「木皿泉」という脚本家(夫婦ユニット)に注目したのは結構遅くて4年ほどしか経っていない。NHKドラマ「富士ファミリー」が最初だった。その後、小説も読んだが、代表作は『すいか』『野ブタ。をプロデュース』等となっている。その頃はあまりドラマを観る余裕もなかった。この本で俄然興味が湧いてきた。
2019読了27
『木皿食堂』(木皿泉 双葉社)
第一章はエッセイで、2011年から神戸新聞へ連載している文章の集約である。実にしっくりと入ってきた。価値観が似ているというのはおこがましいだろうが、心の中の頷きが多くて、ちょっとびっくりした。そしてナルホドと感じる知見も多かった。「日本人のホンモノ好き」という言葉も、言われて胸を衝かれた。
日本におけるエンターテイメントの軽視に触れつつ、「しかし同時に”裏”の文化としてアニメや漫画は発展し続けている。それはみんなが嘘を必要としてきたからではないか」と鋭く指摘する。そして、どれほど私達がニセモノや嘘を頼りに生きていかなければいけないか、その現状を常に自分に引き寄せて語っている。
「食堂」の文字がタイトルにあるように、食べ物好きの夫婦は話題も豊富だ。「ほろ苦い春」と題された回は、ふきのとうなどの苦さから語りだし、苦味の意義を「自分の体に、活を入れてくれる」とした。社会の苦味が増すにつれ甘い食べ物は欲しくなるが、やはり身体に苦味を入れて乗り切るしかない。Beerだね。
作家稼業の実態も面白い。第三章に『三月のライオン』で有名な漫画家羽海野チカとの対談があり、ずいぶんと親和性の高い話をしている。驚いたのは、「お風呂嫌い」という共通点。他にも多いらしい。これはめんどうくさがりやという面があるにしろ、集中力を切らさないための結果…つまり没頭力だと読み取った。
2019読了27
『木皿食堂』(木皿泉 双葉社)
第一章はエッセイで、2011年から神戸新聞へ連載している文章の集約である。実にしっくりと入ってきた。価値観が似ているというのはおこがましいだろうが、心の中の頷きが多くて、ちょっとびっくりした。そしてナルホドと感じる知見も多かった。「日本人のホンモノ好き」という言葉も、言われて胸を衝かれた。
日本におけるエンターテイメントの軽視に触れつつ、「しかし同時に”裏”の文化としてアニメや漫画は発展し続けている。それはみんなが嘘を必要としてきたからではないか」と鋭く指摘する。そして、どれほど私達がニセモノや嘘を頼りに生きていかなければいけないか、その現状を常に自分に引き寄せて語っている。
「食堂」の文字がタイトルにあるように、食べ物好きの夫婦は話題も豊富だ。「ほろ苦い春」と題された回は、ふきのとうなどの苦さから語りだし、苦味の意義を「自分の体に、活を入れてくれる」とした。社会の苦味が増すにつれ甘い食べ物は欲しくなるが、やはり身体に苦味を入れて乗り切るしかない。Beerだね。
作家稼業の実態も面白い。第三章に『三月のライオン』で有名な漫画家羽海野チカとの対談があり、ずいぶんと親和性の高い話をしている。驚いたのは、「お風呂嫌い」という共通点。他にも多いらしい。これはめんどうくさがりやという面があるにしろ、集中力を切らさないための結果…つまり没頭力だと読み取った。