South Is. Alps
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Coromandel
Coromandel, NZ
Square Kauri
Square Kauri, NZ
Lake Griffin
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ポトフ

[昼食]自宅、明太子パスタ+全卵(前回食べたとき、ソースが塩辛かったので卵を加えてみた。これで良かったぐらいと思うが。市販のソースなので・・・)

ポトフ:豚ロースブロックを一昨日に塩豚にしておいたもの+白ネギの青み+ローリエ、1時間ほどじっくりと煮る。ダイコン+ニンジン+キャベツ+ジャガイモ、赤唐辛子+塩少々。粒マスタードと柚子胡椒で

2024-02-22 21:14:39 | 夕食・自宅 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


「刑事シンクレア シャーウッドの事件(字幕版)」

Amazon Prime Video、原題「Sherwood」(BBC制作の6回のTVシリーズ(2022年))
物語は1984-85年の中部イングランドでの炭鉱争議を背景にしているのだが、同時代での出来事とはいえよく知らなかった。サッチャーのネオリベ政策のあらましは知っていても、詳細についても知っておくべきだと思った次第だ。まずは、このTVシリーズの背景をまずふり返ることにしたい。
イギリスの産業革命を可能にしたのはブリテン島各地の炭鉱から掘り出される石炭だった。もちろん、石炭はローマ時代から利用されていし、産業革命とつながったのは石炭を燃料とする動力革命(蒸気機関が生み出されたこと)と木炭製鉄に変わる石炭製鉄による鉄鋼産業がこれに合わさったことによるので、もちろん石炭採鉱だけが産業革命の原点だなどということはない。そうではなくて、膨大な石炭が多数の労働者の手により石炭は掘り出され、多くの人々がこの産業に携わってきたその挙げ句の果てにのちに述べるサッチャーのネオリベ政策によって人々は人生の行方を失った。それだけでなく、残念なことに、サッチャリズムがその後のイギリスを救ったわけではなく、元炭鉱町の人々は廃坑のあと様々な産業に転職して生業を立てつつも、かといってその地域の新たな未来を見出すことができたわけではないということなのだ。
「刑事シンクレア シャーウッドの事件」というBBCのTVシリーズの舞台となっているのはブリテン島の中部のノッティンガムから北方のシャーウッドの森にかけての地域だ。ロビンフッドの「シャーウッドの森」は記憶にあるだろう。また、ひょっとするとバイロンの邸宅の「ニューステッド・アビー」もこの地域にある(物語に登場する)。このTVシリーズでは、本人の意図とは全く別にある種の「狂言回し」のように物語の根っこを掘り起こすことになる若者スコットがクロスボウ(ボウガン)やアーチェリーを持って殺人や傷害事件を起こして、「シャーウッドの森」のなかを逃げ回る。
さて、ノッティンガム近郊の元炭鉱町では未だに1984−85年の労働争議の波紋を引きずっていた。炭鉱労組の指示に従いストライキを打った者と「スト破り」をやった者たちの反目だ。具体的に暴力事件にまでには至らないにしても、酒場でのいざこざは日常茶飯事のように起こる。そうした中、ストライキ派のゲーリーが夜半クロスボウで射殺され、翌朝路上で死体として発見される。ゲーリーは30年以上も前の労働争議の主導者の一人で労働争議のスト破りへのバリケード(警官に排除される)、当日おきた警察関連車両の車庫への放火殺人事件の当事者として逮捕された。放火殺人については、結果としては誤認逮捕と認められたものの焦点となる人物だった。ゲーリーは、一方の当事者であり、その後も長く、スト破りをした人々との半目でもハイライトを浴びる人物だった。くわえて、労働争議の際警察が送り込んだ覆面警官(スパイ)探しを行っていた。
ゲーリーの殺人事件は犯人不明のまま、町の人々はこれは労働争議の遺恨によるものではないかと疑心暗鬼にとらわれることになる。ノッティンガム署の警視イアンもまた、争議当時の当事者の一人であって、町の人々の不穏な動きを意識しつつ事件の背景が歴史的なものによるとの考えに囚われていた。当時、スコットランドヤードはスト破りのために大勢の警官を労働に従事する労働者を守るという名目で送り込んでいた。ケヴィンという現在スコットランドヤードの警部補もまたその一人だった。イアンは、ゲーリーの履歴の文書の中に黒塗りの部分をみつけ、ロンドンに照会する。スコットランドヤードの警視総監は、事情説明および捜査支援のために当事者のひとりでもあったケヴィンをノッティンガムに送り込む。イアンとケヴィンはもちろん旧知の仲で、ともに労働争議の際の若手警官としてスト対策に従事していた。実はケヴィンは、地元の女性と恋仲になっていて、逢引のために車庫の警備の現場から離れ、結果として放火事件を誘発した責任者であり、イアンはケヴィンを尋問し地元の女性のことも意識して調書の内容を和らげていた。それだけでなく、放火事件はイアンの父(炭鉱労働者)が関わっており、イアンは警官としての義務から彼らのアリバイがないことを上司に伝える羽目になっていたし、警官であった弟は父を助けようと火の中に飛び込みやけどで重症を負っていた。イアンもまた、この労働争議がもつ地域社会への多大なる影響を否が応でも強く意識せざるを得ない人物でもあったのだ。
犯人スコットの殺害動機は労働争議の遺恨ではなかった。ストライキの首謀者であり、廃坑のあと失業したにも関わらずストライキや労働組合へのアイデンティティをなくさないゲーリーに対して未来のない引きこもりの自分自身を誇示するために事件を引き起こすことを選択したのだった。この物語はもちろん警察ものではあるのだがそれだけではなく、イギリスの持つ問題点をえぐり出していた。じつは、石炭産業の栄光と衰退も、労働運動の盛り上がりも、ゆりかごから墓場までの手厚い社会福祉政策も、また、ネオリベラリズム(小さな政府を目指したサッチャリズム屋その後のブレア労働党政権の動きもふくむ)も、歴史の流れの一部に過ぎず、覇権は産業革命から現在に至るまでもシティの金融資本主義にあったというイギリスの社会や経済の暗部や人々のアイデンティティや生き様を深く描いていてとても興味深くみることができた。

 

2024-02-22 14:25:01 | 映画/TV/DVD | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )