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減点法,教科書を越えて

2014年03月23日 | 読書
 「2014読了」32冊目 ★★

 『はやぶさ式思考法』(川口淳一郎  新潮文庫)


 「創造的仕事のための24章」と副題がつけられている。

 冒頭の「減点法を止めて,加点法にしよう」という章が根本だと感じた。
 どこまでを創造的仕事と呼ぶかは明確ではないが,少なくとも宇宙開発や科学的な発明分野などにおいては当然かもしれない。
 また,私達自身が100点満点の減点法に慣れきっているなあ,と改めて考えさせられた。

 例えば,加点法を採られているフィギュア・スケートを見ていても,どうしても「ミスをしないように」という気持ちが強いなあと今さらながらに思う。
 転倒などはもちろん大きな減点であっても,それを挽回できるほどの高度な技を展開することが肝心なのであり,そんなふうに切替できるマインドもまだまだだ。

 もちろん減点法の根付いた日本のミスの少なさは,例えば品質管理などには絶大なる力を発揮している。
 それを認めながらも,もっと幅を広げる時期であることは誰の目にも明らかだろう。


 「教科書には過去しか書いていない」という4章も刺激的だ。

 著者はこう書く。


 学びのプロになってはいけない。

 たくさんの教科書,文献をつかって勉強し,「学ぶこと自体が目標だ」という錯覚に陥るのだという。研究者の世界ではあることなのかもしれない。
 過去に学ぶことは大切であっても,それは「目的」ではなく,それが明確にできないものは発想まで手が届かないということだろう。
 研究分野においても,学ぶことの目的化が進んでいるとしたら,それは構造的な問題になっているのではないか。


 「時間を守ることを美徳」と教えられてきた私たちの国は,農耕社会から工業化,企業化の道を歩み,成功を収めた。
 だが,中東の国の人々は「時間にルーズ」が一般的だという。
 それは羊を追って暮らしてきたから,約束の時間守るより羊を迷子にしないということが大切で,「時間に遅れるな」と教えられていない,という件も非常に納得がいった。