和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

「高山寺に行きたいね」

2020-08-19 | 京都
淡交社の「新版古寺巡礼京都」全40巻の
巻頭エッセイを読んでみたいと思っておりました。
はい。「古寺巡礼京都」20巻を古本で買って
パラパラひらいていたので興味を持ちました。
けれども、写真入りのこの冊子は古本でも高いので、
なかばは、あきらめておりました。
それでも、未練があって古本検索をしてると、
全40巻の巻頭エッセイだけをまとめて、
上下巻にした本が出ているのに気づく。
うん。好評だったのですね(笑)。

その「私の古寺巡礼京都(上)」淡交社が
古本で届く。もったいない本舗からです。
318円+送料350円=668円。帯つき。
白いカバーもきれいです。

最初にひらいたのは、阿川佐和子さんのエッセイ。
そこから引用。

「初めてこの寺を訪れたのは・・・・
普段、親不孝ばかり重ねている娘が突如、
思い立って両親に申し出た。
『日帰りで京都においしいもんでも食べに行きませんか?
私がごちそうするから』すると父は即座に、
『だったらついでに高山寺に行きたいね』・・・
『お前、行ったことがあるのか』
『ないです』
『どういう寺か知ってるのか』
『そりゃ、あれでしょ。あのほら、鳥獣戯画のお寺でしょ』」

こんな調子で阿川さんのエッセイは始まっておりました。

「初めて訪れた石水院の印象は、予想していたより
ずっと質朴でこぢんまりとした建物だったが、高台にあるせいか、
すがすがしいほどの広さを感じる。南に面した幅広の縁側からは、
清滝川を挟んだ向かい側にそびえ立つ向山の雄姿を望むことができる。」

はい。適宜引用してゆきます。

「明恵はそもそも武家の出であった。
8歳の年に母親を病気で失い、同じ年、
平家方についた父が戦死する。一気に孤児となった
明恵は叔父を頼って神護寺(高山寺のご近所)に入り
16歳で仏門へ入る。その生い立ちの寂しさを克服するがために
己に厳しく生きようとしたのか、明恵の生涯は総じて
ストイックである。
『立派な寺院を建て生活が豊かになると、
僧は必ず堕落する。僧たる者は貧乏寺で、
かつかつに生きて、もっぱら道を求めるべきである‥』
(梅原猛「京都発見」七より)。
栂尾の地は、まさに明恵上人にとって
『待ってました!』の環境だったのではあるまいか。」

鹿の話もでてきます。

「『最近は山から鹿が降りてきて、茶葉をぜんぶ食べちゃうんで
困ってるんですけどね。でも高山寺は明恵上人の強いご意志で
殺生禁断の地となっておりますから、鹿を殺すことも
追い払うこともできません。鹿もそのこと知って
来ているんじゃないですかねえ』
田村執事が楽しそうに苦笑いをなさった。
大樹の間を鳥が飛び交い、澄み切った空気のなかで・・・
高らかな声を響かせる。・・・・
回を重ねごとに私はこの寺が好きになっていく。
ちょうどいい広さ、ちょうどいい静けさ。・・・飾らぬ自然。
明恵上人の心とともに、何時間でもそこらへんに
座り込んでいたい気持になる。・・・」


うん。「古寺巡礼京都」のエッセイだけのエッセンス。
「新版私の古寺巡礼京都(上)」はちなみに2010年初版。
その時の新刊価格は1800円+税でした。

コメント (2)
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