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知らないから、ですむのか

2019年03月13日 | 読書
 ノルウェーの社会学者ガルトゥングが『日本人のための平和論』という本に、日本人が現政権を支持する訳を「代替案を知らないから」と書いていることを、ある書評で知った。基地問題や領土問題に関わるが、その著は「米軍撤退」を提案する。今の世の中では絵空事のように聞こえるが、我々に思い込みはないか。


2019読了28
 『知らないではすまされない 自衛隊の本当の実力』(池上彰 SB新書)


 そんな思いが残っていた時に見つけた一冊だ。憲法を巡る動きの中心にある自衛隊。その実状をどれだけ知っているかと言えば心許ない現実で、こういう時はやはり池上さんかと思った。読み進むと、この書名にもポイントが見つかる。「実力」とは二重の意味を持つことだ。言葉通りの意味と、「戦力」との関わり方だ。


 憲法9条をめぐって「戦力」の語が、歴代総理等により様々に語られてきた経緯がある。自衛隊の働きとして災害派遣などを否定する人は誰一人いないだろう。しかし国連の平和維持活動への参加に始まり、武力装備が必要で前面に出る場についての是非は意見が分かれる所だ。法のもとで自衛隊の姿は乖離している。


 という根本的な問題を棚上げしつつ、レクチャーされている「実力」は結構凄い。軍事力で世界7位は聞いたことがある。1機140億円のF35A戦闘機を42機揃える予定だという。それよりびっくりしたのはそのパイロットヘルメットが一つ4500万円ということ。最新は下を向くと光景が見える赤外線カメラ付きだ。


 知らないでいた様々な情報が確かに得られたが、それより妙に納得した自衛隊の出来た経緯だった。結局は、朝鮮戦争休戦による米軍の残った兵器の始末だったと記されている。こんなふうに武器や装備等の売り込みが、いつも国と人心を騒がしている。イージスアショアも同様なのである。属国認識が深まっただけか。