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桜と絵本と豆乳と

その筆致にまいりました

2014年03月20日 | 読書
 【2014読了】30冊目★★★★

 『円卓』(西加奈子  文春文庫)


 勝手に名づけた「初めて読む作家シリーズ」第3弾は、この本である。

 いやあ、久々の星4つ。面白い。
 とにかく、筆致が独特で、新鮮である。

 例えば、主人公琴子の姉朋美が所属する、手芸部の玉坂部長に関する記述である。


 中三の女子であるが、「姑」というあだ名をつけられている。技術。貫禄。どれをとっても部長という称号にふさわしい。


 この文章、通常ならば「技術や貫禄、どれをとっても」「技術、貫禄などどれをとっても」と書かれるところだろうが、句点で一つ一つを際立たせている。
 これには単なる強調を越える重みを感ずる。
 技術では刺繍する手さばき、貫禄では下方からの体型アップで言葉を放つ、そんな映像が浮かんでくるような手法だ。

 さらに、延々と会話文を続けてみたり、暴力的ともいえる言葉遣いの連続があったり…ともすれば読みづらさにつながる要素があっても、それらは発想の新鮮さとテンポによって、見事に展開されていく。
 動的なイメージを単語と字体で表現した、終末も斬新だった。


 半分ぐらいまでは、筋そのものはあまり意識されずに、人物描写で終わっていくのかなとも思ったが、さにあらず。夏休みを境に琴子こと「こっこ」が一歩ずつ変化していく様が、夕焼けのようなさみしさを伴って、迫ってくる。

 今風に言えば、登場人物のキャラが立っていて、ある面計算しつくされた感があるなあと、読み終えて感じた。
 西加奈子、話題となった「通天閣」から読んでみようかと思う。


 実は本の帯に「映画化決定!」とあった。
 「主演:芦田愛菜 監督:行定勲」である。これ以上はない適役だ。
 「明日ママ」の芦田なら、きっと出来るだろう。