去年と違って天候に恵まれた今年のシルバー・ウィーク前半は、コンサートの翌日に山登りに行く計画である。
選んだのは、「ダイヤモンド富士」で有名な竜ヶ岳。
登山口までは河口湖からバスと徒歩で約1時間以上かかる。
そのため、東京発だとエントリーまでたどり着くのに時間を食ってしまうのだが、前日に河口湖付近に宿泊していると、余裕を持った日程が組める。
始発のバスに乗りこむと、車窓から見えるのは、どうも30年ほど前に見たことのある光景のようだ。
かつて、この付近の山(おそらくパノラマ台コース)に登ったことがあるようなのだ。
そういえば、私は、この25年間における富士五湖の観光産業の変化を”フィールドワーク”で調べていたのだった(空を飛び、海を駆ける)。
というわけで、過去の記憶をたどりつつ、車窓から見える風景を注意深く観察することとした。
すると、連休だというのに、精進湖から本栖湖にかけての民宿村や休暇村は、比較的人が少なそうである。
おぼろな記憶では、30年前は、この辺りも合宿や研修などで週末は人があふれていたと思うので、社会・経済の変化やコロナウイルス問題の影響がありそうな気がする。
他方、バスに乗っている人の半数近くは、外国人である。
この現象は、さすがに30年前には見られなかった。
もっとも、外国人の多くは、途中の「風穴」で降りてしまった。
「本栖湖 周囲10km、面積5.1㎢。ボート(1時間1100円)に乗ると、18メートルという透明度が実感できる。観光施設は少ないが、その分たっぷり自然が残っていてキャンパーに人気が高い。」(p42)
本栖湖に着いて登山口に向けてしばらく歩くと、何とも平和な光景に出くわす。
大勢の人たち(大半は家族連れ)が、キャンプ場で楽しそうに過ごしているのである。
林の中では、バーベキューを楽しむ人もいれば、ハンモックで昼寝している人もいる。
湖では、(30年前もあった)ボード・セーリングだけでなく、近年流行しているスタンドアップ・パドルボードが目立つが、これも新しい現象である。
他方、キャンプ場内に、外国人の姿はほぼ見当たらない。
外国人観光客にとって、キャンプ・グッズまで日本に持参するのはさすがに難しいことなのだろう。
どうやら、本栖湖キャンプ場は、日本人(主に家族連れ)にとって、数少ないサンクチュアリとなっているようだ。
これだと、25年前のガイドブックもそのまま通用しそうである。
なんだか私はちょっと安心して、今度はキャンプをしに来ようと決心したのであった。