平成27年度当初予算(案)を政府が決定したのを受けて、民主党は2015年1月24日(水)枝野幸男幹事長名の「談話」を発表し、この中で「国債依存度低下や税収増など歳入面の改善も、消費税8%引上げの平年度化等を踏まえれば当然の話にすぎない。日本銀行による事実上の財政ファイナンスに支えられている面も大きく、日本経済の不確実性は増している」と指摘しました。
民主党の正式文書で「財政ファイナンス」と指摘したのはこれが初めて。
国会論戦ではたびたび、「財政ファイナンス」という言葉が飛び交っていますが、秋の臨時国会では、日本銀行の黒田東彦総裁は、民主党の大久保勉参院議員に対して「財政ファイナンスといったことは全く意図しておりません」(2014年10月28日の参議院財政金融委員会)と答弁するなど、財政ファイナンスを一貫して否定しています。
財政ファイナンスとは、財政赤字のマネーファイナンスとも呼ばれ、財政赤字である国債を政府が発行し、中央銀行が紙幣で国債を買い込むことで、財政赤字を見かけ上消してしまうことです。
2013年4月4日から始まった、黒田東彦日銀総裁による、異次元の金融緩和は、物価安定目標2%の達成というよりも、実は、財務省の1000兆円の国債を見かけ上消してしまう財政ファイナンスではないかとの指摘が出ていました。
財政ファイナンスをすると、見かけ上(名目)で財政赤字が小さくなりますが、見返りに紙幣発行量が増えるため、経済成長の無いインフレーションが起きるという悪質な経済循環が起きえます。政府や日銀が財政ファイナンスを認めない背景には、政府が新規発行した国債を直接購入していないという面もありますが、日銀が絶対に買ってくれると分かって民間金融機関が財務省理財局に入札に参加していれば、事実上、日銀が政府から直接買っているに近いのではないかという指摘もあります。
枝野幸男幹事長の「談話」は以下のとおり。
2015年1月14日
平成27年度予算案について(談話)
民主党幹事長 枝野幸男
本日、平成27年度予算案が閣議決定された。
まず、指摘しなければならないのは、26年度の実質経済成長率の見通しが、当初の1.4%からマイナス0.5%へと大幅に下方修正されたことである。実質成長率が年度でマイナスとなるのはリーマンショック以来5年ぶりの事態であり、安倍内閣の経済失政は明らかである。
一般会計総額は96兆3420億円と過去最大規模となった。経済対策であるはずの26年度補正予算に防衛費を2110億円も計上する等、禁じ手とも言うべき手法を使って見かけを小さくしてもなお、財政の肥大は明らかである。国債依存度低下や税収増など歳入面の改善も、消費税8%引上げの平年度化等を踏まえれば当然の話にすぎない。日本銀行による事実上の財政ファイナンスに支えられている面も大きく、日本経済の不確実性は増している。
予算配分の中身にも問題が多い。安倍政権下で膨れ上がった公共事業費には手が付けられず、議員定数削減など約束した身を切る改革も未だ実現していない。その一方で、国民生活に直結する歳出は削減を断行しようという予算になっている。
政府は社会保障の充実・安定化のために消費税増税を決めたはずだが、今回、介護報酬は引下げられ、障害福祉の事業者向け報酬も実質的に引下げられている。これでは介護関連人材の不足に拍車がかかり、サービスの低下を招きかねない。また、消費税8%への引上げが国民生活に与える影響を緩和するために創設した子育て給付金についても、1人当たり1万円から3千円に減額するというが、国民の納得は到底得られない。
実質賃金が17か月連続マイナスとなるなど、国民生活の苦しさが増す中、このような施策が断行されれば、消費はますます低迷し、経済は混迷の度を深めかねない。
民主党は、まもなく開会する通常国会での論戦を通じ、国民生活を重視した予算の実現を図っていく所存である。
以上