和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

京都への修学旅行。

2020-02-27 | 地域
いよいよ。
林屋辰三郎著「京都」(岩波新書・1962年)を手にする。
はい。昨日届きました。本1円+送料350円=351円。
書肆吉成札幌IKEUCHI GATE6店より。

はい。『はしがき』は、こうはじまります。

「春は花、いざ見にごんせ東山、色香競(あら)そう夜桜や
とうたわれるように、京は四季のうつりにつれて、
それぞれの季節に応じた名所がある。・・・・」

この次の頁に

「わたしは京のなかに、
こうして四季を求めることができるなら、
どうかして一年の四季よりも、千年の古都という
その歳月を、京のなかでさがし求めてみようと、
いつのころからか考えていた。・・・・・
その可能性はおそらく日本中で、
京都だけがもっているものではなかろうか。」


はい。パラリとひらき「六道さん」の箇所を引用。

「京都の中京の人々は、毎年盂蘭盆になると
四条の橋をわたり大和大路を南に折れて、
さらに東へゆるやかな松原坂を上って六道まいりをする。
 ・・・
わたくしは両側に並ぶ切子燈籠やお供えの槇(まき)を
うる屋台店をぬいながら、精霊の迎い鐘をたよりに
松原坂をゆっくり上って行く方がたのしい。

坂の北側に古びた赤門のみえるのが、
六道さんの名で親しまれた珍皇寺(ちんこうじ)である。
本堂の前を六堂ノ辻といい、冥途の通い路と考えたのだが、
親しい人々を鳥辺野の煙とした京都の人々にとっては、
年に一度の六道まいりで精霊をむかえることを、
千年このかた伝えつづけているのである。・・・・・

境内はとりすました禅寺や門跡寺院とは異って、
まったく地獄・極楽の庶民的世界である。
そうした図絵を前にして絵解きをしたと思われる
雰囲気が、そのままにのこされているのである。

この寺の西には、今は嵯峨の奥に移された
愛宕念仏寺という、念仏三昧の寺もあった。
これらの寺が、庶民たちの魂の故郷ともなったのだ。
しかもこの寺は、京都の人々から盂蘭盆以外は
まったく忘れられている。お盆になると
突如として人が集まるのである。

この六道まいりも、室町時代には町々の人たちが
つれ立って、むかし町に生きた人々をしのび、
かつ今を生きる人たちの親しみをふかめる機会であった。
そこへ行けばそのころはいっそう広かった境内で、
猿楽などもみられたのである。

 ・・・・・・・・
本堂の本尊薬師如来坐像は藤原時代の優作といわれているが、
この寺が思い起こされる日の本堂の雰囲気は、とうてい
美術の鑑賞とはかけへだたった、人いきれの中にある。
いわば本尊の美術的価値をあげつらうのも、ためらわれる
空気が支配しているのである。町の人々が、こうしたなかに
一日を送ることが、盆という休日の理由であったのであろう。

この日に重ねて、おこりは新しいことだが、
清水坂の陶器の店々が市をたてる。
このごろは陶器まつりの名でにぎわい、
六道まいりの帰り客を誘うはずのが、
逆に陶器まつりの帰り客のいくらかが、
六道まいりをするというありさまである。
・・・・」(p115~117)

こうして文章は、つぎに至近距離にある
空也上人の六波羅蜜寺へとすすみます。

ちなみに、
「梅棹忠夫の京都案内」(角川選書)には、
この林屋辰三郎著「京都」の、梅棹さんによる書評が
掲載されておりました【昭和37(1962)】。

この書評で、梅棹忠夫は、こう指摘されております。

「著者の論点のなかで、わたしがもっとも感動したのは、
著者が、『京都はなぜ千年の古都と称しうるか』を
説明した部分である。
応仁・文明の大乱によって、古代都市として京都は、
完全にほろびさった。しかし、王朝の遺跡はすべて、
桃山・寛永のルネッサンスによって復興されているのである。
この指摘は、京都を理解するうえに、
あるいは日本の文化を理解するうえに、
ひじょうに重要な点であろう。」(p86~87)

うん。この梅棹さんの書評でおもしろいのは
「京都への修学旅行の意義」を語っている箇所でした。
最後に、そこを引用。

「ある意味で、京都はそのまま、いきている日本史である。
京都の歴史をかたることは、日本の歴史をかたることにもなる。
ここでは、京都を材料として、日本の歴史がかたられているのである。
この本は、京都という実地に即しながら、日本史へのよき入門書と
してつかうことができる。もともと、京都への修学旅行の意義は、
そういうところにあったのである。生徒たちを京都につれてゆく
役の中学・高校の教師にとって、この本の出現は、おおきな福音に
なるだろう。・・・」(p86)






コメント (3)
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