パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

強いものには弱く、弱いものには強く出るのは、ヤバい!

2023年05月21日 11時35分35秒 | あれこれ考えること

国別対応マニュアルのジョークに気になるものがあった

タイタニック号が沈没しかけた時、船長は乗客たちに
速やかに船から海に飛び込むように指示しなければならなかった
ただし、タイタニック号のデッキは高く、下が海とはいえ高さは
ビルの5階くらいある
この時の国別の指示が以下の通りだ

アメリカ人には
「もしもあなたが飛び込めば、あなたは英雄として称えられるでしょう」
イギリス人には
「あなたがもし紳士ならば、迷うことなく飛び込みはずですよ」
ドイツ人には
「昨夜、お国の法律で飛び込むことが決まりました」
イタリア人には
「海面には綺麗な女性がたくさん浮かんでいますよ」
フランス人には
「絶対に飛び込まないでくださいね」
日本人には
「みなさん飛び込んでいますよ」

笑えないジョークだ
自己の判断より世間の動向を気にする日本人の姿が浮かんでくる
このジョークが紹介されているのが

森達也氏著の「集団に流されず、個人として生きるには」
先週の中日新聞書評欄で紹介された本だ

日本に限らず自己責任を伴う個人の判断は意外に難しい現実が
フロムの「自由からの逃走」とかルボンの「群衆心理」を
あげて紹介されている
(フロムの読み方として自分は間違っていなかった!)

ここでは集団の判断がそもそも正しいか?
という問が過去の例をあげて提起をされている

集団はある条件下ではとんでもない決断をしうる(集団思考)
その条件下とは、
1.その集団が結束していること
2.集団の下部からの意見が通りにくいこと
3.集団が不安や恐怖などの刺激の多い状況に直面していること

日本は長引けば絶対に連合国に勝てないとの冷静な分析がありながら
欧米との戦争に踏み切った判断は、このような条件下で行われたものと思われる

個人は覚悟を持って判断するのは、その孤独と責任の重さに
耐えられなくて次のような選択をしがちとしている(フロムの分析)

自己よりも権威のある者へ絶対的に服従する
自己より弱い者や異物に対しては強く攻撃する

この本の前半部分はこうした分析で
後半部分はメディア絡みのあるべき姿とか注意すべき点が
著者の経験を踏まえて紹介されている
これらを読むと、現在のメディアの世界には不安を覚えてしまう
(メディアだけでなく、SNSでデマやフェイクニュースがはびこる世界も)

この本は一気読みできる
しかし、読み飛ばしてはいけない本と言える

上にあげた分析などは、現在の社会そのもののような気がする
(そこにちょいと恐怖を覚える)
そう感じない人はこの本を手にしないだろう
感じる人は必然のように手にすると思われる

本は一度目はとりあえず素早く読んで
次にポイントを読み返すのが良いかもしれない
二度目は、一回目の内容を案外覚えているものだ!
と実感するからで、最近はこの手を使っている

ということで、日曜日の午前は本の紹介!


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