すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

弥生三月春濫読

2019年03月06日 | 読書
 花粉到来 外出恐怖 空気清浄 全開運転


2019読了24
 『この世の全部を敵に回して』(白石一文  小学館文庫)


 魅力的な題に惹かれて手にした。この小説はいわゆる入れ子構造であり、「僕」の友人だったK****氏が残した手記が、その内容になっている。その手記とはストーリー性のあるものでなく、一種、哲学のように人生観、死生観を語っている。題が示すように、かなり大胆で攻撃的ですらある。読むのがちょっと辛くなるほど、その迫力に圧倒されて読了した。一節のみ引用する。

 「あなたはまず、自分自身を哀れまねばならない。」


2019読了25
 『新・生き方術 続・断捨離 俯瞰力』(やましたひでこ マガジンハウス文庫)


 本がベストセラーになり、「断捨離」という言葉が流行ったのは2010年だった。それ以前は「捨てる技術」だったか。読んで理解し納得したつもりになったが、いかんせん実践できないまま、今まさに自分自身が断捨離されるような齢になっている。さて、この文庫は技術的なことはほとんどなく、これも一種の哲学書風だ。俯瞰力こそ、断捨離で身につく力だそうだ。自分に響いた一節は…。

 「断捨離は、モノを通じて覚悟を育てる。」


2019読了26
 『さよならの力 大人の流儀7』(伊集院静  講談社)


 久しぶりの伊集院本。いつもの文体で、いつもの風景や感情を語っている。「父性」が滲みだす文章だと今さらながらに思う。よって世の中の時流には合わない生き方であろう。ただ、内容の半分以上に登場してくる、愛犬との日常や別れなど、共感できる人も多いはずだ。肉親や親しい人だけでなく、ペットであっても、別れは何かの「力の素」を人に残してくれる。それを昇華するためには時間が必要だし、何より真に心を寄せた日々を過ごした経験の力だと、「まとも」なことしか思い浮かばない。

 「さよならに力があるとすれば、誰かへのいつくしみがあるからではないか。」