きょうとあすは衆院本会議で福田首相の所信表明演説に対する代表質問。「参院選(7月29日)から2ヶ月経ってやっと「国会論戦」スタートです!《写真は衆院本会議で質問する長妻昭さん(民主党website)》
■国会傍聴記 2007年10月3日衆院本会議 福田総理大臣の所信表明に対する各党代表質問 鳩山由紀夫(民主党)、伊吹文明(自民党)、長妻昭(民主党)■
【長妻昭さん、怒濤の質問攻め】
今日は長妻昭さん(東京7区比例復活)に尽きます。まず、3番手だった長妻さんから書きます。長妻さんと言えば参院選で「ミスター年金」として応援弁士にひっぱりだこ。選挙後はネクスト年金担当大臣を務めています。
とにかく、長妻質問は具体策ばかりの怒濤の質問攻め。およそ50項目!私が聞いた国会質問の中で最高の出来だと思います。
まず、長妻さんは前の内閣から引き継ぐ政策と引き継がない政策をきっちり仕分けることを福田さんに求めました。例えば「戦後レジームからの脱却」という安倍さんの言葉を引き継ぐのかどうか。
次に基礎年金番号に未統合の5000万件(「宙に浮いた(消えた)年金記録」)の名寄せ作業を本当に完了できるのか? 何年何月までか? これに対して福田首相は答弁で「平成20年(2008年)3月までに名寄せを完了する」と明言しました。
さらに「市町村などに残っている手書きの紙記録とコンピューターと完全に照合すべきだ」との長妻さんの主張に対して、福田さんは「社会保険庁が調査中だ」と答えるにとどまりました。
ここで長妻昭さんが指摘した自民党ウェブサイトにある年金 ご安心ください。は驚くべき内容です。ぜひ見てください。いずれ削除される可能性がありますので、次のエントリー【長妻質問の参考) 自民党の「年金 ご安心ください。」はデタラメ!」】に証拠として保存しておきます。
長妻さんは腐敗の5つの要因を頭文字でまとめた「HATKZ」(ハットカズ)を紹介しました。
「(H)ひも付き補助金」
「(A)天下り」
「(T)特別会計」
「(K)官製談合」
「(Z)随意契約」の5つです。
社会保険庁からの天下りなど多くの具体的な腐敗事例を挙げて、福田さんに答弁を求めました。福田さんはかなり細かく回答しました。
【「福田マニフェスト」対「小沢マニフェスト」 鳩山民主党幹事長】
トップバッターは鳩山由紀夫さん(民主党幹事長、北海道9区)でした。鳩山質問は、「福田マニフェスト」対「小沢マニフェスト」という構図で徹底していました。
冒頭、「参院選後の2ヶ月余りの政治空白そのものが、大政治スキャンダルだ」として、国民の信任を受けていない福田内閣が最初にすべきことは「まず解散することだ」と総理に決断を迫りました。当然、あいまいな答弁が返ってきました。
そのうえで、「改革と成長はクルマの両輪」との福田さんの所信表明は小泉成長路線の継続だとし、所信表明のしめくくりに述べた「自立と共生の社会」の実現と相容れない考え方だとバッサリ断定しました。
そして参院選で勝利し、参院第一党となった民主党は「小沢マニフェストを確実に実行(法案化)していくだけだ」と強調したうえで、「一刻も早く、福田マニフェストを示してください」と迫りました。
これはホントにうまいですよねえ。だって、小沢マニフェストは1年かけて練りに練ってきた上に、参院選で国民の信託(期待?)を受けたんですから。小沢マニフェストをかざしながら、「福田マニフェストを出せ!」と迫る――土俵に例えれば、民主党が横綱、自民党が大関という相撲をとっているわけです。
この後の鳩山質問はほぼすべての項目で「民主党はこういう案(小沢マニフェスト)だが、自民党(政府)はどうか?」という構図で質問していました。怒濤の質問攻めです。
年金に関しては「政府与党の“100年年金安心プラン”の安心は2、3年しか持たなかった」と痛烈に批判し、「与野党の協議を言う前にしっかりとした与党案を示せ!!」。
農業に関しては「私は地方を回るたびに(略)農林業は地域社会を支える柱だと感じる」として、経済効率のため合理化(大規模集約化)を図る自民党の路線と対峙しました。
「消費税は引き上げるのか?」との質問に、福田総理は「消費税に関しては、歳入歳出一体改革の考え方の下、(略)、消費税を含む税体系の抜本的改革を検討する」と強調しましたが、消費税引き上げに関してすぐに具体化する雰囲気ではない答弁でした。
海上自衛隊の給油活動継続などテロとの戦いをめぐっては、鳩山さん自身が「私も2回アフガニスタンに行ったが、首都カブールですら、SP(警護官)なしでは歩けない」「以前はクルマでも日本の国旗を立てていれば安心だったのに」と治安悪化の現状を経験談を交えて披露。
「テロは絶対に許さない」との前提の下、「テロの根源は、貧困と差別、社会の疲弊によるものだ」として、日本は別の方法で貢献していくべきだとの認識を示唆しました。
鳩山さんに対する福田さんの答弁は「はぐらかしの帝王」という意味でも小泉路線を継承しており、特筆すべきことはありません。
気になるのは福田さんが「自立と共生」という言葉を封印するかどうかです。
鳩山さんは「自立と共生はもともと民主党の政策の基本方針だ」として、福田首相の所信表明演説は「理念にほど遠いものだ」としました。たたみかけるように鳩山さんは、「予算を組みかえてください。それができなければ、『自立と共生』は使わないでください」と言いました。もしも、今(10月)、当初予算の組みかえをしたら、霞が関の役人が倒れます。無理です。それを分かっていて、鳩山さんは言ったのですから、“民主党のパクリである自立と共生という言葉は二度と使うな!”という強烈なパンチです。
【グランドキャニオンには柵がない 伊吹文明には策がない】
自民党幹事長の伊吹文明さん(京都1区)の代表質問。総理を支える立場ですから、質問の形で総理を助けたり、民主党を攻撃したりしました。それは当然のことです。一つだけ、極めて不愉快に感じたことがあったので指摘します。
伊吹さんは15年前、講談社から出てベストセラーになった『日本改造計画』(小沢一郎著)を引用しながら、民主党を攻撃しました。それはいいのですが、はしがきに「米国のグランドキャニオン(大峡谷)には柵がない。米国は自助努力の国だからだ」と書いてあることにくどくどと触れました。
私はグランドキャニオンに行ったことはないのですが、行った人によると、柵があるそうです。ではなぜ『日本改造計画』には「柵がない」と書いてあるのか? 大蔵省主計局(財務省主計局)の官僚によると、『日本改造計画』のテクストを執筆した官僚による勉強会のメンバーが「読む人が読めば、この本は変だなと思う」ことを意図して、はしがきに事実誤認を書いたそうです。
これは財務省主計局などの幹部官僚では有名な話ですから、大蔵官僚出身の伊吹さんは当然、知っていたはずです。ただ、このエピソードは随分古い話で、このことに触れたコラムは読売新聞でも、毎日新聞でも読んだ記憶があります。
こういうことを蒸し返す伊吹さんのセンスはいかがなものか。野党批判をするのなら、政権与党しか取れない情報で攻撃した方がいいのではないでしょうか?
グランドキャニオンには柵がないが、伊吹文明には策がない、と私は感じがしました。そもそも、質問の前段で『日本改造計画』での湾岸戦争の記述を引き合いに出して、「小沢一郎の変質」を批判したことのに、それと矛盾しています。もう一ひねり欲しかったです。
[参考エントリー]
■国会傍聴記 2007年10月1日衆院本会議 福田首相の所信表明演説■
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