すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

少し勾配のある道を選ぶ

2015年01月01日 | 読書
 【2015読了】1冊目 ★★★
 『それでも前へ進む』(伊集院静 講談社)

 新幹線に乗ると『トランヴェール』という冊子に目を通すことがある。それで目にしたことのある伊集院静のエッセイが単行本化された。ちょうど震災前まで連載されていた。第二部として震災後に書きおろした文章が表題の「それでも前へ進む」である。昨年(といっても昨日だが)読み終えた『悩むが花』で語っていることを,情景に映して綴る。断然,いい。


 珠玉の人生論が,様々なエピソードに彩られて語られる。

 著者の放埓な生活が止まるきっかけとなった葉山のホテル支配人との出逢い。
 ◇運命が人の行く末を決めるのではなく,人との出逢い,己以外の人の情愛が,その人に何かを与えるのだ

 仙台の家に薪を運んできた少年の掃除した床をみた感動。
 ◇仕事の基本は,丁寧と誠実なのだ

 「いねむり先生」との交流を通して得た様々な学びの振り返り。
 ◇人から受けた恩は,その人には返せないのが世の常らしい


 第二部では震災と震災後のこの国,世相について,著者らしい切り口で語られる「哀しみ」や「誇り」,そして「正義の本質を見据える」こと。

 自分に向けられたようで心に響いたこと二つを挙げて,新年一冊目の読了とする。

 ◇物事は忘れる前に覚えてしまえ,人は忘れる前に出会ってしまえ。何かを思い出せなくなる前に,どんどん新しい思い出を作っていけばいい。

 ◇もうひとつ大事なことは,常に少し勾配のある道を選ぶということだ。