和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

教育漢字。

2015-03-12 | 短文紹介
山田勝美著「漢字の語源」(角川小辞典)。
この古本が、200~300円。
他の古本といっしょに購入。
序には、昭和51年とあります。

その序にこんな箇所がありました。
「ついでにわが国の義務教育における
漢字問題について、一言しておかなければ
ならぬことがある。それは小中学校における、
いわゆる『教育漢字』といわれるものの
提出順序についてである。今を去る二十数年前
に種々の要請から、『教育漢字の学年別配当』が
きめられた。当時、漢文教育側から唯一の委員
としてこの作業に参加した著者は、怱怱のうちに
小委員会で決定され、全体委員会にかけられた
この案に対し、その不合理性を指摘して、
練りなおしを主張したが、多数によって
押し切られてしまったいきさつがある。
その後、果して偏傍が後に出て、それを含む
文字が先に出ているといった矛盾が現場から
指摘され、また有力な文字学者からの批判も
出ている。すでにこの学年別配当は定着しつつあり、
今にしてこれを改めるのは影響の及ぶところ甚大
なものであろうが、わが国の漢字教育の将来のため、
文部省当局が英断をもってなるべく早い機会に
善処されることを期待するものである。・・」


そういえば、
加藤秀俊著「常識人の作法」(講談社)で、
文化審議会(旧国語審議会)について語られている。


「・・敗戦後は漢字を全廃せよ、という
むちゃくちゃな占領政策にもとづいて『当用漢字』
1850字が昭和21(1946)年に制定された。
『当用』というのは漢字全廃にいたる猶予期間に
『さしあたり使う』という意味。でも当然のこと
ながらそれは無理ということがわかって、また
『常用漢字』に逆戻り。その後、なんべんも
修正や加除訂正があって昭和56(1981)年には
1945字が『常用漢字』として指定された。・・
これではぐあいがわるい、というので
平成21(2009)年春・・合計2136字になりそう
な気配になってきた。・・・こういう・・風景を
なぜ知っているか、といえばわたしじしんがむかし
この審議会の末席を汚していたからである。
たしか二期つとめた記憶があるが、会議のたんびに、
ああでもない、こうでもない、と意見交換が
おこなわれる。わたしなどは若僧だったから
意見が採用されたわけでもなく、はなしをきいて
いるうちにだんだん意気阻喪してしまったから
エラそうなことはいえないが、いろんな漢字や
表記についてその議論が空中を往来していた
のを記憶している。」(p192~195)


さてっと、
加藤秀俊著「なんのための日本語」(中公新書)
は、この経緯から出来上がった一冊のようです。

その新書あとがきには、こんな箇所。


「わたしじしんの日本語についての意見はどう
みても少数派である。表記ひとつとりあげてみても、
わたしの原則は大多数のひとびととはちがう。
だが、そのことをじゅうぶんご承知のうえで、
文化庁の国語課はこれまで国語審議会や
国立国語研究所評議員会などの場にわたしを
ひっぱりだしてくださった。『国語』と『日本語』
についてのわたしの見解はこれらの刺激によって
まとまってきた部分がすくなくない。それもこれも
ふくめて文化庁には感謝しなければならない。
それに、あまり知られていないことだが、
『カナモジカイ』だの『日本ローマ字会』だのと
いった法人も文部大臣の認可をうけ、文化庁に
所管されて活動している。国語課だって、
じつのところ、『国語』と『日本語』を
どうしたらいいのか思案中なのではないか、
とわたしはおもっている。・・・」


うん。『なんのための日本語』のなかに
紹介された本の、せめて2~3冊でも
読み込んでいきたい、と思う。
以前、そう思って、
そのまま忘れた前科がある。
ということで、
『なんのための日本語』再読に
チャレンジ(笑)。

コメント
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