北大路機関

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日米同盟を考える: 十二月八日 67年目の真珠湾

2008-12-08 23:21:20 | 国際・政治

■両雄の同盟関係

 十二月八日、日本がアメリカ太平洋艦隊の根拠地である真珠湾を、空母六隻を中心とした機動部隊により奇襲攻撃を行い、同時に南方における英蘭植民地に対して武力攻撃を開始、第二次世界大戦が太平洋方面へ拡大した。

Img_9297  日本は第二次世界大戦において、特に太平洋正面において激戦を繰り広げた。航空部隊の拠点となる島々を巡り、日本と連合国の主としてアメリカ海軍は水上艦と島嶼部守備隊、両用戦部隊が激しく衝突、1941年から1945年まで、砲声がいたるところから発せられた。航空母艦といえば、今日では通常戦力(もちろん、付随的に核戦力を有するものもある)において戦略拠点として、また中枢機能を有するものであるが、航空母艦同士の海戦は、珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦、南太平洋海戦、マリアナ沖海戦、レイテ沖海戦など、世界海戦史上を俯瞰しても数少ないものであるのだが、このすべてが日米機動部隊の衝突であった、ということを踏まえると、いかにこの太平洋における戦いが熾烈を極めたかが垣間見える。

Img_9291  第二次世界大戦の結果は、なによりも、国民生活が戦争前から決して豊かでない極東の島国が資源を求めて全世界を相手に戦争を行ったのであり、加えて日露戦争のような終戦を見据えた明確な戦争計画が無いまま戦線は拡大、伸びきった補給網は維持出来ず、同時に求めた資源さえも本国に安全に輸送する体系の構築も怠っていたわけで、加えて支那方面での人的供出とも両立し、太平洋での任務を遂行しようというのだから、勝機はもとより考えにくい。結果、当然にして当然の結果に落ち着いたわけであるが、その雌雄を競った両国が敗戦の数年後に同盟条約を締結するという結果になった次第。

 太平洋を挟んだ同盟条約は、主として日本列島に太平洋地域における共産主義封じ込めの拠点としての機能、地域安定の根拠としての役割を期待するとともに、アメリカは経済的発展を行う上での軍事的政治的機能を補完するという相互関係を構築した。特に経済復興を図り、自由主義に依拠した政治体制を日本が維持するためにはほかに選択肢がなかった、ということもあげられる。GATTなど戦後国際経済の体系や、世銀・IMFなど国際金融の体系の構築をみてゆくと第二次世界大戦後の主としてアメリカの目的は自由主義に基づく自由貿易体系の確立であるということができる。結果的に、計画経済と閉鎖市場という性格を有する社会主義圏とは相容れない性格の国際秩序を構築しており、結果的に東西冷戦が生じることとなった。

 1960年代後半には、GNPで西ドイツを抜き世界第二位の経済力を有するに至った日本は、1968年のドル危機に対していち早く支持を表明し金プール協定を発行、ドルを買い支えた。その後はプラザ合意まで、日本円は一貫してドル体制の維持に協力し、国際通貨体制の安定を図るとともに、国内市場を開拓し、アメリカ国内産業との共存共栄を図る努力を続けてきた。90年代前半には、アメリカ国内では、ソ連に続く脅威の対象として日本を挙げる声もあったものの、安定した政治体制と高度な労働力に依拠した国土に得がたい戦略拠点となる基地を提供してきた、という点は日米間系の重要性をなにより示すものである。

 アメリカがいかに今後、例えば中国との接近を図ろうとも、戦略的協同関係以上に進むことは難しい。国際公序の理解に齟齬がある二つの国、双方が覇権国になろうとする限り、不可能である。第一に一方が核保有国である限り、異なる分野を含めた戦略的互恵関係の構築は難しく、米中が軍事同盟を締結するほどには、残念ながら信頼醸成の下地は成立していない。続いて国際金融面での協力でも、一方が変動相場制を採用していないという状態では相互補完の関係は成り立たない。結果的に、見渡せる限りの将来を見た限り、パートナーシップという域を出ることはないのではないか。こうした観点から、日米同盟はこののち、どのような方向にすすむのか、ということを再検討してみる価値はあるのではないか、という次第。

 特に、アメリカの国力は無限ではないということが改めて認識され、加えて日本の経済成長もこれまで以上には期待することができなくなった。他方で、安全保障環境は多様化しており、脅威の想定も柔軟に捉えなければならない時代ではある。これを踏まえた上で、次期戦闘機選定、航空母艦建造、国際任務、という三点から、以後検討を進めてゆきたい。

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コメント (2)
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