おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書9「宮沢賢治、ジャズに出会う」(奥成達)白水社

2009-08-13 23:37:48 | つぶやき
 ちょっとおしゃれな本との出会い。本屋さんや図書館巡りをしていると、けっこう面白そうな題名・装丁の本に出会う。この本もそうした一冊。
 
・・・こつちは最終の一列車だ
シグナルもタブレットもあつたもんでなく
とび乗りのできないやつは乗せないし
とび降りなんぞやれないやつは
もうどこまででも載せて行つて
北国あたりで売りとばしたり・・・

 大正15(1926)年に同人詩誌「銅鑼」(編集発行・草野心平)7号に発表された宮沢賢治の「『ジャズ』夏のはなしです」と題された詩。筆者は、この「すてきなジャズの詩」に出会って、「花巻にいたはずの宮沢賢治が、いつ、どこでジャズと出会い、聴いて楽しんでいたのだろうか」と賢治とジャズ音楽とのかかわりを探求していく。日本の、草創期のジャズ・シーンを紹介しながら進められていく。
 筆者は賢治の多くの作品に鳴り響いている、リズム、メロディ、イントネーションに、それまで自分が好んで聴いていたさまざまな音楽と同質の共鳴をしていることに気づき、驚いていた、という。
 この「質感」(茂木流に言えば、「クオリア」)のたとえとしてあげられているのが、ジャズのライブハウス・新宿の「ピットイン」での、たくさんのミュージシャンたちとの出会いによって培われてきたものだ、と。
 ほぼ筆者と同世代の私は、まさに同感!なつかしい店名を発見した思いだった。(大学時代にはここも含め、中野、阿佐ヶ谷、銀座などのジャズライブの店によく通い、時には、ヒノテルマサのまだ売れない頃の生演奏を聴いていた。) 
 ジャズの日本史・戦前編ともいうべき内容。書かれている、具体的なジャズの曲名、演奏スタイル、歴史などもほぼ理解できる内容だったのもうれしかった。
 それでも、まさか宮沢賢治のジャズとのかかわりから戦前のジャズの歴史にまで話題が広げていくとは!

恋はやさし野べの花よ
一生わたくしかはりませんと
騎士の誓約強いベースで鳴りひびかうが
そいつもこいつもみんな地塊の夏の泡
いるかのやうに踊りながらはねあがりながら
もう積雲の焦げたトンネルも通り抜け
緑青を吐く松の林も 
続々うしろにたたんでしまつて

これは、「岩手軽便鉄道 七月(ジャズ)」と題された宮沢賢治の詩。ここに、筆者は、デキシーランド・スタイルの、あのゆったりのんびりした明るいジャズの軽快さをつかみ取る。
 それにしても、まだまだジャズというジャンルも音楽も一般には広まっていないときに、賢治は、たしかにすてきな「ジャズ」の詩を作った。
 筆者の「賢治との出会い」であり、「ジャズとの出会い」の強い思いと共感を書きつづったものである。
コメント
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