Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

<第二の生命>中心主義

2023年04月17日 06時30分00秒 | Weblog
 「ニーチェの考えでは、このようにソクラテス以後のギリシアの「哲学」は肉体的生命を蔑することによって堕落し、この堕落が、のちのキリスト教につながって、「西洋」というものの根本的頽落の原因となる(ニーチェは「原因」という概念を嫌うから、この言い方はほんとうは正しくないのだが)。キリスト教において肉体的生命への侮蔑は頂点に達し、この世の背後にある「永遠に生きる世界」への崇拝と信仰が人間を支配するようになる。これはパウロによって定式化された生命観である。人間の肉体的生命は有限だが、信仰者のみが神から与えられる「霊のいのち」つまり<第二の生命>は永生する、という考え方である。もっとも唾棄すべきものとしてニーチェが全否定したのが、この彼岸的生命観つまり<第二の生命>中心主義だ。」(p123)

 近年出版されたニーチェの研究書の中では出色の出来栄えだと思う。
 内容は盛りだくさんで、いっぱい引用したいところだが、まずは上に挙げたくだりを引用したい。
 <第二の生命>中心主義は、私が「モース=ユべールモデル」として解釈していた旧約聖書やリグ・ヴェーダ的な世界観・死生観(命と壺(5))に近いと思うが、小倉先生はパウロを起源と見ているので、「パウロ・モデル」と呼んでもいいように思う。
 ニーチェは、この思考を、「彼岸的生命観」として全否定したのである。
 ちなみに、私の見立てでは、この<第二の生命>中心主義が、西欧とは違う形で、日本社会の根っこのところで、”執拗低音”のように響き続けている。
 それにしても感心するのは、小倉さんが、シュレヒタ版で500頁以上の「遺稿から」全部を、”目を皿のようにして”読んだというところである。
 これには4年以上かかったということだが、こういう地道な努力が、ニーチェの思考に肉薄するために必要な作業だということなのだ。
 
コメント
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