【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

100年前の関東大震災後の朝鮮人虐殺、官房長官「政府文書で確認できない」に立憲「歴史を消す」「SNSによる流言飛語による特定のグループ集団への危害を封じる策などを講じる」

2023年09月01日 13時08分14秒 | マスコミ批評
[写真]東京湾口から上流に向かって見た荒川。ここから数キロ奥側の荒川両岸(墨田、葛飾両区)、首都高川口線葛飾ハープ橋近くでは、震災発生わずか14時間後には、消防、自警団員に殺害された朝鮮人の遺体が「薪の山のように」土手に積まれていたとされ、事実だとされる。なお現在「隅田川」と呼ばれる河川は供用されていなかった。

 ちょうど100年前の関東大震災で、正力松太郎ら警視庁幹部も含めた流言飛語により、自警団員らが、朝鮮人・香川県民・日本人らを集団リンチで殺害した「朝鮮人虐殺」について、前々日、前日に松野博一官房長官が記者会見で「政府内で事実関係を確認できる記録が見当たらない」と語り、立憲民主党が批判しました。

 内閣府防災のホームページに「朝鮮人が武装蜂起し、あるいは放火するといった流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部による殺傷事件が生じた 」と記述していることを前日問われた官房長官は「有識者が執筆したものであり、政府の見解を示したものではない」と応じ、臭い物に蓋をする自民党政権の本性をさらしました。

 立憲の泉健太代表はきょう(2023年9月1日)の記者会見で「内閣府防災などもかつての教訓を記録するということで文書で様々調べたものがインターネットで見られる」「当時も情報をまとめてそれは残っているもの、あるいは東京の公文書館など様々な資料も残っている」とし「歴史を消すようなことがあってはいけない」と官房長官の姿勢を批判しました。

 同党は政調会長名で「強力な司令塔「危機管理・防災局」の創設、高齢者・障がい者・外国人など誰も排除されることないインクルーシブ、多文化共生に立脚した災害対策に資するよう行政体制を総点検するよう政府に強く求める。タワーマンション等における災害避難、関東大震災における朝鮮人などの虐殺から目を背けず、SNSによる流言飛語による特定のグループ集団への危害を封じる策などを講じておくことも求められる」との談話を発表しました。

 朝鮮人虐殺をめぐっては、衆議院第二議員会館の下にある「永田町交番」でも、9月3日午後2時に、自警団員から質問された通行人2人について、言語が不明瞭だとの理由で刺殺したものの、2人は日本人だったことが分かっています。

 当時の日本は、マスメディアが発展し、日露戦争勝利による好景気と英国との対等な同盟による大正デモクラシーが佳境を迎えていました。大正天皇が病気で暗愚だという現状は「菊のタブー」でなく国民の誰もが知っていたとされ、摂政・皇太子(のちの昭和天皇)裕仁殿下は、結婚を延期して、さっそうと馬に乗り被災地を視察。その姿を見て「助かりそうだ」と初めて感じた被災者も多かったとされます。

 が、在京新聞社の半数以上が本社が倒壊した状態で発行していたため取材が甘く警視庁のディスインフォメーションに乗っかって記事を書いたほか、新聞発行のもたつきから生写真が直接売買され、撮影日・場所が不明で流通して話に尾ひれがつくなどの大混乱で、政府・軍の多くも信じたとされます。外債発行を企図した政府が情報をまとめなかったとの観測もあります。

 関東大震災後には、警視庁公安部長から内務省警保局長に出世した正力松太郎が警備を指揮したにもかかわらず、補正予算案を審議する臨時国会の開院式に向かう摂政(昭和天皇)が衆議院議員の四男に銃撃される「虎ノ門事件」が起き、正力は下野。補正予算案の審議も遅れたことで、二十年余りにわたる転落のきっかけとなりました。

 香川県民が虐殺され犯人が起訴された福田村事件が映画化されるなどしています。東日本大震災・福島原発事故でも科学的根拠のない流言飛語が、安倍晋三氏(故人)らによって拡散された「民主党大虐殺」も起きており、同じことが繰り返される懸念も多くの識者が指摘しています。

 以上です。