ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

衆参ダブルか?「12月9日投票」はねのける 野田内閣、予備費で追加景気対策 11月とりまとめ

2012年10月17日 18時19分30秒 | 第181臨時国会(2012年10~11月)友情解散

 野田佳彦首相と前原誠司経済財政政策担当相は2012年10月17日(水)夕方5時からの緊急閣議で、追加景気対策の策定を各大臣に要請しました。11月末をめどにとりまとめます。通例は補正予算(案)で対応しますが、今回は平成24年度予算一般会計の予算総則第17条にもとづく、財務省所管の「経済危機対応・地域活性化予備費」の9100億円、災害対策が最優先となる「予備費」3500億円(の一部)の支出の閣議決定を網羅的に戦略的に行うものです。

 これは複数の予備知識が必要ですが、まず、補正予算(案)ではないので国会への提出は不要です。

 一方、本来「予備費」は閣議決定で支出し、使用調書、これはもう10月1日を過ぎましたので、「平成24年度経済危機対応・地域活性化予備費使用調書その2」ということになりますので、事後に国会に提出すればいいことになります。ですから、今回のように臨時閣議で総理がとりまとめを指示して、各府省大臣が11月末をめどにメニューをとりまとめる筋合いのものではありません。

 さらに藤村修官房長官は平成24年度の基礎年金支給に欠かせない年金交付公債が年金特例公債につけかえることにした、6月15日の民自公3党合意にもとづく、技術的な補正予算が2013年3月31日までに必要であることを認めています。それにもかかわらず今年度第1次補正予算(案)は編成に着手していません。岡田克也副総理(兼)行政刷新相は前日(16日)の記者会見で、「新仕分け」を11月16日(金)から18日(日)まで行うと発表しました。経費節減のため、役所の会議室で政務三役と刷新会議委員だけが評価人となり、一般傍聴無しでインターネット中継のみとし、「評価結果については、行政刷新相が(平成25年度)予算への反映まで、しっかりフォローアップ」(プレスリリース)と打ち出しました。

 このため、自民党の石破茂幹事長や、公明党の山口那津男代表・井上義久幹事長が主唱してきた今年最後の大安吉日の日曜日である「第46回衆院選の12月9日投開票」へのゼロ回答と受け止めることができます。野田民主党は「自民党が特性公債法案を参議院で可決・成立させてくれないので、財源がなく、(増額)補正ができない」との論で強行突破する構えで、年内解散はなくなり、衆参ダブルの可能性が大きくなりました。すでに選挙事務所を開いている自民党の候補予定者は、12月31日(月)までに店じまいをし、予算審議中の1月~3月は鋭気を養うことが必要になりそうです。

 現下の経済情勢は極めて深刻なものがあります。3世代前、80年前の不況。これは昭和天皇がすでに摂政宮さまとなられてから、青年天皇に即位された時期になりますが、1923年に関東大震災で横浜港と首都東京が壊滅的被害にあいました。震災手形(政府紙幣)の整理回収に手間取る中その4年後に昭和恐慌がおき、取り付け騒ぎが起き、そして、1929年ニューヨーク株式市場から大恐慌がおき世界強行となりました。その回復は関東大震災から数えて四半世紀近い歳月が必要でした。

 今回は世界恐慌が先に来ました。2007年・2008年にアメリカでサブプライム・ショック、リーマン・ショックが起き、IT化とグローバリゼーションにともなう新興国の勃興と行き過ぎたマネタリズム、貨幣経済が整理局面となりました。そして、2011年3月11日、東日本大震災が起きました。関東大震災と違い首都と主力港はやられず死者数も少ないですが、世界不況の中での震災でその復旧・復興は大きく遅れているほか、原子力災害という立体的な被害がおき、先行きはまったく不透明な状況です。それに前後して、欧州債務危機、欧州通貨危機が起き、貿易の連鎖から、中国など新興国の輸出入が停滞し、日本にも影響が来ています。中国への自動車輸出が半減。いずれは日本の稼ぎ頭であるアメリカへの自動車・自動車部品輸出も減速するでしょう。それ以上にエネルギー自給率4%の我が国では、原子力発電にかわる火力発電用の油の調達で、貿易赤字が続いており、いわば「出血多量」のまま、その先行きは国際原油価格に左右されるという危機的状況がさらに続きます。

 このような背景で、第180通常国会の8月28日(火)の衆議院本会議での「財政運営に必要な特例公債法案」(第180閣法2号内閣修正)の採決に自民党が欠席し、公明党が反対したことは無責任野党のそしりは免れません。また、公明党幹部にとっては、「近いうち解散」「12月9日衆院選」の2つの嘘により、支持母体の創価学会員に不信感を与えたことから、組織内で責任問題が起こることは必至でしょう。

 なお、「経済危機対応・地域活性化予備費」は鳩山内閣が組んだ平成22年度当初予算、菅内閣が昨年大型連休中に第177通常国会を通した「復旧補正」である平成23年度第1次補正予算、に続いて、平成24年度当初予算が3度目の計上になります。この予備費は、平成24年度一般会計予算総則第17条で、使用使途が各府省ごとに定められています。少し見づらくなりますが、平成24年度一般会計予算書からのコピー・アンド・ペーストを以下につけます。

 [平成24年度一般会計予算総則から引用はじめ]

第17 条「甲号歳入歳出予算」に計上した経済危機対応・地域活性化予備費は、次に掲げる経費及び第7 条に掲げる経費であって、地域経済の活性化、雇用機
会の創出又は国民生活の安定に資するもの以外には使用しないものとする。

 内閣府

 内閣本府
 地域活性化政策費、防災政策費、沖縄政策費、沖縄振興交付金事業推進費、沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業費、沖縄北部連携促進特別振興事業費、沖縄保健衛生諸費

 警察庁
 生活安全警察費、警察活動基盤整備費


 総務省

 総務本省

 地方行政制度整備費、地域振興費、情報通信技術研究開発推進費、情報通信技術高度利活用推進費、情報通信技術利用環境整備費

消防庁消防防災体制等整備費

法務省

法務本省
日本司法支援センター運営費

財務省

財務本省
政策金融費


文部科学省

文部科学本省

生涯学習振興費、初等中等教育等振興費、高等教育振興費、育英事業費、私立学校振興費、科学技術・学術政策推進費、研究振興費、研究開発推進費、スポーツ振興費

文化庁
文化振興費、国際文化交流推進費

厚生労働省

厚生労働本省
医療提供体制確保対策費、医療従事者等確保対策費、医療従事者資質向上対策費、医療情報化等推進費、医療安全確保推進費、感染症対策費、特定疾患等対策費、移植医療推進費、原爆被爆者等援護対策費、医薬品承認審査等推進費、医薬品安全対策等推進費、医薬品適正使用推進費、血液製剤対策費、医薬品等研究開発推進費、医療提供体制基盤整備費、医療保険給付諸費、医療費適正化推進費、地域保健対策費、健康増進対策費、健康危機管理推進費、食品等安全確保対策費、水道安全対策費、麻薬・覚せい剤等対策費、化学物質安全対策費、生活衛生対策費、労働条件確保・改善対策費、中小企業最低賃金引上げ支援対策費、高齢者等雇用安定・促進費、失業等給付費等労働保険特別会計へ繰入、就職支援法事業費労働保険特別会計へ繰入、職業能力開発強化費、若年者等職業能力開発支援費、障害者等職業能力開発支援費、男女均等雇用対策費、保育所運営費、児童虐待等防止対策費、母子保健衛生対策費、母子家庭等対策費、子ども・子育て支援対策費、生活保護費、地域福祉推進費、災害救助等諸費、社会福祉諸費、障害保健福祉費、高齢者日常生活支援等推進費、介護保険制度運営推進費

検疫所
検疫所共通費、検疫業務等実施費、輸入食品検査業務実施費

都道府県労働局
都道府県労働局共通費、労働条件確保・改善対策費、個別労働紛争対策費、職業紹介事業等実施費、高齢者等雇用安定・促進費、男女均等雇用対策費

農林水産省

農林水産本省
食の安全・消費者の信頼確保対策費、国産農畜産物・食農連携強化対策費、農業経営対策費、優良農地確保・有効利用対策費、農業生産基盤保全管理等推進費、環境保全型農業生産対策費、農山漁村6 次産業化対策費、都市農村交流等対策費、農村地域資源等保全推進費、農山漁村活性化対策費、農林水産業地球環境対策費、風水害等対策費

農林水産本省検査指導機関
農林水産本省検査指導所

農林水産技術会議
農林水産業研究開発費

林野庁
森林整備・保全費、独立行政法人農林漁業信用基金出資、森林整備・保全費国有林野事業特別会計へ繰入、森林整備事業費、林業振興対策費、林産物供給等振興対策費、森林整備・林業等振興対策費

水産庁
水産資源回復対策費、漁業経営安定対策費、漁村振興対策費、水産業強化対策費

経済産業省

経済産業本省
産業人材育成費、技術革新促進・環境整備費、ものづくり産業振興費、サービス産業強化費、コンテンツ産業強化費、地域経済活性化対策費、温暖化対策費、情報セキュリティ対策推進費、まちづくり推進費、化学物質管理推進費、消費者行政推進費、産業保安費資源エネルギー庁鉱物資源安定供給確保費

中小企業庁
経営革新・創業促進費、中小企業事業環境整備費、経営安定・取引適正化費、まちづくり推進費

国土交通省

国土交通本省
住宅対策諸費、住宅市場整備推進費、道路環境等対策費、水環境対策費、地球温暖化防止等対策費、公共交通等安全対策費、道路交通安全対策費、総合的物流体系整備推進費、景観形成推進費、都市・地域づくり推進費、鉄道網整備推進費、地域公共交通維持・活性化推進費、道路交通円滑化推進費、不動産市場整備等推進費、建設市場整備推進費、国土調査費、海事産業市場整備等推進費、国土形成推進費、地理空間情報整備・活用推進費、離島振興費、奄美群島園芸振興費、北海道総合開発推進費

観光庁
観光振興費


環境省
環境本省
地球温暖化対策推進費、廃棄物・リサイクル対策推進費、生物多様性保全等推進費、環境保健対策推進費、環境・経済・社会の統合的向上費、環境政策基盤整備費、環境研究総合推進費

地方環境事務所
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[引用おわり] 

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小泉元首相「私の支持者も田中さんを応援している」議事録から見えてくるけいしゅう法相との浅からぬ仲とは

2012年10月17日 00時36分15秒 | 第181臨時国会(2012年10~11月)友情解散

[写真]5年半内閣総理大臣を務めた自民党総裁で清和会・神奈川県連の小泉純一郎氏。

 自民党の安倍晋三総裁(清和会)から辞任要求を受けている田中けいしゅう法相(田中慶秋法相)。

 そのけいしゅうさんですが、政界でははるかに有名人だった自民党神奈川県連・清和会所属の小泉純一郎首相から「私の支持者も田中さんを応援しているのも知っていますよ」と答弁されていたことが、国会議事録データベースから浮かび上がりました。その清和会自民党総裁だった小泉首相と民主党のけいしゅう法相の浅からぬ仲とはどんな仲でしょうか。

 これは2005年(平成17年)2月2日(水)の第162通常国会の当初予算の基本的質疑でNHK中継されました。そして、この国会は延長会期末の直前の8月8日に解散され、総選挙でけいしゅうさんは3度目の落選を喫しました。

 予算委員長は、これも浅からぬ縁で、このたび、清和会安倍総裁の選対本部長をつとめて、自民党政調会長の座を射止めた甘利明大先生(大和市など選出)。神奈川県オールスターキャストの様相でした。

 このなかで、けいしゅうさんはRCC(整理回収機構)を議題に。「私の友達も、はっきり申し上げて、自分の問題ではなくして、保証人になっただけで全部持っていかれちゃったんですよ、家まで。家まで持っていかれただけだったらいいですけれども、命まで持っていかれましたよ。ということは、自殺をしたということです」として、小泉首相の経済政策を正しました。

 これについて、小泉首相は答弁で「今の御指摘、田中議員は本当に中小企業に詳しいです。今まで中小企業に最も力を入れてきた議員ということも私はよく知っています。地元ですから、私の選挙区の隣なんですから、中選挙区時代は。私の支持者も田中さんを応援しているのも知っていますよ」。

 これに対してけいしゅうは「総理によいしょされても、私はそう思っていないんですよ」と切り返しました。

 小泉純一郎さんは3代目政治家ですが、初代は、横浜市金沢区の六浦(むつうら)という所の鳶職人の家から、横須賀港に出た人です。自由民権運動の闘士で「入れ墨大臣」とも呼ばれました。金沢というところは、1192年イイクニ作ろう鎌倉幕府の時代から栄えたところで、執権・北条氏の分家にあたる金沢北条氏が開発し、公文書館である「金沢文庫」もあります。称名寺(しょうみょうじ)というとても気持ちよいところにありますので、神奈川県民でも行ったことがない人が大半でしょうが、ぜひ行ってみたらいいでしょう。公文書管理担当の岡田克也内閣府担当大臣や藤本祐司・内閣府副大臣らも、行ったことがなければ行ったらいいでしょう。秋よりも、春の方がオススメかな。

 そして、けいしゅうさんの選挙区の戸塚というのは、これは東海道線の「戸塚」駅があるとおり、東海道五十三次の品川から数えて5番目の宿場町。これは1月2日・3日の箱根駅伝でご存じの方も多いでしょう。神奈川県というのは、すべて、1859年に開港した横浜港から栄えており、神奈川県を理解する上では、まず横浜港から押さえるのが必須ですが、しかし、小泉さんの金沢→横須賀、けいしゅうさんの選挙区である戸塚に限れば、横浜港よりも先に栄えていたという共通点があります。

 ところで、谷垣禎一さんが初入閣後の大臣所信表明に対する一般質疑で、野党議員として最初に質問した新進党議員。これもけいしゅうさんなんですね。このなかで、大変興味深い問答があります。

 第141臨時国会の平成9年(1997年)9月16日(火)の衆議院科学技術委員会。このなかでけいしゅうさんは「谷垣長官初め政務次官に御就任された皆様、本当におめでとうございます」「動燃の爆発事故以来、特に危機管理システムという問題について論じられたわけであります」「原子力に頼る日本としての危機管理、すなわち、動燃の爆発事故、さらには今回のような低レベル放射能のずさんな管理という問題等々含めて、今日まで至る経過の中で、科学技術庁として、これらに対する管理のあり方としてマニュアルをつくりなさい」と切り出しています。

 この初質問に対して、谷垣科学技術庁長官は「今田中委員御指摘のように、日本の原子力政策をこれから国民の理解を進めていけるかどうか、私は、危急存亡のときに立っているのではないか。その大変なときにこの長官に就任をさせていただいて、大変責任の重さを痛感しているような次第でございます。今田中委員が御指摘のように、二度と起こったらと。これはもう二度と起こったらいけないわけでございまして、これは起こってまいりますと、日本の科学技術政策というのは瓦解してしまうのじゃないか、こんな気持ちを持っております」と答弁しています。そして、この13年半後に、東京電力福島第一原子力発電所が爆発事故をおこすにいたりました。そして、けいしゅうさんの故郷、浪江町が立ち入り禁止区域となってしまいました。

 さて、なぜ上の方で、自民党の甘利政調会長を「大先生」と呼んだのかですが、もうちょっと書こうと思ったのですが、さすがに夜遅くて眠くなってきたので、こられも含めて、自民党神奈川県連や自民党東京都連、清和会のこと、次回以降、書いていこうと思います。それから、一部で、「横浜八景島シーパラダイス」の「シーパラけいしゅう祭り」について書いているブロガーがいますが、八景島は横浜市役所が埋め立てて西武鉄道が所有した土地なんですよね。西武鉄道の創始者といえば、いうまでもなく、元衆議院議長で、清和会結成メンバーの堤康次郎さんです。昨年まで、清和会の本部が系列の赤坂プリンスホテル旧館内にあったのは有名な話です。小泉首相も国内出張時はプリンスホテルをできる限り利用していました。その辺も含めて、自民党神奈川県連や自民党東京都連、清和会について、明日以降、また書いていこうと思います。

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