ナビゲーターの方によると、約700曲あるリストの作品のうち、半分近くが編曲なのだそうである。
編曲には、原曲に忠実な「トランスクリプション」(本公演で言えば「夕星の歌」)と、原曲に着想を得てアレンジされた「パラフレーズ」(本公演で言えば「ヴァルハラ」)の2種類がある。
ちなみに、中学時代以来のワグネリアンである私が「決定版」だと考えるトランスクリプションは、以下の2盤である。
問題を孕んでいるのは、言うまでもなく「パラフレーズ」であり、リストはショパンの夜想曲を弾くときも、原曲にない音を沢山加えてしまい、ショパンから苦言を呈されている(楽譜の解釈(3))。
「ドン・ジョヴァンニの回想」をモーツアルトが聴いたとすれば、ひっくり返ってしまうかもしれない。
あのシンプルで美しいメロディが、原型をとどめないくらいに切り刻まれ、他の音が加わって、別物になってしまっているからだ。
・・・と思いきや、ワーグナーもフォーレの「パラフレーズ」によって、殆どパロディ化されていた!
「バイロイトの思い出 連弾 フォーレ(メサジェとの合作)」をワーグナーが聴いたとしたら、癇癪持ちの彼の事なので、激怒したのではないだろうか?