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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

F-2支援戦闘機の最新 岐阜基地航空祭2008で公開された装備から

2008-12-03 18:28:17 | 航空自衛隊 装備名鑑

■日本独自の装備に対応

 岐阜基地航空祭2008、詳報が掲載できるのは当分先の話であるので、今回は先行して、F-2支援戦闘機に関する展示の詳細を紹介したい。

Img_9801  F-2支援戦闘機は、日米共同開発により導入された航空機で、対艦ミサイル四発を搭載し、航空優勢の競合地域において洋上阻止にあたる航空機として開発された。対艦ミサイル四発を搭載し任務に当たる機体は当時としてはトーネード攻撃機やバッカーニア艦攻など数限られたものであり、国産か日米共同開発以外には、この任務に充てることができる機体を入手することは難しかった。当時の政治醸成では、国産も難しく、日米共同開発を行うに至った次第。

Img_9787_1  火器管制装置や操縦システムに関するソースコードを日本が持っている共同開発機であるだけに、日本がその運用上必要な改修を必要に応じて行うことができ、単発機であり機体が小型である事から搭載できるレーダーに限界があるという点や、物理的に搭載できる装備にも上限があるという将来発展性の天井がある事から、当初130機の導入計画は試作機を含め約90機に下方修正され今日に至る。

Img_9807_1  しかし、ソースコードの供与が不可能で、アップデート費用だけで支援戦闘機新規調達に匹敵するという極超高価なF-22や同じく供与が怪しく実用化も遠そうなF-35、段階発展計画により相応の支出を順次強いられそうなタイフーンなどをF-Xとして導入するよりは、ロッキードマーティンとのF-2共同生産を継続しF-4EJ改の後継にもF-2を充てては、と思ったりする次第。

Img_9816  F-2は、現段階でもっとも日本のF-Xとしては向いている機体なのでは、と考えたりする。利点はなによりも、日本が開発に参加していることから、日本が独自に開発した各種ミサイルや誘導装備、将来的にはより強力なレーダーや電子戦システムの搭載が可能ということ。F-15アドバンスイーグルやF/A-18EといったF-Xの競合機に対して、この一点では確実に優れているともいえる。

Img_9811  航空自衛隊岐阜基地航空祭の会場は、最新装備の運用試験を実施し、技術的にF-2支援戦闘機を発揮し得る最高水準の性能を維持させるための技術面での最前線だ。写真手前に映っている矢のようなミサイルはそういった装備のひとつ、航空自衛隊が保有する最新鋭の空対空ミサイル、AAM-5だ。

Img_9712  AAM-5,制式名称は04式空対空誘導弾といい、国産のAAM-3,制式名称90式空対空誘導弾の後継として開発されたもので、赤外線誘導方式の短射程ミサイルだ。航空戦において、急激かつ高い機動により短射程ミサイルを回避する航空機に対処するべく開発されたものである。

Img_9727  誘導は、動翼による従来のものに加え、バーナーそのものの可動により機動するスラストベクターコントロール(推力偏向制御)方式を採用しており、これまででは考えられないほどの機動性を発揮、標的が急激な回避行動を行ったとしても追従し、命中、無力化する。全長3105㍉、重量は95kg。

Img_9735  AIM-7F/Mスパロー空対空ミサイル。誘導はセミアクティヴレーダー誘導方式で、母機からのレーダー照射の反射に向かって飛行、命中する。命中まで母機はレーダー照射による誘導を行い必要があり、この間に反撃される可能性もある。この欠点に対応するべくミサイル本体からレーダー照射を行うアクティヴレーダー誘導方式の99式空対空誘導弾AAM-4,米国製AIM-120AMRAAMなどが航空自衛隊に装備されており、F-15に続き、F-2へも搭載試験が進められている。

Img_9760  93式空対艦誘導弾、通称ASM-2.射程150kmのミサイルで、慣性誘導装置に導かれターボジェットエンジンにより亜音速で飛翔、電波高度計を内蔵し海上を超低空で飛行、目標に接近すると赤外線画像により目標を捕捉、突入し撃破する。高度なミサイルであるが、現在は後継としてさらに進んだ超音速対艦ミサイルXASM-3が開発中である。

Img_9756  91式爆弾用誘導装置(GCS-1)を搭載した500ポンド通常爆弾。洋上の艦船から放出される赤外線を検出・判定し後部安定翼により誘導、命中する装備。フォークランド紛争でもエクゾセASMはロケットモーターや安定翼が抵抗となってしまい、大型水上戦闘艦などに対しては威力に限界がある。他方、爆弾は艦内奥深くに浸入する。

Img_9754  爆弾の利点は、対艦ミサイルの威力では、上部構造物に破滅的な被害を及ぼし、戦闘能力を喪失させる程度であり、炎上漂流する艦船に止めをさすのが、この誘導爆弾。もちろん、単体での運用を行うことも可能。レーザー誘導爆弾などと異なり、投下後の誘導が不要という利点があるが、他方、赤外線が混在する地上目標に対しては誘導不可能(もしかして、ASM-2みたく赤外線画像誘導に改良すると、対地誘導も可能になるのかな)。

Img_9809  外装型赤外線前方赤外線監視装置J/AAQ-2が搭載されている。前方赤外線監視装置(FLIR:Forward Looking Infrared)とは、赤外線により電波を放出せずとも遠距離広範囲の情報を得ることができる装置で、熱画像をコックピットに表示させる装備だ。夜間や悪天候時、電子戦状況下においても任務を遂行できるものだ。

Img_9810  J/AAQ-2は、1996年から開発を開始し2004年に管制した装備だ。三沢基地の米空軍が運用するF-16戦闘機にもLANTIRNとして同種のものが装備されており、1991年の湾岸戦争では夜間低空侵攻航法や航空攻撃の実現に大きく寄与した装備だ。J/AAQ-2は先端の球形ターレットを使用時に回転させ、使用しない状況ではセンサー保護のために写真のように後方に回転格納される。

Img_9765  GBU-38B/B、JDAM。米軍が2001年のアフガン空爆や2003年のイラク戦争で多数運用したGPS誘導爆弾。JDAMとはJoint Direct Attack Munitionの略で、入力されたGPS座標に対して安定翼を操作し精密に落下、目標に突入する。従来の爆弾に安定翼や誘導装置を取り付けるだけで容易に精密誘導爆弾に改修することができ、誘導爆弾としては非常に安価な装備ということで知られる。

Img_9751  超高高度から投射、即座に任務に対応することが可能で、イラク、アフガンでは常時上空に待機するB-52などから地上誘導に従いJDAMを投下、RMA時代の近接航空支援として注目された。対地攻撃において精密誘導兵器は周囲への付随被害を局限することができる利点があるが、他方、GPS誘導である事から移動目標にた対応できない点、イラクやアフガンでは誘導する地上要員が誤ってGPSの自己位置を入力してしまい、誤爆に繋がるという悲劇も起きている。

Img_9792  F-2に搭載されているF110-IHI-129エンジン。このエンジンは、最大出力が14300kgということで、開発当時、F-2がこのエンジンを搭載するということで各国から注目された。2003年にアラブ首長国連邦が発注したF-16Eブロック60が搭載しているF110-GE-132が登場するまでは、この種のエンジンとしては最高のエンジンであった。他方で、こうしたエンジンやこれまでに掲載した外装装備の今後の進展は、F-2の将来可能性を示しているようにも感じる次第。

HARUNA

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