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最高齢プロの声を聴け

2015年01月09日 | 読書
 【2015読了】5冊目 ★★★
 『最高齢プロフェショナルの教え』(徳間書店取材班 徳間書店)

 なかなかいい企画だなと思った。プロフェッショナル、仕事論…似たような書籍はあるが「最高齢」と絞り込んだ点には、その仕事にかける真髄のようなものが浮かび上がるだろう。取り上げられた14人の年齢分布は単行本発刊時で、50代と70代が一人ずついるがあとは80代以上、103歳という方もいらっしゃる。まずはくぐり抜けてきた時代の多様さを想う。


 大正期から戦争へ向かう時代に若いときを過ごし、戦後の混乱、繁栄期、そして再び変革期と言える現代までが対象だ。一つの仕事に打ち込んだ方、いくつかの変遷を経て現在の仕事に辿りついた方(といっても実年数は圧倒的だ)それぞれの道筋がバラエティに満ちていながら、共通点があるからこそ、ここに姿を揃えるわけだ。それは「貫く」でしかない。

 いくつも心に響いた箇所がある。多くの仕事人にとって有益な著だと思う。

 最高齢「喫茶店主」には魅力を感じた。

 大学の理工学部を卒業して、企業の研究所に勤め、その後軍隊の技術部隊に入った。戦後もいわゆる技術畑を歩むのだが、接待でいれていたものを「食いつなぎ」のため店を開くことにしたのが「コーヒー屋」の始まりだったという。
 理系、技術系の発想が、コーヒーの味そのものをどんどんと深く、素晴らしくしていった箇所が面白い。真骨頂はこの文章だ。

 ◇ものごとは「なぜ?なぜ?」と掘り下げていくうちに、面白くなっていくもの。それが、好きになることじゃないかな。(略)いつも好奇心を持って「なぜ」と掘り下げて追求する癖をつけることです。

 この考えを具体的に語らないにしろ、他の「最高齢」の方々も同様であろう。

 同じく最高齢「バーテンダー」が語ることにも耳を傾けたい。

 ◇確かに今は不景気だから、苦しい立場にいる人も多いかもしれません。でも現在、自分が辛い状況にあるのは、世の中のせいではありません。過去に自分がしてきたことの結果に過ぎないんです。

 そういう受けとめ方ができるか否か。結局、そこに尽きる。
 凡人とここに載っている方々の差は確かに大きい。
 しかし、だから○○○と、そこにどんな言葉をつなげるか。
 その意志で一歩は決まり、近づくか遠のくかの未来が待っている。

 最後に取り上げられているのは最高齢「声楽家」嘉納愛子氏(現在107歳で現役であるらしい)。
 どんな人生論も、この一言で括われてしまうような気がする。

 ◇103年、生きて思うのは「人生は公平だ」ということ。苦労したら、同じだけ恵みがあるんです。