注文したあった林屋辰三郎対談集
「聚楽の夜咄」(淡交社・1994年)が、
今日届く。本100円+送350円=450円。
ハートフルブック埼玉からでした。
はじまりは、司馬遼太郎との対談でした。
うん。さっそく引用したくなる箇所があり(笑)。
司馬】 随分古い話ですが、
昔、讃岐のあたりで
文部省の役人の人と会った時、
四国の各地で偏差値が違うのは
どういうわけですかと聞いたんです。
まあ、四国は四県が鮮やかに違うんです。
偏差値の高い低いが良い悪いではありませが、
高知県が全国でビリから二番目、
愛媛県がトップから二番目くらいなんです。
隣国でこんなに違うのはどういうわけですか
と聞くと、『お寺の数だと思います』と言うんです。
高知県は、非常にお寺の数が少ないんです。
そして、もともと少ない上に明治以後、廃仏毀釈を
真面目にやりましたから余計に少なくなっている。
愛媛県は昔から一村に浄土宗がある、
浄土真宗がある、時宗がある、禅宗がある、
と一か村に沢山のお寺がありました。
林屋】 八十八か所もある。
司馬】 江戸時代、お寺のお坊さんの跡継ぎが
京都に修行に行くことについては、
各藩ともそれだけは許している。
薩摩藩も許していますよね。
また、聖護院に山伏の修行に行く。
それだけは藩外に行くのを許しているんです。
京都へ行って帰ってくるとお行儀が良くなりますでしょ。
障子は足で開けるなとか。当たり前のことなんですけれど、
それをまず庄屋階級が見習って、次に大百姓が見習って、
ずうっと、規則正しい生活ができていくんです。
つまり朝は何時に起きて、朝御飯は何時に
こういうスタイルで、ということが代々
お寺の若僧さんが京都に行って身に付けてきた
お行儀の真似をしていって自立的になったんだと
言うんです。
で子どもが、テレビは一時間見て後は勉強、
というようになったんだと思いますというのが、
その文部省の古い役人のね、お寺の密度と
全部重なっていますという意見なんです。
林屋】 なかなかよく見て。
司馬】 実務者の見方で面白いでしょう。
これは京都が光の源、つまりお行儀という
文明の一貫した光源だった。
だから田舎の三年、京の昼寝三日とか、
京都で三日ほど昼寝しているだけでも
田舎で三年勉強しているより値打ちがあるんだ
という諺ができるのは、京都にお坊さんが修行に
行ったら全然違う人になって帰ってきた。
そういうことが我々の知らない明治以前の京都
というものの有難さだったんじゃないですか。
(p17~18)
はい。ここまで引用してきたのですが、
高知県に失礼になるかもしれません。
それは、司馬さんの本位ではないので、
そういえば。と思い出す本を本棚からとりだす。
司馬遼太郎著「『昭和』という国家」(NHK出版・1998年)
この第12章は「自己解剖の勇気」と題しておりました。
そこからも、忘れないように長めに引用しておきます。
「前回も言いましたが、右から左から、東西南北、
日本どこを問わず、偏差値ばかりです。・・・・
私は坂本龍馬の国の、土佐のことをずいぶん書いた
ものですが、高知県というのは全国の最下位に近いんですね。
おもしろい、非常にダイナミックなものの考え方のできる
風土と土地だと思うのですが、偏差値教育の場では
最下位に近いんです。
お隣の愛媛県は最上位に近い。
同じ四国のなかでどうしてこれだけ違うんだろう。
きっと土佐の人間には偏差値という社会が
合わないのではないかと思うぐらいです。
一人の女の子がいましてですね。その女の子は
高等学校を出たばかりの、高知の子です。
彼女は言います。全く偏差値社会と関係ない子でして、
こんなことよく言います。『日本という国は息苦しい』と。
どこかの国の人と結婚したい、
もう日本の社会は私にはあわないという。
高知の子であります。
高知という、おおらかで、ダイナミックで、
そして潔いところのある県はですね、
おもしろい人をたくさん生みました。
革命家だけではなく、自由民権運動家だけではなく、
高知県には明治以後、名文家が多うございました。
漱石が可愛がった寺田寅彦という物理学者がいますね。
あるいは大町桂月もいます。非常に文章のうまい人が
多いところですが、そういう知的な作業においても、
おもしろいものを持った県が、どうして日本の事務局長
養成型の偏差値社会に合わないのでしょうか。
これは大きな何かを暗示していることだと思うんですね。
・・・・言いっぱなしにしておきましょう。
・・・・若い人がもし聞いてくださっていれば、
その人が考えたらいい。その人が考えることであり、
私はちょっと宿題というよりも、かすかなヒントを
一人しゃべりでしゃべっているだけであります。
・・・・長らく聞いてくださってありがとうございました。」
(p183~185)
愛媛県のつぎに、高知県を出して、
ここまでにします(笑)
ところで、古本を送ってくださった
「ハートフルブック埼玉」からの文が入っておりました。
それを紹介しておきます。
ハートフルブック埼玉は
「障がい者就労継続支援A型事業所 オークタウン」
と詳しくなっておりました。
「ご寄贈ください。着払いでお送りください。」
とあります。詳しくは
「ハートフルブック埼玉」で検索できるようです。