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桜と絵本と豆乳と

筋道がつけられる言葉かけ

2014年06月09日 | 読書
 「2014読了」60冊目 ★★

 『家族脳』(黒川伊保子 新潮文庫)


 調べてみたら,この著者の本は4冊目だった。

 この文庫は,月刊誌と機関誌の連載を合わせてまとめたもの。
 「家族を楽しもう」と「感じることば」の二章に分かれているが,前半が興味深かった。

 以前読んだなかでも,一人息子の子育てについて語った部分を面白く読んだ記憶がある。
 脳科学者として,女性そして親である自分をよく分析しているような気がした。

 その子育てが反映されている,息子さんの言動の描写がなかなか素敵だ。

 秘訣となる言葉かけがあった。

 「これは,男としてカッコ悪い」


 この感覚的な言葉は,実は著者が嫁いだ職人の家の持つ矜持に支えられた部分が大きい。
 職人であった義父の放ったこの一言を引き継いだ形で登場した。

 「始末が悪くて,しょうがねぇよ」


 以前,NHK連ドラ『ごちそうさん』に絡んで書いたことがあったが,この「始末」とは実に含蓄がある。


 要するに,始末を自分でつけさせるという点をいかに徹底させるか,ということに尽きる。

 そのための言葉かけは,こちらの思い通りに即行動を促す方向ではなく,自分の中で筋道がつけられる方が望ましい。


 その意味で「早期教育で失うもの」と題された,次のことも噛みしめたい。

 息子に,知を「結果」として与えるのは,ぎりぎりまで遅くしたい。公立の学校のカリキュラムは,そのぎりぎりをちゃんと担保してくれる。


 周囲に惑わされず,知の喜びを味わわせていきたいという姿勢に共感する。

 担保された側としても,背筋が伸びる思いがする。