以前にNHKで、戦前の庶民の残した日記を分析する
(日記に出てくる言葉の使用頻度等を調べる)ことで
時代の空気の変化を読み解いた番組があった
そうした日記をよく集めたものだ!と思ったが
ある時期から厭戦気分が、勇ましい言葉の頻度が多くなって
妙な高揚感があふれるようになった経過が丁寧に紹介された
気分の醸成を行ったのはメディアの力で、メディアの報道と
勇ましい言葉の相関関係は明らかだった
(戦いを煽ったのはメディアとも言えるということ)
政治の現場にいる人ではなくて庶民の日記は、情報通ではないが
感情がストレートに読み取れる分、社会全体の実態を表しているものかもしれない
不意に「昭和万葉集」という書物があったのを思い出した
ところで、令和の元号のきっかけとなった万葉集は、考えてみると不思議な歌集だ
天皇の歌もあれば防人の歌もある
恋愛の歌もあれば、事件を匂わすような歌もある(大津皇子の事件)
また貧窮問答歌といわれる底辺の人間の歌もある
これらの歌を、その当時の日本人がどのくらい参加しうるものだったのか
文字が読めて、書くことも出来て、紙を調達できて
どのように歌が選者に届けられたのかは想像できないが
この歌集が残っていることでその当時の精神とか感情の動きはわかる
歴史の事実の経過はなくて、その当時の人々の感情の動きを知るには
こうした感情の発露をメインとしたものの方が良いだろうと思い
政治の部外者の庶民の歌を集めた「昭和万葉集」を思い出し図書館から借りてきた
(1)は「昭和万葉集」の意図が書かれているものと想像して
(18)は「高度成長の終焉」とあるので、今の時代と被りそうな気がして
とりあえず2冊を借りた
予想は外れて(1)は「昭和時代の幕開け」とされ、いきなり歌が始まって
想像した「昭和万葉集」の意図などはどこにも書いてなかった
それでも目次を見ると、自分が知りたかったその時代の雰囲気とか
庶民の感情の発露は知ることができるようだ
最近は自分が田舎に住んでいるせいもあって、歴史とか政治につながっている感じがしないが
それでも選挙では大きな力を発揮する庶民は、どんな漠然とした感情を持っているのかは気になる
パラパラと拾い読みすると、確かに本家の万葉集よりも今の感覚に近い印象をもつ
怒りも不満も、生活感も、どこか直接的で、、ちょっと余裕がない気がしないでもない
逆に万葉集は、なんとのんびりしたおおらかとも言える歌が多いのか、、と驚く
借りてきたばかりで、まだ大半は読んでいないが
この昭和万葉集で感じられる戦前の雰囲気はどんなものか?
それは今の時代と似通っているのか、、
そうしたものはとても気になる
「昭和万葉集」に掲載されているのは、歌人などが多く
完全に一般庶民ではなさそうだが、それでも政治の部外者が
あの時代どのような気分に支配されていたかはわかる
かなり分厚いが、歌の良し悪しよりも社会の雰囲気を味わうだけだから
拾い読みもできる
図書館の貸出期間はいつもより長くなっているので
気が向いた時にパラパラと読むことにしよう