「来春、関西地方の私立大大学院の修士課程を終える女子学生(23)はインターンシップ(就業体験)に参加し、昨年12月の早期選考で内々定を得たIT企業の担当者に、他社の選考を受けないよう迫られた。オンライン面談で繰り返し念を押され、内定を辞退しないことを求める「承諾書」へのサインも求められた。」
就職氷河期以前の人がこの記事を見れば、隔世の感を禁じ得ないことだろう。
かつて、「他の会社は回らなくていいよ」というフレーズは、(内)内定の”合言葉”であり、この言葉を受けて就活生はようやく安心し、たいていは就活をやめたからである。
だが、これが今や、「ハラスメント」になり得るというのである。
さて、法曹界でも、これに似た状況を見ることがある。
いわゆる五代事務所(五大法律事務所とは?)においては、「サマー・クラーク」を開催するなどにより、司法試験を受ける前から有望そうな若手を囲い込んでいる(ロースクールにおける人格蹂躙とクソな競争)。
司法試験に合格し、修習が始まると、こうした若手は”任官”、つまり裁判所や検察庁からの勧誘を受けることが多い。
裁判所・検察庁も、若い優秀な人材を求めているからである。
このため、人材を巡る競争が生じることになるが、私が修習していたころ、内定を出した裁判所・検察庁サイドは、「ゴダイ/ヨンダイを辞退せよ」という指示(オワハラ?)を出していたようである(但し、今もこういう指示が出ているかどうかは分からない)。
実務修習時代のある同期は、(当時の)四大事務所の一つのA事務所から内定をもらっていたが、修習開始後は検察から強く勧誘を受けていた。
こういう修習生にとっての大きな悩みは、やはり「転勤地獄」の問題である。
例えば、配偶者が弁護士(の卵)だと、一緒に転勤出来ず単身赴任生活が長くなってしまうため、これを懸念する人がいるのだ。
その同期は、交際相手の女性が都内の法律事務所から内定をもらっていたので、「仕事(検察官)を取るか、彼女を取るか」で悩んでいた。
そこで、同期の修習生たち(みんな年上)に相談したのだが、私は、「その問題設定自体がおかしいのでは?『転勤族の人とは結婚しない』というのであれば、しょせんそういう人物だということではないか?」と指摘し(今思えばなんと無責任な発言であることか!)、他の先輩方も「やはり仕事が第一」という助言をしたのである。
結果、その同期はA事務所に内定辞退を告げたのだが、A事務所側の反転攻勢(オワハラ?)も猛烈だったようで、何度か呼び出しを受けて説得を受けていたらしい。
最終的に、彼は検事に任官された。
だが、振り返ってみてつくづく思うのは、どうして採用する側は、相手に対して「ふつうのこと」が出来ないのだろうか、ということである。
「「オワハラ」と非難されないようにすることは、別に何ということはなく、人と人が出会う時にする「ふつう」のことをすればよいのだと思います。それができない/ついやってしまう採用活動は異常と言われても仕方がありません。 」