みんなの党政調会長の浅尾慶一郎さん、2012年5月13日放送のNHK日曜討論画面から。
2012年5月13日のNHK日曜討論は「社会保障と税の一体改革」について、各党税制調査会長らが出演しました。藤井裕久・民主党税調会長、野田毅・自民党税調会長、斉藤鉄夫・公明党税調会長ら結党から解党までの3年間、新進党に在籍した民自公税調会長トリオらが登場。藤井さんが「前回の消費税引き上げ(を決めたの)は、勘違いされているが、橋本内閣ではなく、社民党の村山内閣だ」と指摘しました。
この中で、浅尾慶一郎・みんなの党政調会長が歳入庁構想について、看過できない発言がありました。初めに私の考えを述べれば、国税庁と日本年金機構を統合して歳入庁をつくるべきですが、内閣府に置くのは反対です。厚生年金に関しては、零細企業主の負担を軽減し、求人をためらうことがないように、労使折半のあり方を見直したり、加入するかしないかのパート労働者の自由をつくるのがいいでしょう。なお歳入庁の創設は、2009年第45回衆院選鳩山マニフェストには書いてありましたが、2010年第22回参院選菅マニフェストには書いていないと思います。
浅尾・政調会長は番組最初の発言で、「社会保障と税の一体改革と言っても単なる増税案だと思う」「まず簡単にできるのは民主党自身が選挙の際にマニフェストで言っていた徴収面の改革」「社会保険料と税の徴収は今は別々になっていますけれど、歳入庁をつくるということは、民主党、マニフェストのときに言っていました。で、私たち(みんなの党は)歳入庁をつくると、現在(社会)保険料の徴収漏れで10兆円の徴収漏れがあると(試算をしている)。そもそもマニフェストで言っていたのだから自分のところで試算をすべきなんですね。我々がした試算にいろいろとケチをつけるんじゃなくて、あくまでも試算をしないというのは英語で言うとチキンというか、臆病者というか、私は逃げていると思いますかね」。
浅尾さんは英語がうまいのですが、NHKで「チキン」なんて言っちゃダメですよ。あの80年代アメリカを代表する映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」3部作があまり地上波テレビで放送されないのも、それが理由なんですよ。私もあの映画で初めてその言葉を覚えましたが、どんなに英語が流ちょうでも、テレビで「チキン」というようでは、TOEICもTOEFLも零点です。
第180通常国会でのこの議論の経緯を如実に表しているのが、次の動画です。2月22日の衆院予算委員会の議事録を探したらまだ上がっていないので、衆議院インターネット審議中継のビデオライブラリを撮影して、次の動画をつくってみました。ご覧下さい。
チキンはどっちだ!
野党議員の質問が「冒頭、大臣にお願いがあります」から始まったのは、記憶がありません。
浅尾さん、ずいぶんオドオドしていますが、どうしたんですか? なんかあったんですか?(笑)
で、何があったか。
浅尾さんは、2月1日の衆院予算委員会(4次補正の審議)で「きょうはちょっと、これはかなり数字が入った話ですから、衆議院の調査室に詳細なものもつくってもらったものがあります、国民年金の未納率も入れて。結果としては、数字としては、十二兆というのは数字は変わりません。変わりませんので、ぜひ、検討するというんだったら、政府の側でも未加入の人を入れたらどうなるかという試算をやってみたらいいじゃないですか」と語っています。
2月10日の同委(当初予算の審議)でも「前回も申し上げましたが、私の試算は衆議院の調査室にやっていただいております。ですので、政府は政府として、こっちは立法府として、立法府の調査室にお願いした数字で十二兆ぐらいの数字が出てきておりますから、そういうふうにおっしゃるのであれば、政府が前提を置いて数字を出していただきたいと思います。まず、そのことを伺いたいと思います」。
その後、上の動画のように2月22日の予算委員会で「ご説明したい」ということになりました。
3月7日の衆院内閣委員会の一般質疑では自民党の竹本直一さんからも質問があり、岡田さんは「今、浅尾委員もおられますが、十兆円というのは、私はかなり過大ではないかというふうには思っております」と答弁。その後、質問に立った浅尾さんは「冒頭、先ほど委員会での質疑の中で岡田副総理が私の名前を出していただいたので、前々からお願いをさせていただいている、お願いをする筋の話でもないんですが、こちらが出した試算について説明に伺うということになっておりまして、残念ながら、その日は、どうも新聞報道によると、自民党の方々との増税案の協議ということで、中止になってしまったということであります。増税をする前に、民主党自身が歳入庁をつくるということも言っておりましたし、数字が違うというなら違うで結構です、しかし、取り漏れがあることは事実ですから、その試算。いわゆる取り漏れがあるというのは不良債権になっているところだと思いますので、その不良債権隠しをするのではなくて、政府自身としても試算をしていただきたいと思いますし、ぜひその時間をとっていただきたいということを申し上げたいと思いますが、何かあれば」と質問。岡田さんは「浅尾委員にお時間をいただきながら、ちょっと都合でお会いできなくなりましたので、改めて時間をというふうに思っております。事務方から事前に説明を受けたんですが、私なりに納得できないところがありまして、再度検討を事務方にお願いしておりますので、私なりに納得をした上でお会いした方がいいかなというふうに思っています」と答弁しています。
そして、きょう5月13日のNHK日曜討論では「10兆円ぐらい」と数字を出した上で、「試算をしない政府はチキン」発言。みんなの党はいい加減にしてほしい。自民党、公明党のような責任野党がいる一方、もっともらしいことを言って、経済学に疎い方々を騙すペテン師政党に私には思えます。
さて、衆議院規則第56条は、衆議院調査局長の予備的調査などの国政調査に関して定めています。調査局長の下には「予算調査室」など、常任・特別委員会ごとに調査室が置かれています。スタッフは、ほとんどが衆議院採用の職員ですが、関連する官庁の官僚が1人ほど出向している調査室もあります。ところが、参議院規則にはこの「調査局の予備的調査」の定めはありません。そもそも参議院には「調査局」という組織がありません。委員会ごとの調査室は衆院同様にあります。この辺が参院では2期11年務めながらも、衆議院では1期生である浅尾さんがスタッフの使い方の勘違いにつながっている可能性があると思います。
みんなの党が第180通常国会で使う数字はどれもこれもいい加減。大変な無責任野党、ペテン師です。浅尾政調会長は衆院本会議でも席を離れる時間が多いように見受けられます。新自由主義を否定する者ではありませんが、楽して儲けようというみんなの党の心根は極めて残念です。
浅尾さんには、岡田さんが最初に代表選挙に出馬したときに民社協会を代表して推薦人になったころの澄んだ瞳を取り戻して欲しい。当分、民自公3党路線で行くしかないでしょう。
[国会議事録から引用はじめ]
平成二十四年二月一日(水曜日) 平成二十三年度一般会計補正予算(第4号)
平成二十三年度特別会計補正予算(特第4号)
(前略)
○浅尾委員 実は、この歳入庁というものの最大のメリットは、今パネルに出しましたけれども、国税庁というのは全国に一体どれぐらいの法人があるかという情報を全部持っているんです。なぜ持っているかというと、法務局に登記した情報が全て国税庁に行っているので、その情報を持っている。
結果として、毎年、これは平成二十一年の数字ですけれども、二百七十三万一千七百六十八法人が赤字であっても申告している。赤字であっても申告しているということは、そこで働いている人の給与の源泉徴収についてはちゃんと納められていますよということなんです。ですから、給与についての所得税はちゃんと入ってきている。
一方で、法人は全て厚生年金に加入をする義務があるんですが、昔の社会保険庁、今の日本年金機構はまだこの法人データというのは持っていません。持っていない結果、聞くと、大体どれぐらいの法人が加入しているんですかと言うと、答えはわからない。ただ、わかるのは、百七十五万事業所が加入していると。
この事業所というのは、支店や工場も一事業所でカウントしますから、ですから、百七十五万事業所ということは、多分、八十万法人ぐらいしか厚生年金に加入していない。歳入庁をつくれば、二百七十三万一千七百六十八法人とこの八十万ぐらいの推計の法人数とが一発でわかるじゃないですか。しかも、それは私が言っているわけじゃなくて、民主党自身がマニフェストで約束したことだから、それはさっさと、税と社会保障の一体改革というんだったら、社会保険の保険料徴収の部分の改革の一丁目一番地だと思いますよ。
なおかつ、どれぐらいの徴収漏れがあるかというのを推計してみました。推計してみると、民間の給与所得者というのが五千三百八十八万四千人、厚生年金の被保険者というのは三千四百二十四万八千人ということなんですが、これは、いろいろな計算式を置いていくと、年金の保険料だけで六兆六百七十五億円。健康保険も一緒ですから、大体十二兆円ぐらい毎年毎年の徴収漏れがあるということなので、まず、歳入庁をつくれば未加入の法人というのはすぐなくなると思いますが、すぐなくならないというんだったら、なぜなくならないのか、それをお答えいただきたいと思います。そのことについて、これは一体改革相に聞いた方がいいかもしれないですね。
○岡田国務大臣 まず、歳入庁につきましては、我々は、社会保障・税一体改革の素案の中で、「歳入庁の創設による、税と社会保険料を徴収する体制の構築について直ちに本格的な作業に着手する。」というふうに整理をしております。したがって、歳入庁に関して検討を早急に開始したいというふうに考えているところであります。
浅尾さんの御指摘は、渡辺議員が本会議でも述べられたところですが、非常におもしろい話だと思いました。ただ、逆に言いますと、その差額はお示しされた資料によりますと六兆円ぐらいということになるわけですが、六兆円がすぐ入ってくるのならいいんですが、現実にどれだけ中小企業でそれにたえ得る企業があるのだろうか、そういうこともあわせ考えていかないと、机上の計算だけになってしまうのかな、そういうふうに受けとめた次第です。
○浅尾委員 今の岡田大臣の答弁は一つ問題があると私は思います。財政的にたえられるかどうかという話と、じゃ、法律違反を大臣として放置していいかどうかという話は、別の次元の話なんじゃないかなと。
つまりは、加入する義務もありますし、今でも、日本年金機構は職権で加入を命じられるんですよ。加入を命じられるけれども、基本的にはやっていないことが相当多いので、それは、もしそうだとするならば、中小企業については保険料を減免するというようなことを政策的にやらないと、法治国家としてはおかしいということになりますが、その点はどう思われますか。
○岡田国務大臣 今のお話で私がどこまで理解しているかですが、給与所得者が五千三百八十八万人いる、これは、厚生年金の対象になる正規の社員がこれだけいるということなんでしょうか。
○浅尾委員 実は、会社が税務署に申告するときに、五百万円以上については、いわゆる個人の住民票のデータも含めて税務署に出します。五百万円以下の人については何人という人数を出しますが、それは月額報酬八万八千円以上の人ということになっています。そして、厚生年金の対象というのは九万八千円というのが標準報酬月額なので、じゃ、一万円の間に二千何百万人もいるかというような話もあります。
もしそういうふうにおっしゃるんであれば、きょうはちょっと、これはかなり数字が入った話ですから、衆議院の調査室に詳細なものもつくってもらったものがあります、国民年金の未納率も入れて。結果としては、数字としては、十二兆というのは数字は変わりません。変わりませんので、ぜひ、検討するというんだったら、政府の側でも未加入の人を入れたらどうなるかという試算をやってみたらいいじゃないですか。(後略)
平成二十四年二月十日(金曜日)
(前略)
○浅尾委員 みんなの党の浅尾慶一郎です。
きょうは、きょうもと言った方がいいかもしれません、社会保障の問題について中心的にお話をさせていただきたいというふうに思いますが、たまたまきょう発売の月刊誌の文芸春秋に、私が書きました、年金制度改革あるいは社会保障改革によって、消費税増税と匹敵する、あるいはそれ以上の財源が出てくるという論文をお載せいたしました。ぜひ総理にも、年金とか医療、特に保険の部分というのは非常に複雑になっておりますので、大変お忙しいと思いますが、今そのコピーをお配りさせていただいておりますので、お時間のあるときに、そちらの方もお読みいただけると大変ありがたいというふうに思います。
そのことを申し上げさせていただきまして、まずは、歳入庁をつくったら、これはいろいろな試算が出てくると思いますが、あらあら十二、三兆のお金ができますよということをこの間、提言させていただきました。それに対して、岡田副総理の答弁、あるいはその後のテレビでのコメントを見ておりますと、答弁ではこういうふうに言っておられます、「現実にどれだけ中小企業でそれにたえ得る企業があるのだろうか、そういうこともあわせ考えていかないと、机上の計算だけになってしまうのかな、」と。
これは、実は先般の委員会でも申し上げましたけれども、法治国家としてはいかがなものか。つまりは、国民年金についてもさまざま未納の問題がありますが、これは、政府の立場からいえば、払ってください、企業の未加入に対しては加入してくださいということを呼びかけるべき立場でありまして、それが、払えないというのであれば、別途制度をつくるというのがあるべき立場だということだと思います。
まず総理に、憲法が定めます法のもとの平等と、それから、現在多くの企業が、実際の法人数に対しては恐らく、恐らくというか間違いなく過半数、恐らく三分の二ぐらいが厚生年金に未加入であるという事実に基づいて、法のもとの平等と歳入庁の構想についてどういうふうに考えておられるか、総理に伺いたいと思います。
○岡田国務大臣 前回、委員とはこの問題を議論させていただきました。
いろいろな前提、仮定に立ってやっておられる話で、その後、私も少し調べさせていただいて、全体で十二兆円、厚生年金保険料、健康保険の保険料合わせて、それが未収だという委員の御指摘ですが、私は、それは相当過剰に計算されている、過大に計算されているというふうに考えております。そこのところを少し議論させていただきたいというふうに思っています。
○浅尾委員 前回も申し上げましたが、私の試算は衆議院の調査室にやっていただいております。ですので、政府は政府として、こっちは立法府として、立法府の調査室にお願いした数字で十二兆ぐらいの数字が出てきておりますから、そういうふうにおっしゃるのであれば、政府が前提を置いて数字を出していただきたいと思います。まず、そのことを伺いたいと思います。(後略)
衆院内閣委員会 第2号 平成24年3月7日(水曜日)
大臣所信聴取に対する一般質疑
(前略)
○竹本委員 実は、これは民主党政権だけのせいではないので、私もこの問題を担当したことがあるんですけれども、やはり、当時から未納率を下げるというのは極めて難しい問題でありました。しかし、完全に一〇〇%徴収というのは、今の制度ではなかなか難しいというふうに思います。
ですから、仮にきちんと税を徴収できるようになりますと十兆円程度の増収、こうなるわけでありまして、今回、民主党が考えている、政府が考えている消費税値上げで十三兆円ぐらいでしょうから、ほとんど一%分の消費税値上げで済むという話にもなるわけであります。
だから、やはり徴収をきちんとやるにはどうすればいいか。そうなると、やはり歳入庁をつくってやれという話にもなりますが、歳入庁をつくるかどうかという問題について、副総理の、岡田さんの考えを聞きたいと思います。
○岡田国務大臣 今、浅尾委員もおられますが、十兆円というのは、私はかなり過大ではないかというふうには思っております。その議論はまた改めて、必要があれば御説明したいというふうに考えております。
つまり、例えば厚生年金の保険料について言えば、厚生年金に加入することが免除されている事業者もございますので、そういったことをきちんとカウントしたときに十兆ということにはならないのではないかというふうに思っております。
さて、御指摘の歳入庁ですが、先般、私のもとに検討するためのチームをつくりまして、検討作業、これは、大綱の閣議決定を受けて検討作業を開始したところでございます。
今後、その作業チームにおきまして、一つは、国民年金保険料などの納付率向上にどの程度つながるのか、それから社会保険行政、税務行政全般の効率性確保に資するか、今後導入が見込まれるマイナンバー、給付つき税額控除、新年金制度等にとってふさわしい体制か、そういった視点を踏まえて検討を進めてまいりたいというふうに思います。
私の方としては、春ごろ、四月ごろに全体のイメージ的なものだけでもまず中間的に報告してもらいたいというふうに指示を出しているところでございます。
(中略)
○荒井委員長 次に、浅尾慶一郎君。
○浅尾委員 みんなの党の浅尾慶一郎です。
冒頭、先ほど委員会での質疑の中で岡田副総理が私の名前を出していただいたので、前々からお願いをさせていただいている、お願いをする筋の話でもないんですが、こちらが出した試算について説明に伺うということになっておりまして、残念ながら、その日は、どうも新聞報道によると、自民党の方々との増税案の協議ということで、中止になってしまったということであります。
増税をする前に、民主党自身が歳入庁をつくるということも言っておりましたし、数字が違うというなら違うで結構です、しかし、取り漏れがあることは事実ですから、その試算。いわゆる取り漏れがあるというのは不良債権になっているところだと思いますので、その不良債権隠しをするのではなくて、政府自身としても試算をしていただきたいと思いますし、ぜひその時間をとっていただきたいということを申し上げたいと思いますが、何かあれば。
○岡田国務大臣 浅尾委員にお時間をいただきながら、ちょっと都合でお会いできなくなりましたので、改めて時間をというふうに思っております。
事務方から事前に説明を受けたんですが、私なりに納得できないところがありまして、再度検討を事務方にお願いしておりますので、私なりに納得をした上でお会いした方がいいかなというふうに思っています。
(後略)
[引用おわり]
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