おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書2「匂いの人類学」(エイヴリー・ギルバート)講談社

2009-08-05 20:34:39 | つぶやき
 趣向を変えて最近読んだ興味深い本を紹介することに。第2弾は、「匂いの人類学」。副題は「鼻は知っている」。
 筆者は自称「感覚心理学者」。さらに「動物行動学」「神経科学」を学んできていて、多種多様な匂い(すてきな匂いからここぞという悪臭まで)に接してきた、と。
 その立場からきわめて実証的に人間の嗅覚の働きをさまざまな角度から分析していく。その論点の中心は、他の動物とは異なって、人間は匂いを符号として認識し、その信号値を柔軟に使いこなす。つまり「鼻や脳はどうやって世界を単純化しているのか」ということ。
 具体的な話題が豊富に取り上げられている。鼻がきく人達(調香師、化学者、販売責任者・・・)の話題。中でも、匂いつき映画の盛衰(この話題はとてもおもしろかった)、ショッピングモールでの匂いのマーケティング(今の大型店舗での客寄せに用いられている)、等々。
 昨夜のTVでも取り上げていたようだが、ガンを嗅覚で見分ける犬の話題なども出て来る(著者は、懐疑的な立場)。
 一方で、人類がこれまで接してきた「自然の匂い」、懐かしい香りが消え、人工的な化学的に調合された匂いに支配されつつある現状を憂いている。
 そのために、古代の匂いのこもった人糞の化石からその当時の匂い(雑多な植物や肉など)を再現に取り組む実験を行ったりしている。
 エッセー風な軽い読みものにもなっていて、どの章を読んでも興味深かった。
 そうそう、かの有名なフロイト(精神分析学)は、鼻(嗅覚)が機能不全だったために、あのような内面的な精神分析になったのだ、ということもおもしろい。
 
コメント
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