■クリスマス休暇にて横須賀へ帰港
横須賀アメリカ海軍施設に配置されているイージス艦は9隻、Lassen・Shiloh・John S. McCain・CurtisWilbur・Fitzgerald・McCampbell・Cowpens・Stethem・Mustinクリスマスということからか、珍しいことに全てが横須賀に帰港していたため、今回、その写真を掲載したい。
写真の撮影は、横須賀軍港めぐり船上より行った。アメリカ海軍横須賀海軍施設は、アメリカ海軍が海外に有する最大の拠点として知られ、原子力空母ジョージ・ワシントンを中心とする強力な打撃能力を有する水上戦闘艦部隊が展開している。横須賀基地に前方展開する米海軍の水上戦闘艦は、目下空母を除けばすべてイージスシステムを搭載したイージス艦であるのは、ひとつの特筆するべき点といえる。
DDG-82 Lassen(ラーセン)。アーレイバーク級ミサイル駆逐艦の32番艦で、2005年9月に横須賀に配備された。ヘリコプター2機の運用能力を有するフライトⅡA。満載排水量は9217㌧、戦闘情報処理システムなどを新型に改める一方、搭載艇の複合艇化や、対艦ミサイル発射筒、20㍉CIWSなどを廃止しコスト縮減に努力している。次期水上戦闘艦のコスト高騰により、整備計画は見直され、代えて経済性の高いフライトⅡAは更に増強される予定である。
CG-67 Shiloh(シャイロー)。満載排水量9516㌧のミサイル巡洋艦で、現在、整備のためにドックに入っている。1992年に就役したタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の21番艦で、弾道ミサイル防衛(MD)仕様として実戦配備された米海軍最初の実戦配備艦。長射程で弾道弾迎撃能力を有するSM-3ミサイル搭載に対応するべくMk41垂直発射器(VLS)やイージスシステムに改修が加えられており2006年8月29日に横須賀に配備された。アメリカの日本重視の姿勢が垣間見える。背景には、空母ジョージ・ワシントンの艦橋が垣間見える。
DDG-56 John S. McCain一番左の艦(ジョンSマッケーン)、1994年に就役、1997年には横須賀に配備された。艦名は先の大統領選にて惜しくも落選したマケイン候補の祖父の名前である。アーレイバーク級ミサイル駆逐艦の六番艦で、最初に建造された21隻のフライトⅠの一隻。満載排水量8422㌧。アーレイバーク級すべてに共通するスペックとして、イージスシステムを搭載、105000馬力の出力を有するガスタービン推進艦というのがある。本艦も、改造により弾道ミサイル対処能力を付与されている。このBMD対応型イージス艦は、米海軍に18隻あるが、このうち5隻が横須賀に配備されている。
DDG-54 CurtisWilbur(カーティスウィルバー)。アーレイバーク級の四番艦で、1994年に就役、横須賀には1996年に配備されている。BMD対応型に改修されたイージス艦の一隻。本級のイージスシステムは、巡洋艦に搭載されているフェーズド・アレイ・レーダーよりも軽量なSPY-1Dであり、ミサイルを誘導するイルミネーターSPG-62も巡洋艦の4基に対して3基となっている。
DDG-62 Fitzgerald右側(フィッツジェラルド)。1995年に就役したアーレイバーク級の12番艦で、フライトⅠの一隻。横須賀に配備されたのは2004年で、こちらもBMD対応型のイージス艦。ヘリコプター格納庫の有無による艦尾の形状の相違が比較できる写真だ。一隻の例外を除き、横須賀基地の原子力空母とイージス艦8隻には、共同交戦能力に対応するべくCEC(Cooperative Engagement Capability)用のAN/USG-2端末が搭載されている。この端末により艦隊はデータを共有し、すべてのイージス艦や航空機が得た情報を以て任務に当たることが可能だ。
DDG-85 McCampbell(マッキャンベル)。左から二番目。フライトⅡAの一隻で、アーレイバーク級の35番艦として2002年に就役した。BMD対応型ではないが、AN/USG-2端末を搭載した共同交戦能力対応型のイージス艦である。フライトⅡAは、2番艦以降、搭載する5インチ砲を射程145kmの誘導砲弾が運用可能なMk45Mod4としている。それにしても、四隻のイージス艦が横に並んだ姿は迫力だ。
CG-63 Cowpens(カウペンス)、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の17番艦として1991年に就役し2000年から横須賀に配備されている。CEC対応端末や、BMD対応型の改修を受けていない一隻、ただし、将来的には改修されるのだろう。満載排水量は9957㌧で、VLSは巡洋艦という大きな船体を活かし61セルのものが前後に二基、合計122セルが搭載されている。
DDG-63 Stethem(ステザム)。アーレイバーク級の13番艦で、フライトⅠの一隻。BMD対応型への改修を受けている。BMD対処任務には、イージスシステムのレーダーの能力を最大限用いるが、イージス艦が従来想定していた航空攻撃や対艦・巡航ミサイルに対する防御には、360°に警戒を廻らすが、BMD対処においては、より長距離の目標を探知するべく、走査範囲を絞る為、周辺の経空脅威に対する警戒は手薄となる。この為、BMD対応中のイージス艦は、ほかのイージス艦とのCECにより、情報を共有し、対処することとなる。現代戦では情報共有はこのように重要なのだ。
DDG-89 Mustin(マスティン)。2003年に就役したアーレイバーク級の39番艦で、横須賀配備は2006年。BMD対応型ではないが、CEC対応の端末を搭載している。SPY-1Dレーダーは、対空目標に対しては460km以上。超低空及び対水上目標に対しては120kmであり、200以上の目標を同時に探知でき、BMD対応型は弾道ミサイルに対しては1000km先の目標を探知できる。これら9隻のイージス艦は、艦隊の盾であり、第七艦隊の矛でもあるのだ。
HARUNA
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