【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【書評】尾中香尚里元毎日新聞政治部記者の「野党第1党」を現職は全員買うべし、「です、ます調」で分かりやすく「保守2大政党に抗した30年」をタイムマシンで自由自在に行き来

2023年09月11日 12時55分34秒 | マスコミ批評
 「野党第1党 保守2大政党に抗した30年」を尾中香尚里さんが、2023年9月16日付で出版。書評を書きます。

 結論は、立憲民主党の現職議員・秘書は全員一冊買うべし。

 現代書館、2000円(税抜き)。

 「野党記者クラブ」は半世紀以上「衆議院第5控室」に置かれていますが、毎日新聞記者だった尾中さんは日本経済新聞記者の宮崎信行のおおむね9年ないし4年ほど先輩にあたり、1998年頃は現場が重なりました。

 独立後もお互いの懐事情を知り合う仲です。

●237ページだが「ですます調」で分かりやすい記述

 尾中さんの今回の本は、政治部記者出身者ではひょっとすると初めてかもしれない「です、ます調」で書かれています。237ページの大長編なのに読みやすい。元政治部記者だから知るエピソードは極限までそぎ落として書いて、読者層を広げようとしていると思います。

 今夏、NHK政治部の男性ベテラン、女性中堅の元記者が小沢一郎さんと安倍晋三さんの本を出していますが、こちらはNHK放送原稿と違って「である調」を使っています。

●平成は「政権交代ある政治」が実現したがこそ保守にこだわった

 尾中さんは、平成の政治について、政権交代ある政治が実現したと評価。しかし、この過程で保守二大政党化したとしました。いずれも全否定する態度はとっていません。私が気付いたファクトの間違いは皆無です。

 1996年10月の最初の小選挙区第41回衆院選を、尾中さんは当時は野党第2党の民主党(鳩山由紀夫・菅直人両代表)、宮崎は必ず野党第1党の新進党(小沢一郎党首・岡田克也副幹事長)から見ます。しかし、2003年の民主党(菅直人代表・岡田幹事長)と自由党(小沢一郎党首)からの20年は一貫して、立憲民主党側から見ています。

 いうまでもなく、第五控室経験者では、尾中さんと私の2人だけです。だから尾中さんが第一人者なのは当然です。

●黄金の3年間だから乗れた「タイムマシン」

 国政は去年から黄金の3年間という歴史としての停滞期に入りました。このため、尾中さんは「過去、現在、未来を自由に行き来するタイムマシンに乗ったドラえもんとのび太」になることに成功できたのだと思います。この本は今後も、国政選挙が終わるごとに、改訂版が出続ける定番になってほしいと思います。

●リベラルは新しい社会像を示せという現実的な未来

 尾中さんはこの本の中で「しかし、私は現状を悲観していません」「昭和の政治の次の、平成の政治は政権交代ある政治を容易にした」としています。主に、立憲民主党支持者である読者に向けて書いているように、私には感じられました。

●「枝野幸男の真価」も定番

 2018年3月30日付発行の「枝野幸男の真価」(毎日新聞取材班)毎日新聞出版、定価1000円(税抜き)も尾中さんの書籍だと理解しています。このテーマでは他の追随をまったく許さない独壇場の抜きんでた歴史資料です。



 以上です。

岸田文雄首相は2023年9月13日の内閣改造で、まず追加経済対策指示する異例の政治日程、臨時国会召集は補選前後にずれこみか、岸田官邸無能ぶり

2023年09月11日 05時06分00秒 | 第212回秋の臨時国会 2023年秋
[写真]こどもの6人に1人が経済的理由で3食未満の日本のトー横では、足元が軽装な若者が目立つ、今夏、宮崎信行撮影。

 岸田首相はきのうの海外での記者会見で、令和5年2023年9月13日(水)朝に臨時閣議を開き、辞表をとりまとめ、内閣改造。同時に追加経済対策のとりまとめを指示することを初めて言及しました。

 第2次岸田第2次改造内閣となります。

 首相は「必要な予算にしっかりと裏打ちされた思い切った内容の経済対策」と語りましたので、手つかずの当初予算の予備費5兆円に加えて、国会審議が必要な補正予算案を編成するとみられます。この場合は、臨時国会は来月下旬、10月22日の補選に前後した時期になる可能性が高そうです。年内の改憲発議はないでしょう。

 私が記憶する限り、内閣改造当夜に追加経済対策のとりまとめを指示した例は思いつきません。

 過去例をひもとくと、2016年8月3日の内閣改造では、安倍晋三首相は「働き方改革」のスローガンを初めて出して、「きのう決定した28兆円の追加経済対策を決定しました」として、今後「未来への投資を大胆に行う補正予算を秋の臨時国会に提出いたします」と政治日程を示しました。参院選→経済対策決定→内閣改造→補正予算と安倍官邸が内閣に対して切れ目なく主導権を握り続ける官邸官僚の意思を感じさせます。

 これに比して、岸田首相は第2次岸田第2次改造内閣で、追加経済対策をとりまとめると明言して、財源を手当てするというニュアンスを示しています。各府省庁各局課が新大臣レクチャーをした後に、いわゆる身体検査などで国会外のマスコミ報道で支持率が急落して更迭された場合は、各府省庁各局課は大臣レクチャーからやり直しになり、やる気を失うこともありそうです。

 ことし最大の政策パッケージである小倉将信・こども家庭庁初代大臣が6月にまとめた「こども子育て戦略方針」も目新しいメニューは全くありません。

 一流大学卒の背広を着た人は、人生の途中で作業着に着替えて仕事をすることはできませんから、引き続き、頭がよくコミュ力に優れた人が、特区・政策減税・補助金をひっぱる財政・経済が続きそうです。

 新型コロナウイルス感染症の行動制限明けの日本経済は、デフレから脱却したものの、実質賃金は16カ月連続・2・5%減。東京で飲食店の閉店は見かけませんが、チェーンでも「人手不足」を理由に24時間営業を数カ月断念して再度学生らしき日本人男性の深夜ワンオペで24時間を再開する景色を見るようになりました。

 予算膨張からの軟着陸のために、政府支出のある程度の維持と個人消費につながる給付金の軟着陸への目配りが必要ですが、政治家・官僚は経営者の経験がなく法人税・消費税を計算し銀行から融資を引っ張った経験がまずありません。国民の給付金よりも減税・保険料率下げや、シンプルで公平な税制・保険料制度を求める声と自民党永田町・霞が関の声は話が一からかみ合わず、暗闇に鉄砲を撃つ感覚でやる気を失いつつ、、第50回衆院選まで漂流することになりそうです。

 以上です。