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犬の頷きと理屈

2015年08月22日 | 読書
 【2015読了】83冊目 ★★
 『夫は犬だと思えばいい。』(高濱正伸  集英社)


 「花まる学習会」代表の著者が、夫婦論、男女論を書いた。塾での指導を続けていく中で強く感じたあること、それはおそらく多くの教育関係者がそう思うこと。「親を変えなければ、根本は改革できない」…その中心となる母親を対象にした教室を開くなかで、夫の存在との関わりを考え、表題のことばが生まれた。


 あるようでなかった内容だなと思った。次のように書かれている。「異性を異性として理解しようという知恵が授けられていないから、男が女をバカにしたり、女が男を切り捨てたりすることで終わってしまう。」スポット的に、男と女の違いを学ぶことがあっても、確かに位置づけられていない。性教育の核にすべきだ。


 子育てを終わった世代である私のような者でも、ああこうすればよかったのかと過ぎし方を振り返させられた。男女の違いについて4ページにわたって表がある。多くの項目で頷けた。「行動の源」で男は知識、女は感情が典型的か。また自分や家人に当てはまらないことも散見され、それがある意味の個性なのだろう。


 教育に直接的に関わる記述も当然あり、興味深い。家庭教育の範疇だが「文章題の指導は、母親以外がよい」とある。ここにある「文章題を解く力」の向上に六つものの条件を挙げたことはさすがだ。そして、そういう複雑な要素があることに対して母親は絶対ダメで、第三者がいいという論理は説得力があった。


 現役教員が参考にしたいこともあった。例えば若い男性教員が保護者の母親を相手に話す場合など、次の鉄則は心に入れておきたい。「異性間には、お互い『それのどこが面白いの?』と感じずにいられない壁が存在します」。私たちは理屈を話す職業ではあるけれど、それが伝わるためには壁の存在を意識する必要がある。