宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【最高裁判決】15年前からの新業態「家賃保証会社」の追い出し契約は消費者契約法・民法1条2項「信義則」に違反する

2022年12月13日 17時24分32秒 | 既に提出された【法案】
[写真]朝焼けのなか、最高裁判所事務総局に出勤する職員、きょねん2021年、宮崎信行撮影。

 15年ほど前から浸透した新業種「家賃保証会社」が、賃借人と結んだ契約の「追い出し条項」について、最高裁判所が民法第1条「信義則」をうけた消費者契約法第10条に違反するので「ひな形を破棄せよ」とした判決を出しました。家賃保証会社は十数年前から一気にシェアを広げた新業態で、規制する法律がほぼないので、今後、立法事実があるとする動きが浮上するかもしれません。

 最高裁判所第1小法廷の山口厚さんら5人の裁判官は「原判決主文第1項を棄却する」などとした「令和4年12月12日 消費者契約法第12条に基づく差止等請求事件の判決」を出しました。

 原告は、集団訴訟ではなくて、衆参ねじれ下で野党・民主党が主導した「平成25年新法」による「適格消費者団体」1法人。家賃保証会社が賃借人とかわした契約が「未払いが賃料3か月なら無催告で原判決を解除でき、2か月で電気・ガス・水道・郵便物の状況から建物を相当期間利用しておらず再び占有しようと看取できる事情があるときは、明け渡しがあったものとみなす」との契約。いわば2か月賃料未払いでの夜逃げ追い出し条項の是非を問われたものです。

(今回原告となった「適格消費者団体」を新設した平成25年新法の立法プロセスの当ニュースサイト内記事の紹介→民主党・公明党・自民党の3党修正で法案が可決 郡和子さん提出 集団的消費者被害回復法案 - ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記)。

 第一小法廷は、この契約では過去の判例「昭和43年11月21日判例」の法理が適用されるけれども、2か月追い出し条項については、民法第1条第2項に基づいた消費者契約法第10条に違反したと断定。家賃保証会社に対して「契約書ひな形が印刷された契約書用紙を廃棄せよ」と命令しました。

 家賃保証会社と県信用保証協会や保証会社は全く別。

 賃貸住宅を借りる際は、賃料に限定した連帯保証人が必要だとされましたが、リーマンショック前後から「家賃保証会社」が一気にビジネスを広げたことから、東京23区など全国の8割程度で不要となりました。家賃保証会社が十数年で一気に拡大したことから、賃貸管理会社が賃貸人に対して「保証会社を使う前提でないと新しい管理を引き受けない」と働きかけることが多く、賃貸人のほとんども強い意思はなく保証会社を立てる契約に移行しました。一方、保証会社は保証料全額を賃借人と契約する格好になったことから、東京23区では「2年に1回の更新料家賃1か月分を今後はゼロとする契約」が広がりつつあります。

 賃貸保証会社は建設・金融関係から移行してきた小規模スタートアップが多く、東京・大阪で慣行が違うとの指摘もあります。またごく一部で倒産した事業者もあり、財務体質の透明化や慣行の統一を求める意見が、管理会社・賃貸人もあることから、信義則や消費者契約法だけでなく、法令による定義・規制を求める機運も今後出てくるかもしれません。

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【防衛増税】岸田文雄首相が同郷の宮澤洋一・自民党税調会長「総理指示に従う」鈴木俊一財務大臣「4分の1は税制でお願いする」

2022年12月13日 16時50分26秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]大柄な男性に取り囲まれた岸田文雄首相、ことし2022年7月、都内で、宮崎信行撮影。

 「防衛増税」という悪手な4文字が、意図せずして、政治を席巻しました。

 鈴木俊一財務大臣は先週金曜日の記者会見で次のように語りました。

 「昨日の政府・与党政策懇談会におきまして、総理から、防衛力強化の財源確保に向けた方針が示されました。具体的に申し上げますと、抜本的に強化された防衛力は、将来にわたり、維持・強化していく必要があり、これを安定的に支えるためのしっかりした財源措置が不可欠であって、令和9年度以降、防衛力を安定的に維持するためには、毎年度、約4兆円の追加財源の確保が必要となります。その約4分の3については、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金の創設など様々な工夫で補っていきます。その上で、残り約4分の1について、税制でご協力をお願いしなければならないと考えています」と語りました。

 総理指示に従って、自民党税制調査会はインナー会合を開き、たばこ税と法人税の増税を検討することで一致。きょうから数日、党本部で全議員を対象にした総会を開きます。

 決定した自民党税制大綱は、一字一句違わずに、政府税制大綱として当初予算案と同日に決定。財務省が所得税法など改正案を執筆し、来月の通常国会冒頭に提出されます。衆参とも自民単独過半数のためそのまま決定する見通し。

 安倍晋三政権から、自民党税調会長は宮澤洋一参議院議員が務めており、岸田文雄首相と広島県の宏池会の関係。鈴木財務大臣の父の鈴木善幸内閣の宮澤喜一官房長官の政治的後継者になります。可部哲生前国税庁長官は首相の実弟になります。野田佳彦内閣以来10年ぶりに「Z会(ゼットかい)」「財務省」に乗っ取られた政権といえそうです。


[写真]宮澤洋一・自民党税調会長、きょねん2021年9月、宮崎信行撮影。

[写真]鈴木俊一財務大臣、きょねん2021年9月、宮崎信行撮影。

 今週の展開としては、たばこ税・法人税のうち、法人税率の付加税の引き上げが検討され、ある程度のところで軽減したところで、たばこ税の引き上げを決定。一部の議論を先送りすると考えられます。現在は「復興特別所得税の流用」を議論していますが、議題を取り下げて世論の収束をみる展開もありそうです。

 フランス財政学は「ノン・アフェクタシオン」を主張し、歳入と歳出を紐づけるべきではないことを真理としていますが、財務省は「ペイ・アズ・ユー・ゴー」という世界標準ではない理論をこねくり回したうえで国債を歳入とした特別会計から一般会計への繰り入れていることを表面化させない「財源ロンダリング」をしており、政策変更と関係ない、単なる増税を打ち上げ、矛を収めますが、やはり増税は増税という結論になるでしょう。

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