ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

野田総理は自民党総裁室だけでなく参院決算委にも押しかけるべきだ

2012年10月11日 19時06分37秒 | 第181臨時国会(2012年10~11月)友情解散

[写真]自民党の安倍晋三総裁(右)をあいさつに訪れ握手する野田佳彦首相。首相は、赤字国債発行に必要な特例公債法案など懸案の処理に向け、公明党の山口那津男代表も交えた3党党首会談の開催を呼び掛けた=11日、国会【時事通信社】

 決められない政治の脱却に向けて、2012年10月11日(木)、ようやく政局は膠着状態から動き出しました。

 上の写真のように、民主党の野田佳彦代表(首相)、輿石東・幹事長、安住淳・幹事長代行、山井和則・国会対策委員長が自民党総裁室にかけつけ、安倍晋三・自民党総裁、石破茂幹事長、浜田靖一・国会対策委員長と顔合わせをしました。野田総理は、臨時国会の前裁きとしての党首会談を要請しました。安倍総裁は「分かりました。実り多い党首会談をよろしくお願いします」と述べ、両幹事長が段取りをはかることにしました。

 野田さんは9月21日に民主党代表に2選。安倍さんは9月26日に自民党総裁に当選(復帰)していました。そこで、野田さんが各会派周りをしているなかで、自民党だけ周われなかったので、きょう回ったことになったようです。安住代行が自民党の菅義偉幹事長代行と打ち合わせしたようです。ただ、これは珍しい光景で、首相が自民党総裁室に出向くというのは異例です。目に見える民主政治のためにも、国会の格式というのは大事ですが、この自民党総裁室は国会議事堂の中央部3階にあり、真下は国会内総理大臣室です。国会開会中の閣議前のアタマ取りが終わった後、首相らは向かって左側の部屋に入っていきますが、そのまた左の部屋にある総理大臣室の真上にあるのが自民党総裁室です。私が知る限りでは、ずっと昔から、自民党総裁室で、自民党役員会では、首相である総裁が冒頭だけ出席したり、ずっと出席したり、そのときにより様々な与党と政府の心あわせをしてきた場所です。総理大臣室の主が民主党代表となったこの3年間も、上の自民党総裁室では自民党役員会が開かれています。以前に比べれば、総裁が出席している時間は増えたでしょう。この部屋で印象に残るのは、役員会のときに、副幹事長が後ろの席に腰掛け、陪席(発言はせず、内容を共有)していることですが、閣僚経験者も含まれ、自民党の層の厚さを感じさせました。もちろん、それは1党独裁だったからで、これからは大臣ポストの期間は二大政党で半分になりますが、選挙で勝つために必死になるので、若くて人気のある閣僚未経験者が前列に座り、ベテランが副幹事長として後列に座る機会もあるかもしれません。安倍さんも青年局長として当選2期生で前列に座っていた経験もあり、自民党というのは非常に良くできたシステムだと感じます。

 衆参ねじれという新しい風景に、一つ加わったのが、総理が自民党総裁室を訪れ、自民党総裁と握手する姿。まったく見慣れない姿ですが、私はこういうのを面白いなあと感じます。

 もう一つ、ニュースがあり、参議院の野党8会派の国対委員長が会談し、参院決算委員会(山本順三委員長=自民党)、参院行政監視委員会(福岡高麿委員長=自民党)の閉会中審査を開き、復興予算の使い道(執行状況)について、審議することで合意したようです。

 第180通常国会の参議院は、脇雅史・自民党国対委員長が自らトップバッターで質問し、「内閣と内閣官房と内閣府はどうちがうか」という質問に、閣僚も内閣法制局長官もうまく答えられないというシーンからスタートしました。これは、「政治主導と官僚主導」に関して、マニフェスト以前の問題が民主党にあったことを如実に示しました。そして、おそらくこれを受けて、参院行政監視委員会では、古川貞次郎・元内閣官房副長官を招いて、「内閣官房と内閣府と総務省はどうあるべきか」について、経験を中心とした提言を聞きました。この委員会では、与党1期生が「私は仕分けを担当しているので~~」と持論を述べたのに対して、野党1期生が意見を聞くことに集中して、散会後に古川さんと名刺を交わして教えを請う姿がありました。この野党1期生の要請を受けて、野田首相が出張時に、その施設を訪れ、ニュースになりました。与党1期生は離党して、新党をつくりました。

  それはさておき、決算委はすでに平成22年度決算の審査を1回やれば、すぐに平成23年度決算に入れます。行政監視委員会もふだんから月曜日の同じ時間帯に委員会を開いて運営しています。決算委と行監委の閉会中審査には、呼ばれてなくても、総理はかけつけて答弁すべきでしょう。

 さらに、決算審査をする場合は、次は平成22年度決算の総括質疑になります。総括質疑は通例、NHK中継されています。こちらは参院なので安倍総裁のデビューは先送りですが、それなりに面白い議論が期待できるでしょう。

 8月29日(水)、参議院は小沢一郎氏にだまされたんです。「3党合意をした自民党を批判し、民主党代表の野田総理を問責する決議」なんて誰が得するんですか。この決議をなかったことにするわけにはいきません。ならどうするか。それは、臨時国会召集前に閉会中審査で、総理出席のもと、参議院らしく決算で集中的に審議することです。決算の審議ならば国政に関してはほぼすべてのことを議題にできるということになります。民主党でもない自民党でもない。衆議院でもない参議院でもない。国民がイチバン求めていることは、「脱小沢」です。決められる政治のために、総理は呼ばれていなくても、委員会室におしかけてほしいと思います。見慣れない光景も、最近では驚きではなく、新しい時代の幕開けと感じることの方が、なんとなくですが、多いように感じられることがしばしばです。

3党党首会談を呼び掛け=野田首相が安倍自民総裁に(時事通信) - goo ニュース

自民党の安倍晋三総裁(右)をあいさつに訪れ握手する野田佳彦首相。首相は、赤字国債発行に必要な特例公債法案など懸案の処理に向け、公明党の山口那津男代表も交えた3党党首会談の開催を呼び掛けた=11日、国会【時事通信社】

野党、参院委の開催要求へ=復興予算検証(時事通信) - goo ニュース

 

 自民、公明、新党「国民の生活が第一」など参院野党8会派の国対委員長らが11日、国会内で会談し、使途の一部が本来の目的にそぐわないと指摘される東日本大震災の復興予算を検証するため、参院の決算委員会などで閉会中審査を求めることで一致した。

 決算委のほか行政監視委、東日本大震災復興特別委でも閉会中審査を要求する。このうち、決算委と行政監視委は、自民党が委員長ポストを握っている上、野党委員が過半数のため、与党の同意がなくても開催が可能となる。

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衆議院決算行政監視委員会は平成【21】年度決算を閉会中審査すべきだ

2012年10月11日 14時22分40秒 | 第181臨時国会(2012年10~11月)友情解散

[画像]第180通常国会会期末に閉会中審査の採決をする新藤義孝・衆議院決算行政監視委員長(自民党)、2012年9月7日、衆議院インターネット審議中継

 衆議院決算行政監視委員長は、自民党にとって事実上唯一の衆議院常任委員長ポスト(ほかに懲罰委員長)です。きょう2012年10月10日(水)は、この秋、初めての閉会中審査となる「決算行政監視委員会行政監視小委員会」が立ちました(設定されました)が、過半数を占める民主党の欠席で定足数を満たさなかったようで、流会しました。議題は「復興予算の実施状況」ということで、平成23年度決算に関することです。同年度の決算書は臨時国会召集日に会計検査院が提出する見通しなので、それに先立ち「行政監視」の方を動かそうとしたということになります。

 第45期衆議院では、第2次野党期の自民党が同委員長ポストを一貫して務めていますが、新藤義孝さん(埼玉2区)が委員長になって以来、なんと決算審査をしていません。第179回国会の昨年11月24日(木)に平成21年度決算、12月8日(木)に平成22年度決算について、安住淳財務大臣(当時)、重松博之・政府特別補佐人(会計検査院長)から相次いで趣旨説明を受けただけです。

 その後、衆院先議の平成21年度予備費使用調書その1、その2(半年ずつ)、平成22年度予備費使用調書その1、その2は政府の支出を衆院で事後承認し、参院に送付。参院でも可決・成立(承認)しています。決算は参院でも審議を始められ、参議院決算委員会は、平成21年度決算を可決(是認)し、平成22年度決算も「準総括質疑」をしており、後1回だけ野田佳彦総理入りの「総括質疑」をすれば、本会議で委員長報告と採決ができる状態で、問責決議がされてしまい、継続審査になっています。これについては、自民党内の参院決算委員にも忸怩たる思いがあるようです。

 それにひきかえ、衆議院で平成21年度決算すらやっていないとは何事でしょうか。そして、平成23年度は戦後2回目となる4次にわたる補正をしながら、震災復興費用が9兆円ほど未執行に終わっているとされており、予算の見積り、執行の状況など、憲政史上最も大事な決算審査となります。衆参とも、平成23年度決算にすぐにでも取りかかれるための前裁きが必要になります。



 ところが、新藤委員長らは記者会見で、この「復興予算の実施状況の調査」をするとして、きのうの「小委員会幹事会」で小委員長職権できょうの会議を立てたようです。この「小委員会の幹事会」というのは知らなかったので、調べましたが、国会法・衆議院規則・衆議院先例集のいずれにも、定めがなく、慣例に過ぎない会議体のようです。

 これに関しては、二大政党の思惑がみえず、民主党側も人事異動などで経緯がよく分からずに反論している面があり、世論が混乱すると思います。

 ただ、客観的な事実。それは、現時点で、いまだに平成21年度決算の審査を終了していないということです。もちろん22年度決算も同様です。その一方で、衆院先議である「予備費の使用調書」に関しては、21年度、22年度とも、ぞれぞれ「その1(4月~9月)」、「その2(10月~3月)」とも参議院に送りましたが、同じ党の山本順三・参議院決算委員長が衆院側に抗議したことは、参院での会期末処理の際に、委員長から報告され、議事録に残っているところです。予備費は承認して、決算全体は承認していないというのは見栄えが悪いように思います。

 平成21年度決算は、自民党麻生内閣が組んで、(一般会計に限れば)戦後初の4月補正で14・5兆円増額し、政権交代して、鳩山内閣が減額も含めて補正したややこしい年度です。しかし、これで次の選挙で政権交代があれば、衆議院としての21年度決算審査は訳が分からないことになるのは間違いありません。これでは、自民党の安倍晋三総裁が「年内の早期解散」を求めていることとと矛盾していると私は感じます。

 そしてもう一つの客観的な事実。それは同委員会が決算審査をしないのに、6月11日に、石原慎太郎都知事や中山義隆・石垣市長を招き、「尖閣諸島における諸問題」と題した参考人質疑をしています。もちろん、参院では別々の決算委と行政監視委を一つにあわせた委員会だし、タイムリーでいいのですが、本業をちゃんとやるべきなのではないでしょうか。そもそも21・22年度決算の審査といっても、国政全般にわたることなので、そのなかで尖閣諸島の購入に関する質疑もできるはずです。

 第44期衆議院でも同委員長は野党ポストで、民主党の川端達夫さん、枝野幸男さんらが委員長を務めました。同委のしめくくり総括質疑はNHK中継されるのが慣例で、野党時代の民主党の衆院議員にとっては、委員長席に座っている姿がテレビで放送される唯一の機会でした。とくに枝野委員長は、自民党閣僚が立ち上がるのがちょっと遅れただけで、「速やかに答弁してください!!」と叱り付けているようにも見えました。枝野さんは、予算委理事として場内協議になったときも、見た目にはまったく分からないのですが、委員長ではなく集音マイクに向けてしゃべっているとされ、野党ながら情報発信に多大な功績をしました。民主党の第1次野党期最後となった第171通常国会では、閉会中の理事会で長時間ねばり、予算委員会のカメラの台数を増やさせ、映像の迫力が増し、「民主党に一度やらせてみよう」という世論に大きく貢献しました。

 国会版事業仕分けや尖閣諸島の参考人質疑は面白いし、
いいのですが、決算審査をしないことで、テレビ入り質疑を2回以上逃していることにもなります。あるいは、政府・与党が財務大臣らの時間的拘束を嫌がっているのかもしれません。決算審査の省別審査で、財務大臣の出席を義務づける必要もないのではないでしょうか。決算委は4つの分科会を設けて審査できることになっているので、4つの分科会を同時並行でやれば、閣僚の拘束時間も短くなります。

 閉会中審査で突貫工事で宿題を片づけるべきです。国難だからこそ正道の国会審議をすべき。それが私が健全野党自民党に求めていた姿なので、残念な思いです。


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