「ジャニーズ事務所が19日、取締役会を開催し、創業者のジャニー喜多川氏(2019年死去、享年87)の性加害問題を受けて社名変更などについて議論し、今後の方針を確認したことを、公式サイトで明らかにした。」
私見では、いまだに日本のカイシャの大半は「イエ」、すなわち、「父方/母方いずれかのゲノム又は屋号(苗字)などの事業/集団の表章を共有し、日本の土着宗教(柳田國男が言うところの「祖霊信仰」)の原理に基いて、その構成員(死者を含む)のために事業及び祭祀を一体的かつ継続的に営む集団」であると思う(カイシャ人類学(8))。
J社の場合、通常であれば「喜多川芸能」などと「苗字(屋号)」を社名に入れるところを、ファーストネームを用いたところに特色がある。
(そういえば、アメリカの「ジョンソン・エンド・ジョンソン」、「プロクター&ギャンブル」はいずれも苗字だし、JPモルガン・チェースのうち、「チェース」は苗字で、「JPモルガン」は苗字と名前をまるまるとったものである。したがって、アメリカでも、ファーストネームだけを社名に用いるというのはやはり珍しいのでないかと思う。)
あくまで推測だが、創業者(J氏)としては、もともとJ社を「イエ」化、すなわち世襲化する意図はなかったのかもしれないが、姉らの意向で世襲化したという流れではないだろうか。
だが、この特殊な社名が、ここにきて大きな問題を生じさせた。
社名を変更することが検討されているのだ。
さて、本当に社名を変えるとすれば、どうなるだろうか?
これについては、社名変更を行った有名企業がある。
「2006年、7代目社長に就任した大坪文雄氏は、2008年1月に松下電器産業から「パナソニック」へ社名変更し「松下」を消したが、正幸氏が代表権を持っていたこともあり、創業家との関係をあからさまに軽視したわけではなかった。大坪氏は「真のグローバルエクセレンス(世界的優良企業)になるには、ブランドを統一して全従業員の力を結集する必要があると判断した」「創業家には昨年(2007年)12月に説明し、すぐに賛同してもらった。『会社は社会の公器』など、松下幸之助の経営理念は守っていく」と強調した。」
社名変更によって、カイシャがその性質を変えるとは限らない。
実は、同族経営だが社名に地名や商品名を用いて”仮装”する例は多く、私はこれを「疑似屋号」と呼びたいと思う。
引用した会社も、表向きは同族経営を解消したかのようだが、「イエ」の核心的要素である「祖霊信仰」(創業者崇拝)は続いているとみられるので、完全に脱「イエ」化したわけではない。
対して、J社の場合、もはや「祖霊信仰」の維持は難しい状況にある。
そうすると、完全に脱「イエ」化するしかなさそうであり、事業の性質上、地名や商品名を「疑似屋号」として用いることも出来なさそうである。
さあ、どうする?
というか、その前に、「どうする家康」はどうする?