水上勉氏による天龍寺の解説を読んでいたら、
そこに「夢中問答」からの引用があったのでした
(「古寺巡礼京都④天龍寺」淡交社・昭和51年)。
うん。気になったので、古本で
岩波文庫のワイド版・夢窓国師「夢中問答」と
講談社学術文庫「夢中問答集」とを注文する。
それはそうと、この機会に思い出した本がありました。
本棚から上田篤著「庭と日本人」(新潮新書・2008年)を
とりだす。うん。昨年の台風15号のせいで、新書の下のほうが
すこし水を吸っておりました(笑)。
この新書の帯に「なぜこれほど京都の庭に惹かれるのか」とあります。
うん。新刊で読んでそのまますっかり忘れておりました。
新書の「はじめに」を引用することに
「ある年の暮の寒い日のこと、
一人のアメリカの友人を京都の寺に案内した。
大徳寺や竜安寺などのいくつかの寺をみたあとの
帰りの道すがら、かれはオーバーの襟をかきたてつつ、
わたしに質問をしてきた。
『日本人は、仏さまより庭が好き?』
『なぜ?』 と問うわたしに、
『だって、たいていの日本人は寺にきてちょっとだけ
仏さまを拝むが、あとは縁側にすわって庭ばかり見ている‥』
・・・・いわれてみるとそのとおりだ。
奈良の寺へいくと人は仏像を見るが、
京都の寺ではたしかにみな庭ばかり見ている。
かんがえてみると、奈良の寺にはあまり庭がない・・・
・・・・どうこたえたらいいのか、とかんがえているうちに、
同情するようにかれはつけくわえた。
『わたしたち外人もいっしょ、仏さまより庭が好き。
仏さまはたいていおなじ顔をしているが庭はみなちがう。
どうして石と砂だけの庭があるか。そんな庭は世界中、
日本にしかない。しかも日本の庭は美しいだけではない。
さっき見た庭の石はなにか話している。
近くの石はそっとささやく。向こうの大きな石は演説している。
遠くの石は歌をうたっている。それらにはシンフォニーがある』
・・・・・」(p9~11)
はい。新書「庭と日本人」は、このようにはじまるのでした。
うん。はじめて読んだ時の印象は鮮やかだった。
それなのに、今はすっかり忘れておりました。ちなみに、
新書の「むすび」、バルコニーの話も印象に残っております。
はい。京都を思い描きながら、庭に関する数冊が
むすびついてくるような気がしてきました(笑)。