おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書19「江戸演劇史上下」(渡辺保)講談社

2009-08-25 20:07:32 | つぶやき
 上下2巻の大部の論文。筆者は、ベテランの演劇評論家。歌舞伎を中心に、中世や近世の演劇を俯瞰している論文が多い。
 この大著は、筆者の半生をかけた評論活動の集大成ともいうべきもの。上巻は、戦国時代後半から江戸初期の芸能事情を皮切りに、1700年代後半までを扱う。
 さまざまな芸能の中から、お国の「歌舞伎舞」の官能的な踊りから始まった、遊女歌舞伎が全盛を迎えるも、寛永6(1629)年になっての女歌舞伎の禁止。
 そこに、筆者は、人々の新しい時代への予感と不安を背景にした芸能の登場をみる。また、「禁止」が表すように、江戸時代の到来を新しい管理社会の出現としてとらえる。
 この視点から、人形浄瑠璃に代わって、上から庶民までが受け入れた、歌舞伎の興隆と発展、事件や弾圧などを織り交ぜながら、実証的に話を進めていく。
 「中村座」や「森田座」などの栄枯盛衰、団十郎、続く富三郎、菊之丞などの役者たち。作品としては、「国性爺合戦」「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」また「仮名手本忠臣蔵」(いずれも今も上演されている大当たりした名作)などを素材にして、歌舞伎の受容(上からも庶民からも)と反発(上からの)などの推移を明らかにしている。
 今も連綿と続く、歌舞伎役者の系譜、作品の継承など興味深い内容。それが、すべて許容されてきたわけではなく、弾圧?規制とのせめぎ合いの中で、作り上げてきた歌舞伎の歴史が詳しく述べられている。
 なおカバーの錦絵は、二代目団十郎(当時海老蔵)の助六。ほとんど一度は観たことのある作品や今も残る名跡が登場して、大変面白かった。下巻も引き続いて読みたいと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする