昨日の中日新聞の文化欄にこんなのがあった
ベルンハルト・シュリンクの「朗読者」が原作の映画で「愛を読むひと」の紹介だ
映画のタイトルはイメージ的にナヨナヨとしたタイトルで
もし本もこのタイトルならきっと読まなかたっと思うが
シンプルな「朗読者」は想像力を刺激し本好きの心を掴み、図書館から借りて読んだ
この小説はこの十年くらいの間で読んだ小説の中で、極めて深く心動かされた作品だった
内容は新聞に書かれている通りで、若い少年(坊や)がバスの車掌さんを務める女性と知り合って
甘い思い出となる経験を重ねる
彼女はことを終えた後、ベッドで少年に本を読んでもらうことを求める
彼は朗読者となっていろんな小説を読みきかせる
女性は仕事上のキャリアアップできるまでになったが
ある日何故か急に疾走してしまう
少年との関わりはそこで途切れてしまう
青年になった(法律を学んでいる)彼が彼女を見かけたのは
ナチスの犯罪を裁く法廷だった
彼女はユダヤ人を無情に死に至らしめた被告人として裁かれていた
そうこうするうちに、彼は昔、彼女が本を読んでほしいと言い
自分が朗読者の役を行ったのは、彼女が字を読めかったからだと気づく
文字が読めないからナチスの命令も言われたまま実行してしまう彼女
だが自らを護るために文字が読めないことを明らかにしない
それは彼女のプライドの示し方だった
牢屋に入っている彼女に「坊や」は、文字を教えるべく努力する
「坊や」は隠したがった秘密を知ってしまった
でも他の人はそれを知らない
そしてある日彼女は自ら命を断つ
それは少なくとも一人は自分を理解してくれた人のいることに
満足しての決断だった
今でもこの部分を思い出すと感情が高ぶってしまう
話は飛ぶが、この映画(小説)がより印象的になったのは、あの西部邁さんが
この女性は「ロマ」の人だったのだろうと想像したのをYoutubeで見たからだ
ロマは遊牧民の人々、ジプシーみたいな人たちで、識字率はけっして高くないそうだ
つまりはこの作品は、単にナチスの起こした悪事の被害者だっただけでなく
ヨーロッパ社会の歪も問題提起しているとしていた
この小説は結末が悲しだけに、もう一度読む気にはなれない
でも深いところで、ずっと何かが残っている
この十年くらいの中で、心に痛みを残している作品はオルハン・パムクの「雪」もそうだ
大半のエピソードは忘れてしまったが、とにかく心に刻まれたショックは
簡単に忘れられるものではなかった
物語は史実の羅列とか、倫理的・道徳的ばかりでは達し得ない世界があると
紫式部は源氏物語の「蛍」で持論を述べている
確かに、そうかも知れない、、とこれらの作品を思い出すと思ってしまう