渡辺恒雄あとつぎ宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【法案】「動産」「売掛金」非典型担保融資の抵当権といった民法など改正案の検討を開始、2023年にも法案提出か

2021年01月16日 21時15分37秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]日比谷公園から見た法務省、きょねん2020年、宮崎信行撮影。

 在庫、自動車などの動産や、回収前の売掛金など非典型担保融資の活発化を念頭に、動産や売掛債権などに抵当権など担保を設定して登記できる、民法物権編などの改正審議を法務省が始めることになりました。

 きのう、上川陽子法相が記者会見で、法制審議会に諮問すると明言しました。

 来月令和3年2021年2月の法制審議会総会から議論をスタート。部会をつくり、おそらく2022年以降にとりまとめ、2023年頃に国会に民法や登記法などの改正法案が提出されることになりそうです。

 上川法相は「平成31年(2019年)3月から,「動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会」で,検討が進められてきましたが,法改正に向けた具体的な検討を行っていただくため,この度,法制審議会に諮問することといたしました」とプロセスを説明しました。

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Ⓒ2021年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki
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◎離婚をめぐる民法、80年前後ぶりの抜本改正へ、上川陽子法相が自ら明言、「家制度」廃止の昭和23年民法で初めて、養育費など「チルドレン・ファースト」の意見をつけて法制審議会に来月諮問へ

2021年01月16日 21時00分06秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]上川法相の衆議院議員としてのツイッターのヘッダーをスクリーンショット。

 上川陽子法相は、きのうの記者会見で、民法などの離婚法制の改正について、来月の法制審議会に諮問する、と自ら明言しました。

 「不貞があった場合」など離婚条件を定めた民法770条は、家制度を廃止した昭和23年改正民法から改正されたことがなく、仮に改正されれば、80年前後ぶりの改正になります。

 菅内閣で通算3度目の登板となった上川法相(自民党岸田派会長側近)は、きのう令和3年2021年1月15日(金)の閣議後記者会見で電撃的に次のように語りました。

法務省ホームページの暫定版の書き起こしから引用はじめ]

本年2月に法制審議会の総会を開催し,2つの検討課題について新たな諮問をすることといたしました。
 1つは,離婚及びこれに関連する制度に関する見直しであり,もう1つは,担保法制の見直しです。
 まず,離婚制度に関しましては,近年,父母の離婚に伴い,養育費の不払いや親子の交流の断絶といった,子の養育への深刻な影響が指摘されています。
 また,女性の社会進出や父親の育児への関与の高まり等から,子の養育の在り方も多様化しております。
 このような社会情勢に鑑み,子の最善の利益を図る観点から,離婚及びこれに関連する制度につきまして,検討を行う段階にあると考えております。
 この問題につきましては,令和元年11月から,「家族法研究会」の検討に法務省の担当者を参加させ,私からも,担当者に対して,積極的に議論に加わるよう指示をしてまいりました。そして,その検討状況につきましては,その都度報告を受けてまいりました。
 父母が離婚した場合には,子の心身に大きな影響が生じ得ることになります。
 私自身,かねてからこの問題に関心を寄せておりまして,子の最善の利益を図るために,法制度はどのようにあるべきかを考えてまいりました。
 先ほど申し上げました現在の社会情勢に鑑みまして,この問題につきましては,正に早急に検討すべき課題であると考えております。
 そこで,今回,父母の離婚に伴う子の養育の在り方を中心といたしまして,離婚制度,未成年養子制度や財産分与制度といった,離婚に関連する幅広い課題について,私がこれまでも申し上げてまいりましたチルドレン・ファーストの観点で,法改正に向けた具体的な検討を行っていただくために,この度,法制審議会に諮問することといたしました。

[引用おわり]

 このように上川法相は、女性の貧困などで深刻度が高まっていると指摘される、養育費の不払い解消などで、子の最善の利益を図るため「チルドレン・ファースト」での改正について、法制審議会で議論してほしいとの意向をにじませました。

●「不貞」「別居」など離婚5条件初めて改正か

 大臣は言及しませんでしたが、そもそも離婚の条件を定めた民法770条も見直しの対象になると思われます。

 昭和23年改正法にもとづく民法770条は以下の通り。

[e-govから引用はじめ]

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

[e-govから引用おわり]

 この5条件についてはかねてから議論があります。1987年の最高裁判決は、第1号「不貞」は、不貞をした側から離婚訴訟する「踏んだり蹴ったり」もあり得る、としました。1947年の第1回国会では「強度の精神病」について、そもそも設ける必要があるのかとの質疑に政府は、欧州の法律を参考にして法案をつくったとし「婚姻を継続し難い重大な事由」の例示に過ぎないとの答弁をしています。その後の裁判でも、「強度の精神病」について「重大な事由」と一々分けていません。

●子のある夫婦の離婚にややブレーキをかけたい意向か

 そもそも、民法752条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定めており、同居と財布を一つにすることは、「義務」とされています。この規定により、「離婚を前提にした別居」の長期化による離婚が多く行われています。このことを知る人は現在意外と少ない。

 上川大臣は、社会情勢の変化によって問題となっている養育費不払いや片親との面会などを強調しましたので、子のある夫婦の離婚にブレーキをかける方向性の考え方がにじんでいます。


[写真]法務省、おととし2019年、筆者撮影。

●民法家族編は「配偶者相続」「夫婦別姓」などの流動的議題も

 法制審のプロセスの途中で、民法相続編の改正法で「配偶者居住権」が施行状況が入ってきます。最高裁は戸籍法違憲訴訟での選択的夫婦別氏について大法廷で判断を示す予定。さらに数は少ないですが、ハーグ条約国内実施法にもとづく国際的な子の奪取など片親による子の連れ去りの問題。民事執行法などで養育費の不払いの執行官による強制的な徴収のほか、野党が養育費の取り決めを役所に届ける法案を昨年末出しました。

 多岐にわたる課題は、民法家族編のみならず、民事執行法、戸籍法、民法総続編などにも影響すると思われ、大玉の民法改正論議となります。

●勝負をかけた上川さん

 上川さん(静岡1区)は岸田文雄・岸田派会長の最側近ですが、岸田さんの首相への道が極めて険しくなったこともあり、ことしの次期衆院選後も存在感をアピールしたい思惑も見え隠れします。法務大臣としては異例のことですが、衆議院議員としてのツイッター個人アカウントでも発信し、さっそくリプライのかっこうで、100を超える意見が寄せられています。

https://twitter.com/Kamikawa_Yoko/status/1350055823536386049?s=20

●議論は2年以上かかる見通し

 法制審議会の答申は、早くても、令和5年2023年以降になるとみられ、法案の国会提出は2024年以降、全面的な改正法施行は2026年以降になると考えられます。

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