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桜と絵本と豆乳と

社会を自分に引きよせて

2015年08月10日 | 読書
 【2015読了】75冊目 ★★★★
 『ぼくらの民主主義なんだぜ』(高橋源一郎  朝日新書)

 2011年の震災直後から今年の春まで、朝日新聞の「論壇時評」として月1回連載された文章の収録である。「復興」という言葉が飛び交っていた時期に、筆者は独特の視点を持って、「言葉」を見つめ続けていた。自分が2012年に読んだ2冊の本に惹かれたのは、柔軟な思考と呼んでいいことだったと今改めて思う。

 http://blog.goo.ne.jp/spring25-4/e/34952557c2267eb9065b13cde8561598

 http://blog.goo.ne.jp/spring25-4/e/016a5561ed97189beb8df222e0c92d3f


 心身障害児と取り巻く大人を扱った映画を論じながら、著者は教育の本質について触れる。それは「相互性」というキーワードで語られ、自由教育を行うある私立学校を紹介しながら、こう断じた。「民主主義が、単なるシステムではなく、それによって人が成長していく『教育』システムでありうることを学ぶ


 具体的なレベルでどこまで落とし込めるか、難しいことではあるが、「民主主義」における教育とはかくあるべしと思う。政治的な態度形成として、次の言葉も首肯できる。「民主主義とは、意見が通らなかった少数派が、それでも、『ありがとう』ということのできるシステム」。今、我々の国の民主主義はどうだろうか。


 在日特権の話題から「『うまくいかない人たち』による『守られている側』への攻撃は、一般社会でも広がっている」という引用があった。連日の報道や話題に、その言に当てはまる事項が増えているのではないか。先に挙げた「民主主義」から少しずつ距離が離れている気がする。はびこる頑なさを解す行動が欲しい。


 「あるひとりの女性のことば」と題された章は、真摯に向き合うことを考えさせられる。その女性とは皇后であり、書かれた文章と登場する人たちに、ある特徴を感じ、次のようにまとめている。「彼らは『社会の問題』を『自分の問題』として考え、そして、それを『自分のことば』で伝えることができる人たちだった


 上の文章は「そして、そのような言葉だけが、遠くまで届くのである」と締めくくられる。社会問題の多くにコミットすることは困難だが、想像力を働かせて、出来事に接することが今日を生きることだ。出来事に接する大事な原則もここには書かれていた。「そこにはつねに、それ以上のことがある」。意見の前によく見よ!