すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

乱読の秋,深まる

2014年10月20日 | 読書
 「2014読了」109冊目★
 
 『叛骨の譜 町づくりに賭けた半生の記』(佐藤吉郎  無明舎出版)

 ここにある「町」とは,我が羽後町のことである。来年町制60周年を迎える。その三分の一20年間を町長として務めた著者が,選挙,就任を経て,在職時の思い出を中心にしながら,自らの一生を振り返った書である。他県の方々にはまったく興味が湧くとは思われないが,地方にある過疎の町の一つの典型とも言えるだろう。そして「政争の町」でもあった。

 著者が書いた歴史は,片面の事実,真実とも言える。ある人からみれば,違った容貌に見えるのは当然かもしれない。その観点から書かれた著もあるはずだ。手がけた大規模圃場整備,統合中学校創立,企業誘致や町活性化…時を経てその全てが今ここにつながっている。言うまでもなく,米づくり,学校再編,人口減への対応…知恵が必要なのはいつも同じだ。



 「2014読了」110冊目 ★★
 
 『セイジ』(辻内智貴  筑摩書房)

 初めて読む作家だ。装幀とカバー写真がとても雰囲気がある。収められているのは表題作の「セイジ」ともう一篇「竜二」。題名だけだとなんとなくヤクザ路線か、長渕剛の歌の主人公のようなイメージがわくが、それは違っていた。ただ、まるっきり違うかといえば、そうも言いきれず、ある意味の共通性を指摘できる。それは一種アウトローとしての生き方だ。

 「変わっている」のではなく「違っている」という評価を下すためには、少し高みにたった見方が必要だ。それが人を理解するためには大事になる。それは世間の目、常識とはまた違った観点でもある。セイジの場合は周囲の理解者、竜二の場合は母親…主人公よりむしろその人たちの心の動きによって、話者自身が変革するパターンか。文章がやや説明っぽい。