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「知的」とは想像力と敬意

2015年01月15日 | 読書
 【2015読了】8冊目 ★★
 『知的な距離感』(前田知洋  かんき出版)

 著者はマジシャン。ただしマジックのことを書いている本ではない。ふと思い出したのはメイクのプロである岡野宏氏の著した『一流の顔』。そこで語られた独自の視点からの「顔」解釈は面白かった。この本の著者は人と人との距離感に関して、実にユニークな、それでいて納得できる見解を示している。副題は「プライベートエリア・・・魔法の効果」である。


 距離感について、上條晴夫先生から刺激をうけ何度かブログ(  )にも記したことがある。その学びを「プライベートエリア」という言葉を用いて解釈することもできるだろう。実に細分化された、多面的な分析がある。たとえば、個人のエリアは普通「前方に広く、横や後ろに狭い」という認識も新鮮だった。そうすれば、立ち方一つで印象は変わる。


 プレゼンなどの立ち位置についての記述も考えさせられた。「理想のプレゼン」の原則は、「出席者の右側(上手)から登場し、スクリーンが中央にあるなら、その左側(下手)に立ちます」とある。さっそく、始業式の挨拶時に「羊」のことを話すプレゼンをしたので意識してみた。左から右へという方向に聴衆の目が移っていくことが基本と覚えておくといい。


 距離感にわずらわされないのが電話やメールだが、そこでも距離感への気遣いは変わらないと著者は書く。相手が見えないゆえに「親しさ」を計れないこと、第三者が読む可能性も踏まえることが大切だ。敬称の付け方や「現実に会った場合と変わらないよう」な距離感覚の詰め方に配慮することだという。結局は相手への想像力と敬意と結論づけていいようだ。


 プライベートエリアの大きな働きの一つは「防衛」。「将来的に起こる可能性についての防御」という表現もある。それはコミュニケーションをとる際の態勢、説明する時の手の高さや手のひらの向き、視線、表情…全てに関わる。そこに「見えないガラス」があることを意識できるかどうか、内部と外部の違いに想いを馳せられるかが、「知的」の意味と言えよう。