『無国籍(新潮文庫)』
陳天璽、2005、『無国籍(新潮文庫)』、新潮社
当事者でなければ理解できないことがたくさん含まれているのだが、しかし、かといって状況は様々で無国籍になった経緯も異なる。その意味で、当事者もまた多様であるはずで、本書はナショナリティあるいはエスニシティに関する研究者によるエッセイとはいえ、ケーススタディと言う理解で良いのだろう。
世界中の人々はそれぞれの事情で生業をたてていた。しかし、近代国家は国境を厳密に管理し、国境を超えて移動する人々に対し、国籍という虚構をあたえ、証明書としてのパスポートを交付した。そして、国籍に基づき、様々な便宜をも交付した。しかし、世界の多くの人々は便宜的に、あるいは、政治的に居住地をやむなく、あるいは、意図的に変更する必要が生まれたときに、いたって不都合が生じる。その狭間に、様々な事情でどこにも帰属が許されない「無国籍」と言う状況がうまれる。本質的にコスモポリタンである無国籍は近代国家の国境によって、社会的弱者となってしまう。
一方ではインターネットは容易に国境を超える。しかし、近代国家は様々な規制を強化してコスモポリタンな、あるいは、グローバルな展開を阻止しようとする。著者は、諸般の事情で日本国籍への帰化を選択してしまった。そのことの是非を問うことはできないにしても、近未来、あるいは、遠未来のあるべき姿として、国境や国籍や国家の交付するパスポートのあり方について、夢想することは重要なのではないだろうか。
当事者でなければ理解できないことがたくさん含まれているのだが、しかし、かといって状況は様々で無国籍になった経緯も異なる。その意味で、当事者もまた多様であるはずで、本書はナショナリティあるいはエスニシティに関する研究者によるエッセイとはいえ、ケーススタディと言う理解で良いのだろう。
世界中の人々はそれぞれの事情で生業をたてていた。しかし、近代国家は国境を厳密に管理し、国境を超えて移動する人々に対し、国籍という虚構をあたえ、証明書としてのパスポートを交付した。そして、国籍に基づき、様々な便宜をも交付した。しかし、世界の多くの人々は便宜的に、あるいは、政治的に居住地をやむなく、あるいは、意図的に変更する必要が生まれたときに、いたって不都合が生じる。その狭間に、様々な事情でどこにも帰属が許されない「無国籍」と言う状況がうまれる。本質的にコスモポリタンである無国籍は近代国家の国境によって、社会的弱者となってしまう。
一方ではインターネットは容易に国境を超える。しかし、近代国家は様々な規制を強化してコスモポリタンな、あるいは、グローバルな展開を阻止しようとする。著者は、諸般の事情で日本国籍への帰化を選択してしまった。そのことの是非を問うことはできないにしても、近未来、あるいは、遠未来のあるべき姿として、国境や国籍や国家の交付するパスポートのあり方について、夢想することは重要なのではないだろうか。
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