・民主党は数字を明示すべきです。
さて、28日付の公明新聞4面は、「土曜特集」と題して1ページぶち抜きで、初代厚生労働大臣の坂口力さん(衆院比例東海ブロック、党副代表)のインタビューを載せています。
私は坂口さんのインタビューには「目から鱗が落ちる思いがしました。民主党と違って、「上から目線」だからです。正確に言うと、「上から下に目線」だからです。
坂口さんは「民主党の年金案の問題点は?」との質問に次のように答えています。
[画像]最低保障年金と所得例年金のイメージ、朝日新聞社作成の図、朝日新聞電子版からお借りしました。
「民主党案といわれるものは、国民、厚生、共済など全ての年金を一元化し、基礎年金をなくした上で、所得の少ない人には月額7万円の最低保障年金を上乗せするという案です。しかし、その最低保障年金を上乗せする具体的な所得水準が一向に明らかにされていません」
坂口さんは右上から左下にグラフを見て、所得比例年金に最低保障年金の上乗せが始まる“年収”が明示されていないと批判しています。
この「上から下に目線」であり、「大衆とともに」の立党の精神通り、貧しい方、貧しい方に目を向けて、いったいどこから最低保障年金を上乗せするんだと見ています。
おそらく、民主党調査会での昨年の議論をリードした、仙谷由人さんや細川律夫さんらは、左下から右上へと「下から(上に)目線」で見ているのではないでしょう。なぜかというと、年収の高い(保険料を生涯に多く納めた)人たちに納得してもらう制度を設計する。そのためには、「どこから最低保障年金を減らせば、高所得者(保険料を多く納めた人)からの不満が少なくなるか」を考えていたでしょう。そして、年金受給者の人数などが年を追って増えていくので、2015年、2025年、2050年と3次元のグラフで考えている。だから、横軸(年収=生涯の年間所得の平均)の数字を入れるのをためらう党幹部がいるのだろうと思います。
ぜひ、この坂口さんの「上から下に目線」を見習いたいものです。
これに加えて、最低保障機能と生活保護の関係です。おそらく生活保護に縁がない高所得の人たちもこの論点に気付きだしているでしょう。最低保障年金があると、高齢者の生活保護受給者が減ることにつながり、財政需要が減るというメリットがあるはずです。
これについて、坂口さんは公明新聞でハッキリとした意見を述べています。
公明党が手直しを提案している点として、「例えば、低年金の方への対策です。国民年金は満額で月額約6万6000円ですが、かつて制度が不十分だったことから夫婦で13万2000円にも満たない人も多くいます。そこで、夫婦なら年収200万円未満、単身で年収160万円未満の方には、何らかの上乗せが必要だと考えています」。
そして後述する提案により、坂口さんは「これにより受給額が満額で8万3000円、夫婦で16万6000円にアップするので、生活保護よりは多くなります」としています。ちなみに生活保護は法定受託を受けた自治体ごとに、家賃の水準などで金額が違います。坂口さんは全国平均(?)のことを言っているのかな(?)と思います。
これについては、民主党の福祉のエキスパート、山井和則さんらが以前から指摘しています。第162通常国会(郵政解散国会)に設置されていた衆参の合同会議、2005年7月29日(郵政解散10日前)の年金制度をはじめとする社会保障制度に関する両院合同会議で、山井さんは次のように発言しています。
「民主党の山井和則です。今の枝野議員の発言の趣旨とも近いわけですけれども、やはり生活保護というのは、ある意味で、できるだけその利用をする人は少なくならねばならないわけです。社会保障の一つの目的というのは、いかに生活保護に頼る人を減らしていくかということであると思います。そういう意味では、今の日本の年金制度あるいは昨年の年金改革というのは、生活保護を逆にふやしていくような流れに私はなっていると思います。与党のある幹部の方も、結局国民年金に入らなければその人は老後年金をもらえないんだから、それで仕方がないということを発言されたのを聞きましたが、やはりそれでは、払わなくて高齢になったら最後は生活保護になったらいいということでは、逆にこれはモラルハザードになっていくわけでもありますし、また同時に、国民皆年金という大看板をおろしてはならないわけであります。その意味で、生活保護をいかに減らしていくかという年金制度であらねばならないわけで、国民年金の未納、未加入にならない制度をきっちりとつくっていくことが重要であると思います」
と述べています。「生活保護をいかに減らしていくかという年金制度が必要だ」という方向性は、民主党も公明党も完全に一致していると思います。
ただ、この最低保障年金(月7万円)を生活保護受給額より上に持っていく手法について、坂口さんは「基礎年金の国庫負担は現在50%ですが、こうした皆さんには60%の国庫負担にしてはどうかという提案」をしています。これは無理筋です。おそらく何らかの落とし所を探るベテランならではの変化球だと考えますが、坂口さんの考えをもっと深く聞きたいものです。
坂口さんは、「素案」について、「年金加算制度のほかにも、厚生、共済年金の一元化や、受給資格期間の短縮、パート労働者の厚生年金適用など、現行制度の機能強化は、公明党が与党時代から提唱し、実現をめざしてきたものばかりです。民主党がそれをそっくりそのまま素案に盛り込んだこと自体、公明党の主張が、より現実的であったと認めたに等しい。彼らは野党時代、これらの提案に反対し、法案を廃案に追い込んだ経緯があります。最低保障年金の創設や年金一元化の問題点とあわせて、この点も国会でも厳しく追及しなければなりません」。
やはり民主党と公明党がめざす年金、社会保障の全体像は同じ方向性です。岡田克也副総理・一体改革相は、坂口さんの案を丸飲みしたらいいのではないでしょうか。そして、2期生以上は野党時代の振る舞いにアタマを下げる。まずは、例え誤解を招いてもいいから数字を出さねば。
[画像]1964年11月の公明党結成大会、目で見る議会政治百年史から。
[画像]第39回衆院選の公明党ポスター、目で見る議会政治百年史から。
1964年、公明党結成大会の懸垂幕には「大衆福祉の公明党」と書いてあります。そして、1990年2月の第39回衆院選のポスターには「福祉と平和の新時代」と書いてあります。東京オリンピック直後も、バブル絶頂期も、公明党は「福祉」。筋金入りです。「大衆とともに」の公明党。ちなみに1990年の第39回総選挙では、中選挙区三重1区で、自民党公認新人の岡田克也さん(36歳)に弾き飛ばされる格好で、公明党政審会長の前職、坂口力さんは次点で落選してしまいました。しかし、国政復帰後、昨年の3党合意では子ども手当・児童手当の「坂口私案」で、実務者としてまとめました。それは、岡田さんのためではなく、国のための働きで、まさにステイツマンです。
[画像]後輩のパネラーを務める、坂口力さん(左)、2008年6月、衆院・決算行政監視委員会、衆議院インターネット審議中継から。右は、当時衆院議員で現在は公明党神奈川6区支部長の上田勇さん。
上の画像のように、当選10回生(現在は11期生)の初代厚労大臣を4年務めながら、後輩のパネラーを務める坂口さん。「大衆とともに」ーーそれは公明党だけでなく、経済的に成功した人もそうでない人も含めた全国民が共有すべき姿勢です。
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