■阪神大震災の鎮魂を願い
今年も神戸ルミナリエが開催された。毎日、二十万人以上が訪れる神戸、冬の風物詩だ。今回は、神戸ルミナリエの美しい写真を掲載したい。
神戸ルミナリエとは、阪神大震災による犠牲者の鎮魂を願った行事である。そのはじまりは、阪神大震災の爪痕がまだ濃い1995年12月に初めて開催された。100万都市を襲った直下型地震による災厄は、第二次大戦における神戸空襲以来のもので、瓦礫からの復興への希望と勇気を与えたのが、この神戸ルミナリエ。
電飾、これをイタリア語に改めるとルミナリエとなるのだが、この“作品”は、イタリア在住の芸術家ヴァレリオ・フェスティと、神戸在住のアートプロデューサー今岡寛和による光の彫刻、という位置づけとなっている。写真には信号機が写っているが、この光の彫刻の壮大さを語っているようだ。
神戸ルミナリエは、毎年テーマがあり、今年の神戸ルミナリエのテーマは“光のインフィニート”。インフィニートとは、イタリア語で無限、という意味を示すもので、光を神戸の復興に喩えているとのこと。発せられた光は、消えることなく無限にそして永遠に進み続ける、それを神戸に喩えた、ということか。
神戸ルミナリエは、会場に設置された募金箱への募金と神戸市内の企業の支援により成り立っている。積立金のようなものはなく、毎年開催するとともに募金が集まらなければ、次の年は、ということも考えられるため、百円募金というものを呼びかけている。清水寺や高台寺の夜間特別拝観を考えて、当方は“相場”を投じた。
2007年度の資金について、企業協賛金は企業154社から2790万円、補助金として神戸市から1300万円、兵庫県から250万円。募金など1180万円、そしてオフィシャルグッズによる収益が270万円で、合計5780万円。作品製作費が2310万円、会場設営費が460万円、警備費が1330万円、電力費が30万円でその他の支出を合わせ、出費は5550万円とのこと。
阪神大震災の犠牲者、そして震災孤児や経済復興など、大きな爪痕を残し、そのすべてが復興したわけではない。他方で、震災以外にも伝染病など、これから考えうる災厄は多々あり、これらへの備えが不十分であれば、再び三度と社会は損害を被る、ということは常に考えておかなければならない。
特に、阪神大震災の百倍近い犠牲者が見込まれている新型インフルエンザ対策などは、もう少し前進した準備は出来ないものなのか、と考えさせられるものもあり、当該期間は極力外出を控え、二週間分の食料と水を備蓄、という、中世のペスト対策とあまり変わらないような対策が提示されているのは、逆に不安だ。
なるほど、社会に及ぼす影響は、震災であれ伝染病であれ、大きなものがあるのだが、そもそも、社会を形成できるというのが人の強みであるのに、自助努力を超えた問題に対しても、社会で結束した対処というものを考えられていないというのが現状か。荘厳な光の彫刻を見上げつつ、ふとそんなことを思った次第。
さて、神戸ルミナリエについて。入場は無料であるば、募金箱が設置されている。来場者は、平日が晴天で二十万から二十五万、雨天で二十万弱、週末の入場者は四十万人前後、となっている。祇園祭の宵山よりも少ないが、それでも地方都市ひとつ分だ。昨日12月11日の入場者は実行委員会HPによれば“239,000名”、ただし時間さえずらせば、そこまで混雑は、いやしているか。
ルミナリエ会場へ一番近いのはJRの場合は元町駅から徒歩である。JRは、京都から芦屋まで40分で結ぶ新快速を毎時四本運行している。新快速に運行されているのは223系、乗り心地のいいクロスシート3扉車だ。ただ、運賃では、特急毎時六本、運賃が600円とかなり割安な阪急がお勧め。
ただし、元町駅に新快速は停車しないので、隣の三ノ宮駅でホームの反対側に停車している321系普通電車に乗り換える。ルミナリエ会場へは元町が近いのだが、ルミナリエ会場の出口からは三ノ宮駅が一番近い、しかし、元町駅からの切符では三ノ宮駅から乗車することは出来ないので注意が必要。
元町駅から、兵庫県警の民間ボランティアの誘導員、そしてルミナリエ開催委員会の予算による民間警備会社の警備員さんが誘導してくれる。会場までは、柵で囲まれた誘導路が設置されており、途中で迷う心配はなく、この誘導路によって多数の観覧者が同時に会場へ殺到することを防いでいる。
ルミナリエ会場まで、あと30分、とある。実際はここまで遠いわけではなく、元町駅からルミナリエが見えるまでが徒歩30分といったところ。ちなみに、ゆっくり歩けばその分所要時間は伸びるのだが、途中で気分が悪くなった場合には、途中から出ることができるように非常口が設置されている(ただし途中退出したばあい、観覧には最初から誘導路を進む必要がある)。
神戸ルミナリエの開催は12月15日まで。写真の掲示によれば、点灯時間は、月曜日から木曜日までは1800~2130時、金曜日が1800~2200時、土曜日が1730~2200、日曜日が1730~2130時という予定となっており、交通規制はそれに先んじて実施される、とのことだ。
HARUNA
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