ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

「この国に自衛隊があることの誇らしさ」 平成24年度観艦式

2012年10月14日 23時59分59秒 | 第181臨時国会(2012年10~11月)友情解散

(初投稿日時は2012-10-20 20:31:01で、バックデート)

[画像]海自の装備、練度に満足の表情をうかべた野田佳彦総理(中央)、長島昭久防衛副大臣(左端)ら。2012年10月14日(日)、相模湾上の護衛艦「くらま」艦上、海自ホームページ内動画生中継「平成24年度自衛隊観艦式 守るこの海・夢・未来」からキャプチャ。

 今週2012年10月14日(日)、自衛隊の平成24年度観艦式が開かれました。海自横須賀基地沖の相模湾で、護衛艦(旧名称・戦艦)「くらま」の艦上に野田佳彦観閲官(総理)、森本敏防衛大臣、長島昭久防衛副大臣、大野元裕・防衛大臣政務官らが乗りました。自民党政権時代の観閲官は艦橋に乗り込んで見ていたように思いますが、舳先で、波しぶきを浴びながら観閲したというのは珍しいのではないでしょうか。そう思います。平成24年観艦式は、「動的防衛力」が2010防衛大綱で打ち出されてから初めての観艦式だということを意識してプログラムを組んでいるように私には感じられました。

 海上自衛隊の装備や日頃鍛えた技に加えて、同盟国・友好国のアメリカ、オーストラリア、シンガポール各海軍が初参加。太平洋の安定と平和の維持にともに責任を共有していることを感じさせました。我が国が財政難の折、頼もしい限り。その一方、海上保安庁は今年は多忙のため不参加。尖閣諸島の哨戒でしょうか。まさに「本日天気曇天にして波高し」という風情でした。とはいえ曇天だからこそ、限られた装備の中で、この3年間毎日高めてきた練度の高さを見せる機会になったようにも思います。

 このもようはニコニコ生放送と海上自衛隊ホームページで生中継され、私もこちらで見ました。我が国海上自衛隊の装備、練度を見て、改めて頼もしさと「我が国はやっぱり海自(海軍)だ」との思いを強くしました。ぜひ、みなさんも最高の事業仕分けは、国民の世論ですから、ニコニコ動画さんや海上自衛隊のホームページから、平成24年度観艦式のようすを見ていただき、装備や人件費は妥当かどうか判断していただきたいと考えます。

 3年に1回なので、民主党第1次与党期では2度目になりますが、前回は鳩山由紀夫総理が欠席し、菅直人副総理が観閲官を務めました。わが党代表たる内閣総理大臣が観艦式で観閲官を務めたたのは平成10年の立党以来初めて。

 
[画像]東京・千代田の首相官邸からヘリコプターで、走行中の護衛艦「くらま」(相模湾沖)に乗艦した直後にもかかわらず、船酔いなどを一切見せず、観閲官を務めた野田首相。

 そして、自衛官の息子が観閲官をつとめたのも初めてでしょう。



 
[画像]栄誉礼をうける野田総理。


[画像]儀仗をうける野田総理。

 ヘリコプターで着艦し、栄誉礼・儀仗を受ける最高指揮官・野田総理。しかし、総理はそのことに対する高揚感をまったく見せませんでした。これだけでも、野田という男はたいしたものだと思います。

 この後の、海上自衛隊のパフォーマンスに関しては、ぜひとも、動画で見てください。

 動画視聴の情報はこちらの自衛隊ホームページにあります。

 

 さて、観閲を終えた総理は、艦上で訓示をします。

 




[画像]訓示をする野田総理。

 この総理の訓示は、たいへんな名文であり、彼の国防にかける知見と意気込みが現れた後世に残る名演説でした。

平成24年度観艦式での総理の訓示(官邸ホームページ)から引用はじめ]

 昨年の航空観閲式に続き、本日の観艦式において、観閲官として多くの隊員諸君に直接訓示をする機会を得たことは、最高指揮官たる内閣総理大臣として、大いなる喜びとするところです。

 本艦「くらま」を中心とする艦艇、航空機の威風堂々たる雄姿統率の行き届いた一糸乱れぬ艦隊運動。そして士気旺盛な隊員諸君の規律正しく、真剣な眼差し。今日、私はこれらを目の当たりにして、この国に自衛隊があることの誇らしさを、改めて心に刻んでいます。

 この観艦式が、諸君の日頃の訓練の成果を示し、諸君がその胸に秘めた使命感と覚悟を一人でも多くの国民に知っていただく重要な機会となることを信じて止みません。

 海洋国家・日本の「礎」である海。我が国最大のフロンティアである我が国の海を守るという諸君の職責は、日本人の存在の基盤そのものを守ることに他なりません。

 今年は海上自衛隊の前身である海上警備隊が発足してから、60年という節目を迎えました。我が国をめぐる安全保障環境は、かつてなく厳しさを増していることは、改めて諸君に申し上げるまでもありません。「人工衛星」と称するミサイルを発射し、核開発を行う隣国があります。領土や主権を巡る様々な出来事も生起しています。その一方で、自衛隊の活躍の場面は、我が国周辺のみならず、世界各地にまで拡がるようになりました。我が国の平和と独立を保ち、国民の安全を守るという自衛隊創設以来の使命の核心は不変ですが、新たな時代を迎え、その使命は少しずつ形を変え、重要性を増しています。

 そのような中にあって、本日は諸君に3つのことを求めたいと思います。

 まず、諸君に求めたいのは、部隊の力を磨きあげよ、ということであります。
 
 新たな時代にあって、諸君は様々な新しい任務を与えられ、難しい任務を与えられ、厳しい場面に遭遇することも増えると思います。それを立派に果たし切る力を平素から養って下さい。「防衛大綱」に従って「動的防衛力」を構築し、磨きあげて下さい。いざという時、何が求められるのか、それぞれの部署で徹底的に検証し、訓練に励んで下さい。

 諸君は、単に存在することだけで抑止力となるのではありません。鍛え抜かれ、磨き抜かれた諸君一人一人の日々の努力があってこそ、防衛力が具体的な裏付けを持っていくのであります。

 2つ目に諸君に求めたいのは、果敢に行動する勇気であります。

 かつてない状況のもとで、これまで経験したことのない局面、プレッシャーを感じる場面に向き合うこともあるでしょう。

 しかし、皆さんは国家の安全を守る最後の拠り所です。国防に「想定外」という言葉はありません。困難に直面した時にこそ、日頃養った力を信じ、冷静沈着に国のために何をするべきかを考えた上で、状況に果敢に立ち向かって欲しいと思います。いつの時にでも局面を切り拓く力は、最後は諸君一人一人の勇気にかかってくることを忘れないで下さい。

 そして、3つ目に諸君に求めたいのは、「信頼の絆」を広げていくことであります。

 先の東日本大震災での災害派遣では、「すべては被災者のために」という思いで災害対応に当たった10万の隊員の真心が、国民に深い感動を与えました。被災地で、自らは数週間カンメシしかとらず、炊き出しのご飯や豚汁を被災者に提供し続けた隊員諸君の心は、被災者との心の絆を深めたに違いありません。

 また、米軍と自衛隊が共同対処したトモダチ作戦の成功は、日米同盟に結ばれた日米両国の絆を固く結びつけました。これからの日米の動的防衛協力を深めていく大きな拠り所となっていくことでしょう。

 さらに、諸君の同僚が、遠くソマリア沖・アデン湾において海上交通の安全確保の任に当たっていることは、我が国の海運に携わる人々との絆を強めるとともに、世界各国との絆も深め、日本という国全体への信頼を高めてくれています。
 そして、厳しく危険な任務を遂行するに当たって、常に諸君を支えてくれる家族との絆への感謝の気持ちも常に抱き続けてほしい。そう願います。

 最後に、海軍の伝統を伝える「五省」を改めて諸君に問いかけます。

 至誠にもとるなかりしか
 言行に恥づるなかりしか。
 気力に欠くるなかりしか。
 努力にうらみなかりしか
 不精に亘るなかりしか。

 諸君なら、この「五省」の問いかけを胸に、国を守るという崇高な使命を必ずや果たしてくれると信じます。常に国民に寄り添って、優しき勇者であり続けてくれると信じます。

 今こそ、国民の高い期待と厚い信頼に応える自衛隊であるために、諸君が一層奮励努力されることを切に望み、私の訓示とします。


平成24年10月14日
内閣総理大臣 野田佳彦

 [引用おわり] 

 このような訓示を残し、総理はヘリコプターに乗り、走行中の護衛艦の向かい風に煽られながら、首相官邸へと戻りました。
 

 
 ところで、私、五省(ごせい)は知らなかったのですが、海軍兵学校で、生徒がその日の行いを反省するために自らへ発していた5つの問いかけのこと、だそうです。(wikipedia参照)。

一、至誠(しせい)に悖(もと)る勿(な)かりしか

真心に反する点はなかったか
一、言行に恥づる勿かりしか
言行不一致な点はなかったか
一、気力に缺(か)くる勿かりしか
精神力は十分であったか
一、努力に憾(うら)み勿かりしか
十分に努力したか
一、不精に亘(わた)る勿かりしか
最後まで十分に取り組んだか

 ここで、「ごせい」というと、松下政経塾の「五誓」を思い出します。このなかで、一番目の「素志貫徹の事」が総理の座右の銘です。これは「常に志を抱きつつ懸命に為すべきを為すならば、いかなる困難に出会うとも道は必ず開けてくる。成功の要諦は、成功するまで続けるところにある」とのことです。私は学生時代に松下幸之助さんの本をかなりたくさん読んでおり、この「成功の要諦は成功するまで続けるところにある」という言葉は大事にしてきました。野田さんが総理になったときに、「素志貫徹」が座右の銘だと知ったときには、すぐには分からなかったのですが、私が大事にしていた「成功の要諦は成功するまで綴るところにある」という松下翁の名言は、「素志貫徹」は同じ意味だそうです。

 ところで松下政経塾の「五誓」の最後には、「感謝協力の事」として「いかなる人材が集うとも、和がなければ成果は得られない。常に感謝の心を抱いて互いに協力しあってこそ、信頼が培われ、真の発展も生まれてくる」との言葉があります。

 松下幸之助さんは池田大作と往復書簡をしていて、その内容は週刊朝日1974年10月1日号から翌年6月27日号に連載されています。この中で、松下さんは「昔から私心を去り私欲を捨てて素直な心で人生を営むというのは、お互い人間としての一つの理想であるともいわれております」とし、「自分の利害得失にとらわれないようにするために」「最も基本的に大切なのはどういうことでしょうか」としたためています。池田さんは返答の書簡で「結論的にいえば、自己自身を冷静に見極める英知をもつことと、他の人びとに対して自分と等しい尊厳性」を認めることだとしています。そして、「他の人びとの尊厳を認め、その幸福のために尽くしていくことーーここにこそ人間としての根本的姿勢があることを忘れてはならないでしょう」としています。

 なぜ今これを思い出したかというと、松下政経塾出身の我が党幹部が小説「人間革命」を線を引きながら読んでいるとのことを側聞したので、この往復書簡を収めた「人生問答」の方が文庫2冊なので読むのが早いと思ったからです。年上の人に対して、書物を贈るのは失礼とされているので、たまたま思い付いたということで、書いてみた次第です。

  ◇ 

 なお、観艦式の前日(2012年10月13日土曜日)、野田総理は防衛省で開催された平成24年度自衛隊殉職隊員追悼式に出席しました。昨年10月1日からことし9月30日までに、おもに訓練中の交通事故などで亡くなった自衛官で、ことしは9人の殉職者だったそうです。前年は東日本大震災の災害出動の関係で殉職者が増えましたが、ことしは一ケタに戻りホッとしました。しかし、一人一人の殉職者には家族があり、たいていの場合、20歳代の若い自衛官です。遺児らは、お父さんが自衛官であることもまだ分からない幼いお子さんであることが多いです。

 
[写真]平成24年度自衛隊殉職隊員追悼式で追悼の辞を述べる野田総理、2012年10月13日、首相官邸ホームページから。 

 ちょっと、ここで追悼の辞を述べる最高指揮官、すこし目が潤んでいるようですが、まさか自衛官の子としての私心が出てしまったわけではないでしょう。8月に社会保障と税の一体改革法を仕上げ、残されたお子さんたちが、国の支えで教育を受けて、成人したときに、「お父さんは日本国の自衛官だったんだ」と誇りを持って言える国へとしっかりと実績を残した野田さんですが、目が潤むような最高指揮官では、まだまだ「素志貫徹」への道のりは遠いとしか言いようがありません。

[お知らせ]

 衆議院解散はいつか。その答えはこの日程表にある。会員制ブログ(月840円)。

今後の政治日程 by 下町の太陽

 国会傍聴取材の活動資金にもなりますので、ご協力をお願いします。
 
「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い

 国会での審議を中心に地道な政治報道を続けられるようご支援をお願いします。

[お知らせおわり]
tag http://www.kantei.go.jp/jp/fukusouri/press/ http://regimag.jp/b/sample/list/?blog=65 

 

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国会傍聴取材支援基金 会計報告(2012年3月22日から10月13日まで)

2012年10月14日 10時04分23秒 | 国会傍聴取材支援基金 会計報告

 2011年9月26日付で、「国会傍聴取材支援基金」を創設して、ご寄付をお願いして参りました。

 原則半年に1回、会計報告をすることにしていましたので、ここにご報告いたします。

 2012年3月22日から2012年10月13日にまでの「国会傍聴取材支援基金」の会計報告

 国会傍聴取材支援基金の会計報告(2012年3月22日から2012年10月13日まで)


[収入]

   前期からの繰越金 ¥3,000円
   寄付金 
¥10,000円
 
[支出] 

   交通費 ¥6,000円(東京メトロ・JR東日本、「パスモ」チャージ6度)
   資料代 ¥2,750円「國会議員要覧平成24年8月版」(参議院内売店で購入)
    繰越金 ¥4,250円

 以上

 前回の会計報告後、しばらくたった新年度はじめにご寄付をいただきました。ありがとうございました。ゆうちょ口座は匿名でも振り込めますが、今回は事前にメールをいただき、振り込み時にもお名前を打っていただきましたので、お礼を申し上げることができました。もちろん交通費、資料代はもっとかかっておりますが、あくまでも「国会傍聴取材支援基金」でのお願いは上記の形式にいたしましてご報告申し上げます。今の繰越金ですと、選挙取材は首都圏のみというかたちになりそうです。選挙が近づいてきておりますので、よりご支援いただければ幸いです。 

 なお、期間に関しましては、国会取材はある一定期間に時間と体力を大量に投入する必要があり、半年後の日程を考えて、このタイミングにさせていただきました。あすが年金支給日だから、このタイミングで会計報告をしたわけではございませんが、選挙も近くなってまいります。ご理解いただきたく存じます。

  支出(個人負担含む)は質素倹約を徹底していたしております。ご寄付は匿名でも可能です。引き続きご支援のほど、伏して伏してお願い申し上げます。

 平成24年10月14日

 国会傍聴取材支援基金(代表者 宮崎信行)

 ◇

「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い(再掲)

 平成23年9月26日付で、「国会傍聴取材支援基金」(こっかいぼうちょうしゅざいしえんききん)=代表者 宮嵜信行の口座を開設しました。ぜひ国会傍聴取材と当ブログの更新を継続するために支援基金へのご協力をお願いいたします。

■郵便局から振込みの場合
口座: ゆうちょ銀行
記号/10080 番号/70606861
口座名 国会傍聴取材支援基金(コッカイボウチョウシュザイシエンキキン)


■銀行から振り込みの場合
口座/ゆうちょ銀行
店名/ゼロゼロハチ・0一八(「ゆうちょ銀行」→「支店名」を読み出して『セ』を打って下さい)
店番/008 預金種目/普通預金 口座番号/7060686 
口座名 国会傍聴取材支援基金(コッカイボウチョウシュザイシエンキキン)

連絡先・お問い合わせメールアドレス 
miyazaki@wa2.so-net.ne.jp

私が国会傍聴とそれにもとづくブログ執筆のため、時間の確保と、交通費、資料代などに充てるため、本日、上の口座を開設しました。ぜひとも、このブログを続けるために、ご支援をいただきたく存じます。ぜひ、ご支援をお願いいたします。

①口座 ゆうちょ銀行 総合口座 「国会傍聴取材支援基金(代表者 宮嵜信行)」
②政治団体ではありませんので、支援者のご住所・お名前のご連絡は必要ございません。
③支援金を頂いた際は、支援者のイニシャルなどをブログ上で報告します。
④会計報告は半年ごとを予定しています。
⑤寄付金控除の対象にはなりません。

国会傍聴取材支援基金 規約

①(名称)
本会の名称は「国会傍聴取材支援基金」と称する。
②(所在地)
 本会は、東京都(以下略)に置く。
③(目的)
本会は、国会ジャーナリスト・宮崎信行の国会傍聴取材活動の支援を目的とする。
④(会員)
本会に、次の役員を置く。
 会長 1名。
(役員の職務)
 会長は、本会の代表者として本会の活動全般を代表し、会計を把握し、監査する。
 (役員の選任および任期)
 役員は総会の決議に基づき選任し、任期を一年とする。
(運営)
 国会傍聴取材支援基金総会は年一回開催し、役員の改選、年間計画の報告、会計報告、予算について審議する。
(変更)
この規約は総会において、出席者の3分の2以上の承認があれば変更できる。
 (設立年月日) 平成23年9月26日
本規約は平成23年9月26日から適用する。

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かき消された福島の声 復興予算提出前日、森まさこさん「全国防災とかいっぱい入っていて残念」

2012年10月14日 06時15分23秒 | 第179臨時国会(2011年10月)議員立法

[画像]森まさこ自民党参院議員、2011年10月26日、参議院インターネット審議中継から。

【第179臨時国会 2011年10月26日(水) 参議院法務委員会】

 「復興予算」というのはおおすじ、平成23年度第3次補正予算のことです。2011年10月27日(木)に衆参本会議での財政演説で審議入りし、11月21日(月)に成立しました。復興債を発行する復興財源確保法(179閣法4号議案、平成23年法律117号)など関連法が11月30日(水)に成立した一連の「3点セット」(復興債、復興庁、復興特区)を具体化した予算です。この当時すでに、「復興予算」という表現がされていました。基本的には公明党のプランが骨組みとなり、民主党、自民党、公明党の3党合意により参院では「賛成225、反対6(共産党)の賛成多数」で成立しました。

 この提出前日の26日(水)の参議院法務委員会では平岡秀夫法相への一般質疑が行われました。この中で、福島県選出の自民党の森まさこさんが次のように語っています。

 「3次補正の中身を見ましたら、12兆のうち8兆が震災と言っておきながら、被災地への予算ではない全国防災とかいっぱい入っておりますし、この法務省の予算でいっても、今から言う被災地の治安の問題も入っていないし、福島県民の損害賠償の法テラスの法律扶助の予算も入っていないし、一体何のために2か月間無駄にしたのかなというとても残念な気持ちでございます」

 このように、全国防災対策費が被災地向けでないと指摘しています。2ヶ月間無駄にしたというのは、小沢一郎氏が主導した「菅内閣不信任政局」をめぐる6月1日からの混乱の収束と平成23年度特例公債法の成立とひきかえに、民自公が合意した「辞任3条件」にともない、菅直人首相が内閣総辞職を表明した8月26日からの2ヶ月間という意味です。

 森さんの質疑によると、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故にともなう避難区域の治安は「もう泣いてしまって、地獄のようだった。その中に大変な犯罪が多数起きているんです」とし、半年間で避難者の住宅の犯罪被害は30倍になり、50軒に1軒が被害にあい、東電に賠償を要求したところ「悪いのは泥棒だとして一切賠償に応じていない」そうです。さらに、「性犯罪も起きて、避難所に婦人警官が私服で泊まり込むということもありました」とのことで、地獄のような実態です。

 この部分の議事録は下につけました。なお、参議院インターネット審議中継でも、(このエントリーの初投稿時点では)見ることもできます。なお参院福島選挙区は4増4減の減員対象となっています(参院で可決、衆院で継続審査、180参法36号)。福島県では、金子恵美(かねこ・えみ)さんが地味ながらとてもよくがんばっていて、復興大臣政務官(兼)内閣府大臣政務官をつとめています。

 谷垣禎一・自民党総裁は、10月31日(月)の衆議院本会議で「三次補正で計上されている全国防災対策費などは全国で行われるハード事業であり」、「全国防災対策経費の定義は何か、単なる公共事業が紛れていることはないのか」と述べ、全国防災費が全国で行われる単なる公共事業であるとの認識を持っていたことがハッキリ分かります。さすがに宏池会総裁だし、野田さんと「ケミストリーがあう」本筋を見すえた政治家です。

 森さんと同じ日の衆議院厚生労働委員会で安倍派四天王(清和会四天王)とよばれた中国地方選出の政治家の世襲議員(娘婿)は「今回の復興の関係では、被災地だけではなくて、全国防災という観点もあります」と述べています。清和会の安倍総裁誕生にともない総裁特別補佐を務めています。その前日には、鹿児島県選出の民主党衆院議員が災害対策特別委員会で「我々のところでも日向灘というところでよく地震があったりする」「この3次補正の中でも全国防災として2600億強の予算がついているわけです」と指摘しています。この人は非主流派でしたが、今月、政務官になりました。

 wikipediaによると、森まさこさんは清和会ということで、残念な思いです。なぜ森さんの声が自民党内で封じられたのか。それを自民党は語る必要があるのではないでしょうか。

 責任ある政治、健全なる古き良き自民党を体現していた宏池会の谷垣総裁がひきずりおろされ、自民党はふたたび清和会に乗っ取られました。税金乞食、解散乞食の清和会自民党に日本を任せられません。そういう悔しさでいっぱいです。国難にあたって、国家財政を福島など被災地に集中できずに全国防災費に敷衍化してしまうようでは明治維新以来の経世済民、日本の国家戦略の否定です。そして同時に、30年遅れで始まった、代議制民主政治の危機でもあります。

 猛省を促します。そして、国会でも、行政刷新会議でもない。国民の出番が近づいています。 

国会会議録検索システムから引用はじめ]

(前略)

○森まさこ君 御就任から二か月が過ぎようとしております。私、なぜ今冒頭このようなことをお聞きしたかと申しますと、私、千葉景子大臣のころからずっとこの法務委員会で自民党の筆頭理事をさせていただいておりますけれども、大臣所信のたびにむなしい思いを感じているものですから質問をさせていただいたということなんですね。
 民主党政権になって二年ちょっとですか、平岡大臣を入れずに計算しますと、お一人当たり在任期間が五・八か月、約五・八か月と半年にも満たないわけでございます。ですから、大臣所信のたびに質問をさせていただいて、法務大臣のそれなりのお考えというものをいただいているわけでございますが、これがなかなか政策に反映されないうちにまた次の大臣になってしまう。平岡法務大臣も約六か月の在任期間だと仮定いたしますと、もう既に二か月が過ぎてしまった。やはりもっと早く、就任直後に大臣の所信を伺いたかったわけなんです。
 今日は、私、被災地の福島県でございますので、福島県の原発地域の空き巣被害が大変な問題になっております、このことをこの後質問をさせていただくんですけれども、平岡大臣の前の江田五月大臣に何回も質問しているんですよ。それが、もう被害が増大する一方なんです。しかも、看過できない事態もいわき市で起きております。ですから、私は早く大臣所信をいただきたかったなと思うんですが、野田総理が任命してすぐに国会を閉じてしまった。それで、私たち、平岡大臣に所信を伺って、そして、そこでいろんな、大臣ってどういう人なんだろう、何を考えて、法務行政どう進めるんだろうと質問をする機会もなかったし、前回からの引継ぎ事項を注文する機会もないうちに二か月が過ぎちゃったんです。
 それは、補正予算を組むから忙しいからという理由だったから、震災のための補正予算を組んでいただけるのであればやむを得ないかなと思って待っておりましたが、この間出てきた三次補正の中身を見ましたら、十二兆のうち八兆が震災と言っておきながら、被災地への予算ではない全国防災とかいっぱい入っておりますし、この法務省の予算でいっても、今から言う被災地の治安の問題も入っていないし、福島県民の損害賠償の法テラスの法律扶助の予算も入っていないし、一体何のために二か月間無駄にしたのかなというとても残念な気持ちでございます。
 大臣、このことについて、まず大臣のお考えをお聞かせ願えませんか。

(中略)

○森まさこ君 今のことを私から詳しく説明を申し上げますと、震災後、いわき市の福島地検いわき支部、それから地裁いわき支部も、ちょっと時を異にしておりますが、十五日、十六日に次々と庁舎を閉めて、十六日には郡山の方に移動してしまったということがあったんです。そして、それに先立ち、地検では勾留をしていた被疑者を全員釈放する、処分しないで釈放するということがあり、その中には女性の家に押し入って手錠をはめて性的犯罪を犯すという、そういう容疑者もおりましたし、釈放されたうちの被疑者がまた再犯を起こしたということも起こりました。
 あの当時、いわき市は避難地域でありませんでした。三十キロまでが屋内退避です。一部三十キロに入っておりますが、警戒区域ではありませんから、いわき市の北部の少しだけが屋内退避、それ以外全ていわき市は何の避難区域にも、政府の言う避難区域に入っていないんですよ。そこにいなさいという指示です。ガソリンも何もなくて、自分で避難したいと思う人さえ避難できなかった。今お昼休みに、福島県の方々、双葉郡、いわき市の方に会ってきましたけれども、その当時の状況を話すと今でももう泣いてしまって、地獄のようだった。その中に大変な犯罪が多数起きているんですよ。
 私が三月二十四日に質問したときには、警察庁は、特にそんな犯罪は増加しておりませんし、ちゃんと警戒していますというような答弁でしたけれども、今になって、十月十六日の朝日新聞に書いてありますけれども、九月末までの住宅の被害は前年同期の三十倍近くに達していて、五十軒に一軒が被害に遭った。被害者からはこれは避難せよということが原因なんだからということで東電に賠償を求めておりますが、東電は悪いのは泥棒だとして一切賠償には応じていないんですよ。これは財産犯罪だけの話ですけれども、先ほどのような性犯罪も起きて、避難所に婦人警官が私服で泊まり込むということもありました。
 その中で、国民に対して避難指示が出ていないのに、国の機関が先に避難したというのはどういうことなんですか。大臣、お答えください。(後略)

[引用おわり]

国会会議録検索システムから引用はじめ]

(前略)

○谷垣禎一君 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、先般の野田総理の所信表明演説、安住財務大臣の財政演説について質問いたします。(拍手)
 冒頭、東日本大震災並びに相次ぐ台風の被害によって不自由かつ不安な日々をお過ごしの皆様に対し、心からお見舞い申し上げるとともに、地域における復旧復興に向けて、自民党は引き続き総力を挙げてまいることをここにお約束いたします。
 また、先般のタイ王国大規模洪水及びトルコ共和国大地震災害に対して、政府においては最大限の支援策を講じることを強く求めます。
 さらには、歴史的な円高の影響によって、多くの企業が厳しい経営を強いられております。政府は、本日、市場介入を行いましたが、引き続き市場に対して断固たる姿勢を示すよう求めます。
 さて、政権交代より、はや二年の歳月が過ぎ、その間、民主党政権において三代目の総理に至りました。我が自民党も、小泉総理で総選挙を行い、その後、三人の総理がかわったことは公平に述べておかねばなりません。
 しかし、その際に、野田総理、あなたは、与党のトップが交代する際には民意を問うべきであると言われたことを覚えておられるでしょうか。今もその意見は変わりありませんか。
 この二年間、民主党の、絶え間ない内紛、統治能力の欠如によって国政の著しい停滞を招き、内政、外交にわたって多大なる国益の損失をもたらしました。これを民主主義のコストとして安易に片づけてしまうことは、到底許されません。
 国際社会においては、来年の主要国における権力の移行期を控えつつ、欧米諸国の財政リスクが顕在化し、他国を顧みるゆとりもなく、ひたすらみずからの国益を追求して、しのぎを削り合う情勢にあります。
 一方、国内に目を向ければ、少子高齢化は急速にその進行の度を深め、経済の高成長、それによって立つ財政の分配を期待する経済社会システムは、もはや昔日のものとなりました。その上に、この大震災が我々を襲ったわけです。
 これらを踏まえれば、民主党の政権担当能力を磨くための授業料を支払う余裕が残されていないことは、国際情勢からも、国民の懐ぐあいからも、明らかであります。
 また、民主党政権におけるマニフェスト施策の実現が進まないどころか、後退、違背を繰り返すことによって、国民との契約違反の状態が続いております。
 野田総理は、その不履行の要因として、景気後退による税収減、ねじれ国会、東日本大震災、この三つを挙げています。しかし、これらはすべて、無駄を省いて財源を確保することで施策を実施するというマニフェストの基本構造に対しては、何ら関係がありません。どれが無駄の削減策を左右し得たのでしょうか。震災前の昨年末に野田財務大臣のもとで編成された平成二十三年度予算において、十六・八兆円と言っていたマニフェストの実行額がわずか三・六兆円にとどまっていたことこそ、その構造的欠陥の明らかな証左です。
 国民は、さきの総選挙で票という代金を支払ったものの、約束された商品を受け取れないままとなっております。うそをついて奪い取った政権はそのままに、誠実な履行をすることができないのであれば、根強い政治不信を払拭することもできず、国民は、コストをひたすら払い続けるのみです。
 これらの厳然たる事実を、政権運営に当たる野田総理においては十二分に認識すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 さて、平成二十三年度第三次補正予算案と東日本大震災に係る復興財源の確保のあり方について、我が党の基本的考え方を申し述べつつ、政府・与党の考え方をただしてまいります。
 初めに明らかにしておきますが、我が自民党は、七月八日には、総額十七兆円の震災対策を公表しております。その財源のうち、歳出削減や税外収入で賄えない分について復興債を発行することとし、その信認を担保するために、所得税、法人税等の付加税により償還の道筋を明確にすべきであると、いち早く表明しております。
 我が国財政事情は深刻さをきわめており、東日本大震災からの復旧復興対策経費が巨額に上る中で、いかに財政規律を確保するかという基本的認識において、政府・与党と私どもとは違いはありません。
 しかし、今回の政府・与党の三次補正予算案と復興財源確保法案は、我が党の取りまとめから三カ月半以上おくれている上、その間、内容についてよほど詰めが進んでいるのかと思いきや、国民の皆様に負担を求めるにしては、随分粗っぽい、いいかげんな案を出してきたとの印象であります。
 国民の皆さんに負担を求めるためには、丁寧な説明と合理的な制度設計が必要であります。政府・与党の案はその双方の要素に欠けており、運び方も、案の内容も、稚拙そのものです。このような政府・与党が、今後、消費税でさらに大きな国民負担をお願いすることに取り組むというのであれば、その資質からして、大いに疑問を抱かざるを得ません。このことを、質問を通じて明らかにしてまいる所存です。
 我が党は、第一に、現在の政府・与党案の復興債の償還期限が十年とされているのは短過ぎると考えており、その大幅な延長を求めております。
 理由としては、まず、千年に一度という大震災の復旧復興経費に係る財源調達を現世代の負担によってのみ賄うとすれば、現世代が前後の世代と比較して、大震災があったばかりに過重な負担を強いられることになり、不公平と言わざるを得ません。特に、復興による受益を後の世代が享受することを踏まえれば、世代をまたいで負担を分かち合う必要があります。
 しかも、復旧復興経費の内容を見れば、三次補正で計上されている全国防災対策費などは全国で行われるハード事業であり、中身において、通常の建設公債発行対象経費と明確に区別が可能なものとは到底思えず、復興債及びその償還財源としての税制措置で賄わなければならない理由がわかりません。
 また、我々は、単に、長く償還期限を延ばせと申し上げているつもりはありません。我が国財政に対する市場の信認を高める上で大事なことは、償還の道筋をしっかりとつけることであって、償還期間をいたずらに短くすることではありません。政府・与党は、この点を混同しております。
 さらには、我が国財政の今後の課題を見据えれば、いたずらに短く設定することには疑義があります。
 我が国は、基礎的財政収支の黒字化などの財政健全化目標を設定しており、その達成に向けて、消費税を含む税制抜本改革は避けられません。目先の性急な復興財源確保のみにとらわれず、マクロの財政健全化の取り組みとの関係にも配意し、償還期間を長くとることで、その負担を薄いものにしておく必要があります。
 そこで、総理に質問いたします。一つ一つお答えください。
 まず、三次補正予算に係る東日本大震災復興経費十一兆七千三百三十五億円のうち、公債発行対象経費とそれ以外は幾らずつか。言いかえれば、この部分について、今回のような異例の対応ではなく、通常の公債の追加発行による対応をとった場合、建設公債、特例公債はそれぞれ幾らとなったのか、伺います。
 その上で、それらについて、建設公債等によらず、あえて復興債及びその償還財源の確保のための税制措置というスキームによることとした理由を改めて伺います。
 次いで、政府・与党案では復興債の償還期間が通常の六十年償還ルールに対して十年と大幅な短縮がなされたことについて、いかなる理由づけがあるのか、お答えください。
 さらには、そこまで償還期間に差を設けるからには、債券の発行で賄われる事業の性質についても明確な差が認められるのでしょうか。例えば、全国防災対策経費の定義は何か、単なる公共事業が紛れていることはないのか。両者を区別する基準は何でしょうか。
 さらに伺いますが、消費税の取り扱いなどを含めて今後の財政健全化への取り組みが具体的に固まっていない中で、短い償還期間を設定して単年度当たりの国民負担を大きなものにしてしまうことが、今後の取り組みへの足かせとなるのではないでしょうか。
 これらに対する答弁を踏まえた上で、改めて、償還期間の大幅延長を求めている我が党の見解に対するお答えをいただきたいと存じます。
 第二に、我が党は、二十三年度予算における子ども手当の減額措置に伴って、特例公債を減額することを求めております。これは、民主党のマニフェスト施策を目のかたきにして、その歳出削減に見合う特例公債減額を立てることであえて辱めに遭わせようとしているわけではありません。子ども手当の見直しの要因を震災に求めることが筋違いだと申し上げているわけです。
 そもそも、特例公債発行額を極力圧縮するというのが財政運営の基本ルールであり、特例公債の発行によって全体の予算が賄われている以上、歳出の削減を行う一方で建設公債発行対象経費の増額が行われた場合、特例公債を減額して建設公債に振りかえるのが補正予算の通例であるはずです。なぜ、今般はそのような対応をとらないのでしょうか。
 政府・与党が、マニフェスト政策については特例公債に頼らず財源をきちんと確保したという建前と、復興債と建設公債を同時発行しないことにこだわる余りに、特例公債発行の減額に努めるという財政運営の基本ルールをないがしろにしてしまっているのが今回の対応ではないかと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
 そして、このような対応を今後も踏襲していくとなると、二十四年度以降の当初予算についても、復興財源となる歳出削減分については、その見合いとなる復興経費に幾ら公債発行対象経費があっても特例公債発行額を減額しない措置をとり続けることになりかねませんが、それでよろしいのでしょうか。本来圧縮できるはずの相当規模の特例公債発行額が毎年度圧縮できないということになってしまいますが、そのことは財政運営として妥当なのか、あわせて御回答願います。
 以上を踏まえた上で、改めて、今般の三次補正予算、さらには二十四年度予算以降における子ども手当の歳出削減分を特例公債減額に充てることを求めます。
 第三に、我々は、復旧復興経費を管理する特別会計の創設を求めています。
 今回の政府・与党の復興財源確保のスキームが、余りにいいかげんで、国民にとって受益と負担の対応関係が見えにくいものであることを踏まえると、特別会計の創設は、いよいよ必要となります。それにより、復興経費は新たな特別会計で管理されることとなるため、その他の経費との差別化が進み、単なる通常の公共事業関係費が全国防災対策費として復興経費に紛れ込んでくるようなことも防がれていくと考えられ、B型肝炎対策との区分も明確になります。税財源が確保されている復興事業の進捗度合いが明確になり、今後、国民からも、さらなる税制上の措置が必要な状況にあるのかどうかということが見えやすくなります。復興を名目に講じられた税制措置による増収分が、他の事業に費消されることなく、必ず被災地向け歳出に充てられることが明確になることで、国民の納税意識も高まるものと考えます。
 政府・与党は、今回の復興財源確保のスキームについて、よくよく居ずまいを正した上で、国民に増税の理解を求めていくべきです。特別会計設置に関する野田総理の見解を改めて伺います。
 復興財源としての税外収入、歳出削減をめぐっては、前原政調会長と政府側とで、増税額をめぐって行ったり来たりのやりとりが続くという混迷ぶりを見せつけましたが、相変わらず取り扱いがすっきりしておりません。
 関連してお尋ねしますが、国家公務員給与特例法案による国家公務員給与の引き下げ分は復興財源にカウントされている一方、二十四年度予算などで連動して行われる地方公務員給与に係る地財措置、さらには義務教育国庫負担金や独立行政法人運営費交付金の見直しなどによって生み出される財源については、復興財源に使うのではなく財政再建に使うとの報道もあり、現段階では復興財源としてはカウントされていないようです。
 しかし、やはり公的部門全体で捻出する復興財源として整理することが適切であり、今後、復興経費の増加が確実な中で、これ以上税負担をふやさないために用いるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、社会保障・税一体改革について伺います。
 先般、五十嵐財務副大臣が、二〇一五年度までの消費税率の一〇%への引き上げは二段階に分けて行い、その第一段階目は再来年秋の衆院任期満了後に行う旨を示唆しましたが、本来、財政や経済の状況を踏まえ決せられるべき消費税率の引き上げのタイミングが、それらとはおよそ関係ない政治日程との関係で決まるというのは、いかにもナンセンスであり、いかにマニフェストとの関係で民主党が消費増税の検討を行うことが破綻を来しているかのあらわれであります。
 そもそも、あなた方が法案提出のよりどころとしている消費税を含む税制抜本改革の規定を含む平成二十一年度税制改正法に、民主党は反対されたのではありませんか。さきの総選挙におけるマニフェストには、消費税について一言の言及もありませんでした。当時の鳩山代表は、消費税は二十年間上げないことを公然と述べておられました。
 社会保障・税一体改革は必要な政策ではありますが、ここでもまた国民に対して言行不一致な行動をとろうとするあなた方は、票を投じた有権者にどう説明するのでしょうか。
 また、平成二十一年度税制改正法附則第百四条との関係で今年度内に具体的な法案提出ということになれば、年内にはその概要を固める必要があります。しかし、議論の時間が余りに不足しています。
 六月に成案を取りまとめて以降、社会保障機能強化の進め方等、具体的な検討が進んでいるようには聞こえてきません。複数税率など逆進性対策をどうするのかといった受益と負担の関係も全く見えないまま年末までの二カ月ですべてを決めてしまうことには、相当無理が伴います。
 このように、無理に無理を重ね、国民に言ったことと違う政策を押し通そうとするあなた方の社会保障・税一体改革への取り組みの前途は多難と考えますが、野田総理としては、この窮屈な日程の中で具体的なスケジュールをどのように進めていこうとされているのか、具体的にお示しいただくとともに、改めて御決意を伺います。
 過去二代にわたる民主党政権によって我が国の外交の基盤は大きく揺らぎ、今や、その失地回復にのみきゅうきゅうとせざるを得ないのが現状であります。普天間基地移設問題についても、その迷走によって米国との信頼関係を大きく損ねたために、政府・与党は、そのツケをなりふり構わず返そうとしているかのように見受けられます。
 TPP交渉への参加をめぐっても同様であります。
 そもそも、日米関係において日々の情報交換や意見調整等が円滑になされていれば、このような切迫した事態に陥っていなかったはずであります。また、国益にかかわる重要事項にもかかわらず、政府が情報を提供しないため、参加の可否を判断するための国民的議論が全く熟しておりません。それに加え、藤村官房長官や前原政調会長は交渉途中の離脱の可能性を明言されていますが、入り口から逃げ腰の国を相手に、他の参加予定国が真剣に向き合うことはあり得ません。
 これまでの経緯から昨今の騒動まで、極めて稚拙な取り運びとなっていることについて、民主党並びに野田政権の責任は極めて重いものと考えますが、その点について総理の見解を伺います。
 いずれにせよ、我が国は、世界に物を売って、自国で賄い切れないエネルギーや資源を買って成り立っている以上、自由貿易体制を志向せざるを得ず、その中で国内産業にも十分な目配りをする。その際、不断の外交努力でみずからの国益を主張し他国の譲歩を可能な限り引き出すとともに、国内産業に対しては、不安と弊害を払拭すべく、財源に裏づけられた対策を適切に講じていくことが、我が国の基本戦略ではないでしょうか。前者は先ほど指摘しましたが、後者についても、その対策が不十分なものと考えます。
 民主党政権は農家の戸別所得補償制度を推進していますが、これは、基本的には価格差補てんの仕組みであります。したがって、関税障壁が除かれて市場価格が払底しても、これより高い生産価格との価格差を補てんすることで、TPPへの一定の対応策にはなります。しかし、価格差が拡大していけば、それを埋めていくための巨額の財源を要します。
 TPPで輸出企業に、戸別所得補償で農家にもいい顔をし、その結果、財源はないとなれば、まさに、あの詐欺マニフェストと同じことであります。
 そもそも、財源が限られた中では、頑張って競争力を発揮できる農家には担い手として支援するとともに、農業の多面的機能の観点からも直接支払いを中心として支えていくといった、政策目的に応じた農業政策こそが求められるものと考えます。その見きわめもないままばらまくのみでは、財源は枯渇して、結局は農業を守ることもできず、民主党が五〇%まで掲げた食料自給率は見る見る低下し、農村は荒廃し、過疎化が進む一方となります。
 政府においては、積極的に情報を開示し、今後の確たる展望を示すことで国民の議論に供するよう、強く求めます。
 APECも差し迫っておりますが、TPPがもたらすメリット、デメリットは具体的に何か、TPP交渉に参加するのか否か、野田総理の明確な答弁を求めます。
 野田総理が早期成立の意欲を示しておられる国家公務員給与特例法案について伺います。
 我が党は、国家公務員の給与引き下げ自体に反対しているわけではありません。協約締結権とセットであることを問題視するとともに、人事院勧告を実施した上で、さらに深掘りすべきと考えております。これによって、地方公務員等を含め、より大きな削減が実現できるわけです。
 さて、本法律案は、その策定過程で、自治労、日教組が大宗を占める職員団体と交渉を行った結果まとまったものと承知しており、官が身を切るという、一見改革的でありながら、組合配慮ありきの法律案であるとすれば、働きアリの税金にシロアリがたかる構図が総理の足元で始まっているということとなりかねません。
 その点に関して、まずは、協約締結権の付与を行う国家公務員制度改革関連四法案との関係を確認いたします。
 給与特例法案が仮に協約締結権の付与と交換条件になっているとしたら、本法案は組合天国への誘い水であるということになり、論外であります。
 連合などは、ホームページで、十月十一日の政府とのトップ会談における、国家公務員制度改革関連法案と国家公務員給与特例法案を同時期に成立を目指すという基本姿勢は変わっていないという関係閣僚の答弁を成果として喧伝していますが、これは事実でしょうか。四法案とのセットを組合と取引しているとすれば、復興財源捻出を装いながら、実際は協約締結権の取得対価としての手あかにまみれた引き下げ法案であることになり、我々としては、審議にも値しないということになります。
 この答弁をした閣僚を明らかにしていただくとともに、事実であるとすれば、撤回を求めます。事実でないとすれば、この答弁を否定し、四法案の処理とは完全に切り離す旨をこの場で明言してください。
 重ねてお尋ねします。
 政府は、閣議決定において、国家公務員給与特例法案は人事院勧告の趣旨を内包しているとして人事院勧告不実施を決めましたが、人勧の趣旨は、労働基本権の制約の代償に尽きると言って過言ではありません。
 給与特例法案は、人勧どおりのマイナス〇・二三%ではなく、マイナス七・八%にまで労働者の給与を一段と大幅に引き下げるわけですが、これのどこが、どうして、その趣旨を含むことになるのでしょうか。含んでいないとすれば、虚偽の閣議決定であったということになりますし、人勧無視の憲法違反ということになります。含んでいることになれば、それこそ四法案とは連動しないものであることが明らかになるので、四法案の棚上げを求めます。この点の確認をお願いいたします。
 なお、内包しているという閣議決定がそのとおりであれば、独立行政法人、義務教育国庫負担金を初め、国家公務員給与の改定に伴う公的部門の人件費に関する扱いは人勧の際と全く同様でなければ、閣議決定が偽りとなるということを申し添えておきます。
 いずれにしても、内包云々という苦しい説明をしていますが、政府には、人勧を実施した上で給与特例法案も成立させる選択肢もあったのに、わざわざダイレクトに人勧を不実施にする理由がどこにあったのでしょう。ぜひ御教示ください。
 人勧不実施を高らかにうたう背景に、よもや、人勧制度の廃止、協約締結権の付与に向けて、人勧不実施の実績をつくりたいという何らかの政治的思惑はなかったのか、あわせて伺います。
 国民の皆様には、各種の組合が政府に対して人勧不実施を申し入れているという事実を申し添え、組合依存という民主党の実態をよく見きわめていただくとともに、保守政治家を自認する野田総理におかれては、ぜひ、組合との取引によって国政が壟断されることがないよう、衷心から御忠告申し上げます。何かおっしゃりたいことがあれば、反論していただいて結構であります。
 次に、選挙制度改革と一票の格差是正について伺います。
 先般、衆議院の選挙制度について各党の協議会がスタートしました。我が党も、具体的な提案を行い、積極的に参加してまいります。
 私は、既に衆議院議員の任期が二年を切っており、まずは当面の対応として、衆議院の小選挙区における一票の格差が憲法違反と判断されている状態を一刻も早く解消すべきと考えます。
 そのためには、現在、最高裁判決を受けてストップしているいわゆる区割り審の審議を早急に再開することが、不可欠の第一歩となります。今国会でその前提となる条件をクリアする必要があると考えますが、野田総理は、どのような条件が整えば審議を再開できると理解しているのか、伺います。
 また、区割り審が直ちに調査審議を進めたとしても、来年二月二十五日の期限までに審議を終えて勧告を行うことが困難な場合、勧告期限の延長期間は必要最小限のものとすべきであります。早期の解散を避ける意図を持ってわざと長く延長しているといった疑念を国民に抱かれるようなことがあってはなりません。
 延長は最小限の期間とし、勧告が出たら、速やかに区割りを改定する法律を成立させる、かつ、その公布から施行までの間、すなわち周知期間は、十年前と同様の一カ月とすべきであると考えます。この点についての野田総理の見解を確認します。
 一票の格差是正のための区割りの改定は、先ほど述べた手順でいけば、次期通常国会のうちに実現し、憲法に違背しない制度で国民に信を問うことが可能となります。なお、それまでの間においても、今の民主党政権の状態では、即刻解散・総選挙を行う以外に日本を救う道がないという状況を迎えることも十分に考えられます。その場合には、私は、現行制度のもとでの解散・総選挙も必要だと考えております。
 区割り審の審議や法改正の途上である場合でも解散権は常に制約されないと理解しておりますが、この解散権の解釈について、野田総理の見解をここで明確にお示しください。
 なお、最高裁判決から一年を経過しても国会が法改正の道筋をつけられないことは、国会の権威にかかわる重大問題であると重ねて申し上げておきます。
 本日は、多々政策課題について伺いましたが、政策を実現するに当たっては、何より、その主体となる為政者の資質が問われます。クリーンな政治を標榜する民主党において、野田総理を初め、鳩山元総理、菅前総理、小沢元代表、前原政調会長などの幹部が相次いで政治資金問題を引き起こしているまま、その説明責任も十分に果たされてきていないことは、その資質の欠如のあらわれと考えます。我々は、この問題をいたずらに復旧復興の議論の妨げとするつもりはありませんが、政党間の信頼関係を構築し、議論を円滑に進めるための環境整備に意を砕くことは、与党の務めであります。
 これに関して、二つ伺います。
 まず、野田総理御自身の外国人及び脱税関係企業からの献金問題について、今国会において説明責任を必ず果たしていただくよう求めます。九月三日に、調査する、結果が出たら報告すると述べてから、途中経過の報告も公表のめども示さないままに二カ月がたちます。
 また、小沢元代表に対し、国民から選ばれた公人として、証人喚問に応じ国会においてその説明責任を果たすよう、民主党代表として指導力を発揮するのかどうか、総理は、誠実かつ明確にお答えください。
 さきの臨時国会において、私は、野田総理に対し、保守政治家としての理念を問い、民主党の理念のあらわれである綱領の有無について伺いましたが、いずれも明確な回答を得られませんでした。
 政権発足後しばらくは、野田三原則、余計なことは言わない・やらない、派手なことはしない、突出しないとの安全運転などのおかげか、大きな混乱はもたらされませんでした。しかし、これは、何の見るべきことも進められなかったということであり、いわば停滞であります。結局は、理念なき総理、綱領なき政党において、大局的な政策判断の物差しを欠く以上、内政、外交にわたる重要課題を乗り越えていくことはできません。
 それに加え、何より、マニフェストの破綻と、かつてみずからが批判した信を受けないままの総理たらい回しによって、この政権は、主権者たる国民に対して正統性を欠いていることは明らかであります。
 被災地で延期されていた地方選挙も十一月二十日にはすべて実施されるとともに、復旧復興の補正予算も三次を数えるに至りました。にもかかわらず、復興を理由に、被災地を含む全国民との契約違反の状態は放置されたままにあります。
 国民との契約違反の十字架を背負い、国民からの信という権威の裏づけもないがゆえに、確たる政策体系は構築できず、その場を取り繕うことのみが野田政権に許されたことなのではありませんか。
 したがって、今後一気に押し寄せるであろう政治的かつ政策的な矛盾によって、これまで同様、もしくはそれ以上の政治的混乱がもたらされることは不可避であり、早晩行き詰まることは必至であります。
 この混乱を回避し、国政の停滞を打開するためには、解散・総選挙によって国民との再契約を行って信を受け、大事に当たるための政権の基礎体力を回復することが求められます。それを欠いたままで、マニフェスト違反の消費税や普天間問題、TPPや選挙制度改革といった重要課題をすべて乗り越えられるとお考えでしょうか。
 これらの課題を総合的に組み立て、実現していくためには、政治の力を要するわけであり、各省が行政の発想で描く絵のとおりには決して事は進みません。
 何もなすこともなかった二代にわたる亡国の宰相の轍を踏まないためにも、賢明なる回答を野田総理に心から期待し、私の質問を終わります。(拍手)

(後略)

[引用おわり]

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