水(川)に関連する、日本での最古の石造りの建築物で現存するものは、堀などの城壁を除けば、長崎の眼鏡橋だという。長崎市の中島川に架かる石造二連アーチ橋で、1634(寛永11)年に完成。1982(昭和57)年の長崎大水害で半壊し、修復されている。
この本で話題される上下水道に関して。江戸の市民への上水施設・本格的な上水道、神田上水、玉川上水、あるいは亀有上水などの整備がなされたのは、1620年代以降であった。
しかし、古代ローマでは、紀元前3世紀のアッピア水道の完成以降、10以上に及ぶ幹線水路を造りあげた。それも、江戸のように開削水路ではなく、トンネルや蓋付きの水道橋が主体であった。それも、こうした技術は、ローマの属州となった国々にも波及し、今でも、フランスのボン・デュ・ガール・三層の石造アーチ橋(ニーム水道)が世界遺産に指定されるなど、ヨーロッパ各地に保存されている。
当時のローマはすでに人口は百万人だったという。その密集した地域に住む人々の上下水道の完備は、工学的技術はもちろんのこと、その発想、インフラの整備、管理維持など現代の我々にも多くの示唆を与えている。
日本は、弥生式文化の時代から、卑弥呼などが登場する古代の頃。すでに、古代ローマでは、11本の幹線水路が完成している。その総延長は、504㌔(ほぼ東京・大阪間に匹敵)、そのうち、トンネルが431㌔、橋梁が59㌔であった。そこには、サイホンの原理に基づく工学・土木技術などが駆使された。また、市内には、誘水路、鉛管や陶管などを使っての各家(建物)への供給(鉛に関しては、鉛害が引き起こされるが)、使用規定、料金など細かく管理運営されていた。下水道も整備されていたという。(江戸でも、上下水道の整備は進んではいたが)
また、今でも各所に現存する噴水、公共浴場に対する水の利用。それが、日本との文化比較論にもつながる。ちなみに、日本の最古の泉(噴水)は、金沢の兼六園にあるそうだが、ローマの噴水の豪華さ、荘大さなどに比べると、実にささやかなものであることが知れる。
筆者は、大成建設で瀬戸大橋や明石海峡大橋の建設に携わった土木技術者、現在、東洋大学工学部環境建設学科教授をされている。
そうした長年培った現場感覚、実証主義的観点から、古代ローマの水道について述べた書であり、(江戸上水との比較も興味深い)写真・資料も多く、目で見るだけでも面白い。
また、安全な飲料水の供給、下水道の整備など、これまでの土木工学的な成果をアフリカなどの良質の水に恵まれない地域への技術提供の重要さも指摘する、筆者の姿勢に共感を覚えた。
この本で話題される上下水道に関して。江戸の市民への上水施設・本格的な上水道、神田上水、玉川上水、あるいは亀有上水などの整備がなされたのは、1620年代以降であった。
しかし、古代ローマでは、紀元前3世紀のアッピア水道の完成以降、10以上に及ぶ幹線水路を造りあげた。それも、江戸のように開削水路ではなく、トンネルや蓋付きの水道橋が主体であった。それも、こうした技術は、ローマの属州となった国々にも波及し、今でも、フランスのボン・デュ・ガール・三層の石造アーチ橋(ニーム水道)が世界遺産に指定されるなど、ヨーロッパ各地に保存されている。
当時のローマはすでに人口は百万人だったという。その密集した地域に住む人々の上下水道の完備は、工学的技術はもちろんのこと、その発想、インフラの整備、管理維持など現代の我々にも多くの示唆を与えている。
日本は、弥生式文化の時代から、卑弥呼などが登場する古代の頃。すでに、古代ローマでは、11本の幹線水路が完成している。その総延長は、504㌔(ほぼ東京・大阪間に匹敵)、そのうち、トンネルが431㌔、橋梁が59㌔であった。そこには、サイホンの原理に基づく工学・土木技術などが駆使された。また、市内には、誘水路、鉛管や陶管などを使っての各家(建物)への供給(鉛に関しては、鉛害が引き起こされるが)、使用規定、料金など細かく管理運営されていた。下水道も整備されていたという。(江戸でも、上下水道の整備は進んではいたが)
また、今でも各所に現存する噴水、公共浴場に対する水の利用。それが、日本との文化比較論にもつながる。ちなみに、日本の最古の泉(噴水)は、金沢の兼六園にあるそうだが、ローマの噴水の豪華さ、荘大さなどに比べると、実にささやかなものであることが知れる。
筆者は、大成建設で瀬戸大橋や明石海峡大橋の建設に携わった土木技術者、現在、東洋大学工学部環境建設学科教授をされている。
そうした長年培った現場感覚、実証主義的観点から、古代ローマの水道について述べた書であり、(江戸上水との比較も興味深い)写真・資料も多く、目で見るだけでも面白い。
また、安全な飲料水の供給、下水道の整備など、これまでの土木工学的な成果をアフリカなどの良質の水に恵まれない地域への技術提供の重要さも指摘する、筆者の姿勢に共感を覚えた。