北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新防衛大綱へ陸上自衛隊1万3000名増員を検討、16万8000名へ

2010-09-20 23:47:38 | 国際・政治

◆現行大綱の陸上自衛隊定員は15万5000名

 新防衛大綱に陸上自衛官の増員が盛り込まれる方向で調整されているとのことです。人員不足が叫ばれる現状を鑑みれば必要な提案です。

Img_0221  自衛隊の人員不足ですが、一部の護衛艦では三交代二十四時間の態勢を敷くべきところを二交代で二十四時間の態勢を取っており、要員の稼働艦毎の融通も行われているとのことです。これでは艦としての訓練度合に上限が出てきますし、二交代としるのは陸上勤務ではなく洋上任務において事故の危険性を誘発します。

Img_0643  しかし、訓練事故の責任は本来無理な人員削減を強いる決定を行った政府が行うべきなのですが政府は責任逃れについては素晴らしい働きを行います。陸上自衛隊では小隊長に陸曹が充てられている小隊もあるほどで、当直幹部に陸曹が充てられるという状況も生じています。こうしたなかで、陸幕が大きな決断として意見具申を行ったようです。

Img_1527  即ち、年末に画定される防衛大綱に対して陸上自衛官の増員を盛り込むよう陸上幕僚監部が調整を行っているとのことなのですが、この増員が認められるのならば、海上自衛隊としても人員や艦艇数で苦労がありますし、航空自衛隊としても航空機整備費用を含め弾道ミサイル防衛に予算を捻出され空洞化した部分の再調整を要望する意見も大綱に盛り込まれるやもしれません。

Img_0492  防衛省、陸自1万3千人増検討 新防衛大綱で調整難航も・・・ 防衛省が流動化する東アジアの安全保障情勢や国際テロ、災害への対処能力を向上させるとして、陸上自衛隊の定員を現在の15万5千人から16万8千人へ1万3千人増やす方向で調整していることが分かった。複数の防衛省、自衛隊関係者が19日、明らかにした。

Img_0648  年末に策定する新たな「防衛計画の大綱」に盛り込みたい考えで、来年度から増員すれば1972年度以来、38年ぶりの規模拡大となる。 定員増は陸上幕僚監部の強い意向を踏まえ、防衛省内局で検討。陸幕は日本近海での中国海軍の動きの活発化に伴い、中国沿岸から距離的に近い南西諸島での島しょ防衛強化が特に必要と説明。

Img_0757  天然ガスなど東シナ海の資源獲得をめぐる日中摩擦も生じており、政府、与党の理解が得やすいと判断したようだ。 具体的には、中国が領有権を主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)への対応を視野に、防衛態勢が手薄とされる同県の宮古島以西への部隊配備を検討。沖縄本島の陸自部隊は現在約2千人だが、これを2020年までに南西諸島を含めて2万人規模とする構想も浮上しているhttp://www.47news.jp/CN/201009/CN2010091901000470.html

Img_6511  人員不足ですが財政難も重なっている訳で、日本の防衛に責任が持てるのか、という事と究極のはかりにかける必要があるでしょう。危機管理や自国の防衛がままならない国では諸外国との交易や投資関係を結ぶ事は出来ませんし、抑止力が破たんした場合に専守防衛は即ち海戦がそのまま本土決戦になる訳ですから国土が焦土とならないように防衛力を整備しなければ復興までの期間も違ってきます。防衛力は最低限必要で、現状が中僕の軍拡により必要数が増大した事で、その最低限を下回っている、という状況。

Img_1673  ううむ、人員を16万8000名とする場合、即応予備自衛官制度はどうなるのかということと、戦車定数や特科火砲定数はどのように反映されるのか、という事が気になります。しかしそれ以上に機になるのは南西諸島に2万名の部隊を配置する、という計画です。陸海空を併せて2万名、というのならば、例えば南西諸島に二個航空団を配置して新しく沖縄地方隊と基地を建設するというのならば別なのですが、陸上要員だけ2万、というのはナンセンスです。

Img_2141  2万名、といいますと一個師団と二個旅団を合わせた規模、西部方面隊は人員規模で北部方面隊に匹敵する事となり、基幹部隊数では北部方面隊を抜いて最大の方面隊となります。しかし、那覇の第15旅団を第15師団に拡充して、南西諸島の奄美諸島と先島諸島に第16旅団、第17旅団を仮に新編するとして、訓練はどうするのでしょうか、それだけの人員の戦闘能力を維持する本土との補給体系をどうするのでしょうか。

Img_2245  南西諸島の防衛に不可欠である装備は空中機動部隊による即応能力を沖縄本島に集約し、同時に九州の重装備部隊を当該地域に緊急展開させることのできる輸送能力であり、これを支える航空優勢と制海権の確保に必要な部隊ではないか、と考えます。無論、那覇の第15旅団は、第12旅団並に四個普通科連隊規模に拡充して、宮古島などには対馬警備隊に範を執る中隊規模の部隊を配置、広く薄く沿岸監視隊も置くべきですが、しかし離島に多数の部隊を置くのには反対します。

Img_3631  この点で、多数の人員、2万名規模の部隊を配置する場合、仮に島嶼部に対して地下構造物と併せた永久築城による要塞化をするのならば、台湾も行っていますし賛成なのですが、要塞守備隊の訓練体系というものは教範として未知数でもあり、やはり厳しいでしょうかね。空中機動部隊を沖縄本島におく方がまともです。そしてそのために必要な航空機を、という意味も踏まえて、という意味です。

Img_6344  離島への重点配備ですが、太平洋戦争で包囲され、増援を受けられない状況に陥った離島守備隊は数万の兵力があったとしてもそれ以上の規模で侵攻され、対処できなかった事例が多々あります。それよりは、沿岸監視に加えて着上陸の際には即座に制海権と航空優勢を確保して補給線を遮断し、弱ったところを対処することが望ましい。

Img_7778  那覇の第15旅団、善通寺の第14旅団、海田市の第13旅団を四個普通科連隊基幹として、戦闘ヘリコプター12機、多用途ヘリコプター20機、輸送ヘリコプター8機、観測ヘリコプター16機を配備、特科隊と機動砲中隊に後方支援部隊を加えた編成として共通化、一方で真駒内の第11旅団、帯広の第5旅団、相馬原の第12旅団を機甲化して編成を統一化、というのが理想形の一つです。

Img_8455  人員の充実は急務ですが、それ以上に充足率というものを高める選択肢が先決なのだろうと思うとともにもう一つは、戦闘ヘリコプターを筆頭にヘリコプターを充実させて緊急即応能力を向上、装甲戦闘車を筆頭に機甲化を促進して戦闘の即決能力を強化する必要があると考えます。ヘリコプター、装甲車、共に防衛大綱では定数が明記されていませんが、こうした部分が防衛の基幹となる訳で、必要な予算を確保することが先決ではないでしょうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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速報:今津駐屯地創立58周年記念行事・今津駐屯地祭2010

2010-09-19 23:26:02 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆快晴に恵まれた今津駐屯地祭

 今津駐屯地祭に行ってきました。写真も整理できていないものですからとりあえず保存した写真での速報です。

Img_8874  今津駐屯地は第3戦車大隊、第10戦車大隊の駐屯する中部方面隊機動打撃部隊の根幹をなす駐屯地ですが、同時に中部方面移動監視隊、中部方面無人偵察機隊が新編され、中部方面情報隊が編成完結、情報収集の中枢としての地位を担いつつあります。写真は今年度から運用開始した無人偵察ヘリコプターで、解説によれば無人観測ヘリコプターとは運用的性能的に別物との事です。

Img_8084  新しく情報科が新設されたことで、情報保全に加えて斥候と威力偵察を中心としていた情報収集体系に、これまで行われていた電子情報収集と沿岸監視能力を包含した部隊を構築出来るに至りました。こうした中で日本海を隔てて北朝鮮と対峙する中部方面隊に方面沿岸監視隊と方面無人偵察機隊が編成され、沿岸防衛の強化に一歩を踏み出したという事です。

Img_8241_1  観閲行進では地上レーダー装置1号改JTPS-P23レーダーが四両、参加しました。2007年から調達が始まり全国の偵察隊にも配備が開始されるこの装備とともに今回は展示されなかったのですが、光学装置の収束に寄り僅かな物体の動きも感知する広域用監視装置千里眼などを中部方面移動監視隊では運用しています。

Img_8343  今津駐屯地の主力と言いますか、メインと言うのは74式戦車です。旧式化していて、将来今後十年ほどで10式戦車に置き換えられるのでしょうけれども、今日なお重要な陸上自衛隊の機動打撃力を構成する装備です。各戦車中隊から小隊規模の戦車が観閲行進に参加、秋の晴れ空に戦車の威容を刻みました。

Img_8259  戦車について、日本ではいろいろな意見があるようですが、少なくとも専守防衛で地上戦と言えば確実に本土決戦となる防衛政策を選択してきた国民を守るためには、普通科部隊を中心に長期間ゆっくりと戦勢を展開するのではなく、機甲部隊による機動打撃力により迅速に敵主力と防御線を崩壊させる素早い展開こそが、国土の戦災による荒廃を防ぎ、人命と財産を守るものと考えます。そういう意味で戦車は重要です。

Img_8791  訓練展示の規模も例年通り実施されました。戦車中隊と装甲車小隊が仮設敵陣地に対して情報収集の上で攻撃し奪取する、という内容です。来場者の規模も例年並み、会場の配置は基本的に昨年と同じなのですが、今年度は例年立ち入ることが出来なかった倉庫側の一部が一般に開放されていました。

HARUNA

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与那国島自衛隊配備構想、陸上自衛隊誘致推進派が町議会で過半数維持

2010-09-18 23:14:56 | 国際・政治

◆尖閣問題急騰を背景に

 俳優の小林桂樹氏が心不全で旅立たれたそうです。新東宝の時代から東宝、そしてドラマまで活躍された方です。謹んでご冥福をお祈りします。さて、本日は南西諸島の話題。

Img_4168 与那国町議選、陸自誘致推進・町長派が過半数維持・・・ 台湾に近接する日本最西端の島、沖縄県・与那国島への陸上自衛隊誘致の是非が争点となった与那国町議選(定数6)は12日投開票され、誘致を推進する町長派が4議席を獲得し改選前に続いて過半数を維持、反対派は2議席だった。 町議選には8人が立候補。誘致派は「人口減に歯止めがかかり、経済活性化につながる。国境の島の守りにも不安がある」と主張。

Img_6507  反対派は「自衛隊が来れば台湾との摩擦を引き起こす。台湾との交流で活性化を図るべき」と訴えた。 防衛省は中国の日本近海での活動活発化などを踏まえ、与那国島など南西諸島への自衛隊配備へ向けた調査費3000万円を2011年度の政府予算に計上するよう要求している。(2010年9月13日  読売新聞)http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100913-OYS1T00450.htm

Img_7528  少々古い記事の引用ですが、ううむ、地元の理解を得られた、というのでしたら旧気象庁官舎等を利用して比較的早い時期に施設を建設して分屯地を前倒しで配置してしまってはどうか、と思うのですがね。人員の捻出には苦労がたまるでしょうけれども、西部方面隊から国際平和維持活動支援の部隊編成という要領で送れば、本格的に沿岸監視隊が置かれるまで、繋ぎになるようにも思う次第です。

Img_6245 本来国防政策は国家の必要な視点から、つまりマクロ的な視野から画定して実施するべきものなのですが、南西諸島への自衛隊配備について、その該当地域の住民の方からもその必要性について、些か結論のみの同意、という印象はあるものの賛同が得られた、という事は幸いでした、勇気づけられますね。現在考えられているのは沿岸監視隊規模の情報関係の部隊を想定しているようですが、拠点があれば有事の際の即応性も高まります。

Img_2774  南西諸島は、中台関係の緊張がある限り重要性に代わりありません。現在日本の主権が及んでいますが、一方が領有化し、この地域に航空基地を建設した場合に台湾海峡の軍事バランスが大きく変動、台湾有事、という状況に直結するものです。台湾が確保すれば中国は台北への威力行使が困難となり台湾有事は遠のきますが、この日本に連動して台湾排除にかかるでしょう。中国が確保すれば台湾北方空域の憂慮が無くなり、数年内に有事、となるでしょう。

Img_5389  この地域における重要性を考えた場合、可能であれば地対艦ミサイル連隊を新編して配置し、88式地対艦誘導弾と、これを防護する81式短距離地対空誘導弾を展開させるのが理想、だとは思うのですが予算的には難しいでしょうか。沿岸監視隊以上の部隊についても考えなければならない事にもなるでしょう。

Img_6340  日中関係については今なお楽観視している向きも、あるのかもしれませんが、冷戦時代の最前線であった北海道とならび、21世紀の最前線は南西諸島となります。正直、第二次大戦の激戦地沖縄がこうなる事は避けたかったのですが、防衛費よりも福祉を重視し、外交では長らく対中融和政策を続けたツケが回ってきました。このことについては率直に反省するべきでしょう。

HARUNA

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平成二十二年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報3

2010-09-17 22:51:37 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 秋です!、ようやく寝苦しい時期が終わり、昼間も空調に頼らずなんとかなる気がしてきました。そんななかで今週末の行事を紹介。首都圏で二つ、東北で航空祭が二つ、北海道には艦艇寄港、関西と山陽で駐屯地祭、九州で艦船寄港と駐屯地祭があります。

Img_6605  今週末は航空関連行事が多いのですが、その頂点と言うべき行事は三沢基地航空祭でしょう。青森県三沢基地には航空自衛隊第三航空団のF2二個飛行隊がASMを揃え脅威に備えておりE-2C一個飛行隊も掩体に収容され、北方からの脅威に備えるとともに北部航空方面隊司令部が置かれている重要基地です。

Img_8666  加えて米空軍第36戦闘航空団のF16が北方内陸部を槍のように睨んでいる日米共同運用の基地です。昨年はB-52爆撃機が飛来し驚かれたようですが、今年はA10が対地攻撃展示を行うようです。航空管制は米空軍が実施しているので三沢霧は自衛隊基地であると同時に米軍基地でもある訳ですね。

Img_6988  八戸航空基地祭、青森にある海上自衛隊の航空基地ですが、こちらも土曜日に航空基地祭が行われます。土曜日に八戸、日曜日に三沢、ということも日程としては不可能ではないでしょう。展開する第2航空群のP-3C哨戒機は流氷観測任務等で知られる航空隊ですが、同時に北方海域の対潜哨戒を任務とする部隊でもあります。

Img_1601  岩国航空基地祭も日曜日に行われます。岩国航空基地には海上自衛隊の第31航空群や第111航空隊が展開している航空基地で米海兵隊岩国航空基地と共用している基地です。ここは海上自衛隊の特殊な航空機が並び、EP-3のような特殊な任務に当たる航空機や救難飛行艇US-1やUS-2,そして掃海用のヘリコプターMH-53,MCH-101等が展開している基地です。海兵隊の岩国フレンドシップデイのような派手さはありませんが、貴重な航空機を見る事が出来る行事です。

Img_0684  陸上自衛隊の駐屯地としては今津駐屯地祭が注目です。滋賀県の湖北は高島市にあるこの駐屯地、74式戦車を運用する第3戦車大隊と第10戦車大隊の6個戦車中隊が駐屯しています。駐屯地の奥の方には市街戦訓練施設が少し見えるのですが、一番の注目は三月に新編された中部方面無人偵察機隊でしょう。運用しているのは無人観測ヘリコプターと違いが分かりにくいのですが、富士総合火力演習で展示された機体と違いを探してみるのも一興かもしれません。

Img_9552  陸上自衛隊航空部隊について、立川駐屯地において立川防災航空祭が行われます。立川駐屯地には第1飛行隊と東部方面航空隊が駐屯しているのですが、ここには東京中心部が全滅した際の政府防災司令中枢予備施設立川広域防災基地があり、この関係でしょうか、警視庁航空隊や東京消防庁航空隊、周辺の警察や消防、自治体の防災ヘリコプターが参加しての防災行事が行われ、大編隊の飛行が見られます。

Img_5463  陸上自衛隊関連では、岡山県岡山市で三軒野駐屯地祭が行われます。三軒野駐屯地には関西補給処三軒野弾薬支所、そして第305施設隊が駐屯している駐屯地です。行った事が無いので写真は違う駐屯地の写真ですが、訓練展示なども行われるとのことで、興味は湧いてきますね。

Img_9419  九州では国分駐屯地祭が行われます。錦江湾を臨む鹿児島県霧島市のこの駐屯地には九州南部を担当する第8師団隷下の第12普通科連隊が駐屯しています。今年は創立55周年にあたり、式典、各党展示、装備品紹介、訓練展示、等が行われるとのことで戦車とヘリコプターも参加するとのことです。

Img_2662  艦艇一般公開では、博多港において海上自衛隊の砕氷艦しらせ、が一般公開されます。ここでお詫び、今週火曜日、舞鶴西港に寄港した、しらせ、ですが一般公開を行っていたのだと東舞鶴駅のタクシー運転手さんに教えてもらいました。西港は基地とは反対側なのですが、平日で一般公開していた、とは気づきませんでした。情報漏れがあって申し訳ないです。

Img_7602  ミサイル艇わかたか、が北海道の根室港で明日と明後日、一般公開されます。写真は同型ですが、この日、今週水曜日ですが舞鶴の北吸桟橋に停泊していました。根室と言うと、京都からは結構距離があるように思うのですが、ミサイル艇の行動範囲と言うのは結構広いのだなあ、と驚かされます。

Img_2008  よこすかみこしパレード、19日に行われる行事で、単なる神輿の巡幸のようにも聞こえてくる行事ではあるのですが、横須賀中央駅前から横須賀中央通りを進み、そして米海軍横須賀施設の方に入っていくという行事で、併せて三笠ゲートから横須賀基地が一般公開されます。参加団体は67団体、日本の神輿が米軍基地のクレメント通りを往く、ちょっと不思議な行事だったりします。航空母艦は帰ってみているのか、ちょっと気になるのですが、これはいった方のお楽しみ、という事で。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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ソマリア沖海賊対処任務、P-3C派遣航空部隊第300回任務飛行を達成!

2010-09-16 23:30:34 | 防衛・安全保障

◆海上護衛任務は海賊増大を受け任務海域拡大

 ソマリア沖アデン湾において跳梁跋扈する海賊に対して、海上自衛隊は現在、護衛艦を中心とした水上部隊を船団護衛に派遣しているのに加え、哨戒機を派遣して上空からの監視活動に当たっています。

Img_7920  現在、P-3C哨戒機による海賊対処航空隊は第四次派遣部隊がジプチを拠点として哨戒任務に当たっていますが、9月5日に任務飛行第300回を達成した、と防衛省が発表しました。船団護衛というかたちで確実な護衛実績を重ねているのが派遣水上艦部隊なのですが、アデン湾を航行する全ての船舶が船団に加わる事が出来ない一方、各国は艦船による哨戒に重点を置いていて、この隙を突いて海賊事案は発生するのです。

Img_7924  こうした状況を抑止するには上空に哨戒機を展開させて、海賊行為を行う可能性のある船舶を未然に発見し、行為に及ぶ前に対処するという事が重要で、艦艇よりも進出速度や哨戒範囲の大きい航空機の重要性が高くなるのですけれども、この種の航空機は取得費用も運用費用も大きく、各国ともに数の余裕はありません。ここで冷戦時代から対潜哨戒に重点を置き、この種の航空機の整備を行ってきた海上自衛隊の能力が期待され、派遣となった訳です。

Img_7934  ジプチを拠点として任務に当たることから、警備には陸上自衛隊の中央即応集団が軽装甲機動車を含め警備に展開していますし、予備部品等の輸送には航空自衛隊も協力しました。そしてジプチ政府の協力により海上自衛隊の整備施設を建設することが実現し、海上自衛隊はアフリカ大陸に航空基地機能を有するに至っています。

Img_7935  一方で海賊事案がアデン湾東方海域にも拡大した事を受けて防衛省は関係機関との調整の上で9月9日にモンスーン期間を除く全ての期間において海上護衛の航路を東方へ100海里延長する事を決定しています。これは派遣水上部隊に対して大きな負担となり、護衛を行う事の出来る回数も一ヶ月間あたりで見た場合減少してしまいます。しかし、護衛航路を出たとたんに海賊の襲撃を受けては目も当てられませんので、難しい決断だった、というべきでしょうか。

HARUNA

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新総裁に菅直人氏を選出した民主党総裁選2010についての一視点 

2010-09-15 22:13:57 | 国際・政治

◆菅内閣は続投へ

 民主党新総裁に菅直人氏が再選されました。当初は小沢一郎氏優位の話もあり、当方も参院選敗北の責任をとるものとばかり思っていたのですが、再選を果たしました。

Img_6090  昨年の観艦式に副総理として観閲官をつとめた菅氏、なんとか内閣総理大臣として本格的に政策を進めてゆくことができるようになりました。しかし、総裁選の最中に円高の進展は政府の無策を見越して進んでおり、景気の悪化により内需拡大の見通しが立たない中、製造業を中心に生き残りをかけて海外脱出、即ち生産拠点の海外移転を模索しています。雇用、雇用、と菅氏は繰り返していたのですが、氏が唱える林業や介護では民主党が必要とする財源を賄えるほどの税収には至りません。素早い円高対策と毅然とした介入を行うことが必要でしょう。日本には数百兆円の埋蔵金があります。

Img_6123 日本という国家の埋蔵金、それは勤勉な国民と優れた社会基盤が生み出す生産能力であり、国民とともに共存する国土、この二つが最大の埋蔵金です。これを理解せずに、あたかも埋没しているものを探すような行動は諦め、景気回復により税収を高める真摯な努力こそがもっとも求められているものだといえます。しかし、景気活性化政策を行わず、ただひたすらに歳出削減を景気の悪化という事態に際しても続けているのでしたらば、それは必然的に経済力の低下をもたらし、結果的に税収がさらに低下する、という悪循環に陥るのですが、この点はもっと認識されてしかるべきでしょう。

Img_9746  尖閣諸島、総裁選で完全に忘れられていたようですが、不法操業を行った中国漁船の拿捕を契機として日中は現在緊張状態に陥っています。南沙諸島では中国軍はヴェトナム領の島にコマンドー部隊を展開させて警備要員を殺害し、ヴェトナム海軍との間で90年代においても海戦を行っていますし、フィリピン領ミスチーフ環礁を米軍のフィリピン撤退後一方的に占領、フィリピン海軍は規模が小さく察知することさえできなかったため未だに紛争状態が続いています。領土問題は妥協すればそれで終わりです。

Img_6436  そして人命と財産が関わるこの事案、内閣総理大臣は国民全ての生命と財産に責任を持つ立場です、権限は逃避することはできるのですが責任だけは絶対に逃避できない、これが政治です。日中関係の悪化という事は出来れば避けたいところですが、領土問題というものが引き合いに出された場合は優先順位が違ってきます。しかし、ここぞという時への気構えとともに、危機が拡大しないように予防外交を展開する、という努力を怠っている現状では、意図せずして政治が戦争を誘発しかねない危険な状況にあるのだ、という事を認識する必要があるのではないでしょうか。

Img_9050  普天間基地移設問題、幸いにして白紙化を目指していた小沢氏は敗れたのですが、どういう工法でいつまでに代替設備を建設するのか、民主党が政権にいる間には妥結しないのではないのか、という危惧さえでていますが、在沖米軍の抑止力はアジア最大の空軍基地である嘉手納と、その航空優勢下で行動する海兵隊により維持されています。沖縄に掛かる軍事的圧力は東西冷戦の時代における北海道のそれに近づいており、一方で沖縄には自衛隊の部隊として一個旅団、一個航空群、一個航空隊のみが駐留しており、レーダーサイトをはじめ多くの設備がありますがかつての北海道の防衛体制と比較すれば充分ではありません。

Img_8937  もともと日米同盟の関係というものはアメリカが構成した自由貿易とドル体制に依拠した戦後秩序の維持が相互互恵となる観点から維持されました。この為にアジアを含めて世界の安定が必要であり、その為にアメリカと日本は協力しているのです。海兵隊は日本が憲法上対処できない朝鮮半島や台湾海峡での緊張に睨みを利かせており、この抑止力をどう考えるのか、ということは日米関係の一つの方向性を示すため、重要です。以上、思いついたものは多々あるのですが、そのなかの主立った三点について感想として提示してみました。

HARUNA

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南西諸島防衛の一考察 航空優勢確保と戦闘空中哨戒への課題

2010-09-14 08:27:24 | 防衛・安全保障

◆無人機との連携が理想

今回のお題は南西諸島防空に無人機を活用する、という話題。尖閣諸島の中国漁船による公務執行妨害事案は、日本国内での事実関係は様々な情報が行き交っています。

Img_6164  中国中央テレビの論調は一貫して不当逮捕という主張を掲げており、その根拠は不明瞭なのですが尖閣諸島は中国領なので日本に執行管轄権がない、という論調も一部あるほか、巡視船が不当に妨害したという、いいかえれば不当に妨害したことで公務執行妨害が捏造であり執行管轄権は認める内容、一方では公海上で不当に拿捕したなど様々な論調があるのですけれども、中国中央テレビのテレビクルーは漁船が係留されている宮古島入りしており、柵越しに海上保安署の拿捕漁船が係留された様子や宮古島警察署前から報道を行っていました。

Img_0499  ただ、現時点では統合幕僚監部報道発表などで南西方面航空混成団の緊急発進にかんする情報も出ていませんし、宮古島周辺への中国空軍の圧力というようなものは無いようです。他方、Su30のような航空機が南西諸島へ進出するような状況となれば、那覇基地からF15を展開させて戦闘空中哨戒を実施する必要が出てくるでしょう。北朝鮮工作船事案日本海海上警備行動ではMiG21が接近したことから三沢基地のE2C早期警戒機が日本海に展開、小松基地のF15が戦闘空中哨戒を実施しています。1976年のMiG25函館亡命事件でもF4が戦闘空中哨戒に展開しています。

Img_0011  尖閣諸島は日本の排他的経済水域、特に等距離中間線を境界とする国連海洋法条約を採用する観点から重要で、天然ガス資源や漁業権のみならず立地上一部埋め立てで戦闘機が利発着できるような1600m滑走路が敷設できるため地政学上ここに日本へ敵対的な勢力が航空基地が建設されれば沖縄本島を含む我が勢力権にたいする重大な脅威となり、引いては第二次沖縄戦への危険性も増大させるものです。こうした観点からこの離島を防衛する必要性は日本のほかの場所と同じく高いわけです。

Img_06819 しかし、難点は那覇基地から尖閣諸島まで距離が大きいことでしょうか。空中給油機を進出させても、そもそもKC767空中給油輸送機が4機しかありませんので限界があります。南西諸島に航空基地があれば便利だったのですが、現在の自衛隊の編成が北方有事を想定した冷戦構造型の延長線上にあるもので、欧州安全保障協力会議や欧州通常戦力削減条約のような緊張緩和の制度が構築されていない極東において、この政策は誤りではないのですけれども、南西諸島防衛の必要性が高まっている中で冷戦終結後、脅威が相対的に和らいだ北海道の四個師団のうち二個師団を旅団へ縮小した際に削減された実質二個旅団分の人員を西部方面隊に転用しなかったという、つけが回ってきているようです。

Img_0059 もっとも、基地航空隊を配置しての防衛は、日本海軍が試みたのですけれども太平洋戦争でこれを上回る航空部隊を集中されて各個撃破されてしまいましたので、南西諸島を防衛するためには部隊の集中と分散を迅速に行える航空母艦の整備が望ましかったのですが、これは現時点で未知数ではあるものの海上自衛隊は過去から一貫してAV8のような航空機に関心を寄せており、現在ではF35Bのような進んだ航空機が世界では開発中、海上自衛隊も、ひゅうが型の、ひゅうが、が各地で訓練を重ね、横浜では、いせ、が公試中、より大型の22DDHの予算が認められ再来年度には24DDHの予算が展望されるので、動静を見守りましょう。

Img_4498 南西諸島に話を戻すのですが、那覇基地にF15一個飛行隊を基幹とする第83航空隊が展開していて、仮に那覇基地が弾道ミサイル攻撃により機能が麻痺した場合でも過去に滑走路工事などで那覇基地が使用できなくなった際に同じ沖縄本島の嘉手納基地や普天間基地の滑走路を利用して運用したこともありますので、お手上げ、とはならないでしょう。しかしどうにもならないのは尖閣諸島までの距離です。かといって、下地島や宮古島に基地を建設した場合には、これはこれで一つの選択肢なのですが、強化型シェルターか地下ハンガーを構築したうえでペトリオットPAC3を運用する高射隊を配置しなければ弾道ミサイルで無力化されてしまいます。基地隊を置いて緊急着陸ができるようにして、救難隊を配置して離島の災害派遣体制の充実と両立するあたりが妥当でしょうか。こうすれば給油拠点としても運用できます。

Img_6084 一方で、平時から恒常的に戦闘空中哨戒を行う、というのはいかにも仰々しいですし、防衛大綱に盛り込まれた航空自衛隊の戦闘機定数はこの任務を想定していません。そこで提示したいのは無人機の活用です。無人機といっても技術研究本部が開発中のTACOMのような高速度で小型の強行偵察型の無人機ではなく滞空時間に優れた低速型の無人機の新規導入をここで提案します。Su30クラスの航空機と遭遇すれば瞬時に撃墜されてしまう可能性が高いですが、滞空時間が24時間以上ある機種があり、先日フランスが導入を決定したアメリカ製MQ9などはサイドワインダー空対空ミサイルを運用可能、赤外線監視装置によりかなり遠距離の目標を発見できると同時に28時間の飛行持続が可能です。

Img_4584 航空優勢確保には早期警戒管制機と連携した戦闘機によってのみ成し得るといえるのですが、いかにF15といえども、一個飛行隊では限界です。元々敵対空域に進出して迎撃機を全て駆逐し、航空優勢を奪取するという想定で設計されたのがF15なのですけれども、操縦しているのは人間ですし空中給油により飛行時間をのばしたとしても数の限界にはどうにもならないわけです。一方で無人機であれば、滞空時間が長く操縦要員は交代が可能です。遠隔操作ですので電子戦を仕掛けられた場合も不安は残るのですが、自律飛行で帰投は可能ですし、人的損耗から乗員を防護することができます。低速ですから、対領空侵犯措置に用いることはできないのですが、大型で低速ですから巡航ミサイルと誤認される心配も少なく、理想的ではあります。

Img_6110 しかし、難点は、航空法上で無人機は無線操縦機とみなされるのであれば空港周辺で運用できない、ということです。航空法がここまで発達した無人機というものをそもそも想定していなかったわけなのですね。そして日本の飛行場は那覇基地を含め人口密集地の中にある場合が多いですので、事故の危険性が指摘されれば第一に日本ではこの種の航空機の運用実績が少ないですので反論できる要素が少ない、ということでしょう。納得させるのは大変ですし、導入しても運用試験で少なくない期間を要することも予想されます。一方、無人機は、これは議論の余地が生まれるかもしれないのですが防衛大綱の戦闘機定数には含まれない、といえるのですから不足する戦闘機を補うこともできるかもしれません。この点から、時間はかかるでしょうか、滞空型無人機の導入は真剣に検討されてもいいのかな、と考えます次第。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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パキスタン派遣の日本自衛隊国際緊急援助隊 水害孤立地域への空輸を実施

2010-09-13 12:25:36 | 国際・政治

◆緊急援助は短期集中が重要!

 パキスタン水害ですが、国土の二割水没という大水害に対して日本国内の報道はあまり為されていませんが、更に自衛隊のパキスタンでの活動についても殆ど報じられていません。

Img_3263  こうした中で、朝雲新聞がパキスタンにおける人道支援任務の状況を報じていましたので、本日はこちらから引用です。写真は今津駐屯地で撮影した第3飛行隊、第4飛行隊の写真が無いので代用です。9/9日付 ニュース トップ :パキスタン派遣隊 食料や医薬品空輸・・・ 陸自UH1ヘリから救援物資を降ろすパキスタン兵ら(9月4日、ムルタン南西100数十キロの物資集積所で) 

Img_7474  パキスタンの洪水災害救援に派遣された陸自「パキスタン国際緊急航空援助隊」(石崎敦士隊長以下約200人)は8月31日から、同国中部パンジャブ州ムルタンのパキスタン陸軍飛行場を拠点に任務運航を開始、陸自UH1多用途ヘリ3機で1日1~2便の割合でムルタンから南西約百数十キロの物資集積所などの間で人員や水、食糧などの救援物資、医薬品の輸送を行っている。

Img_9826  一方、UH1ヘリとともに物資空輸に使用される陸自CH47JA大型輸送ヘリ3機のうち、1機を載せた露ボルガ・ドニエプル航空のアントノフ124大型輸送機が4日、仙台空港を出発、翌5日にパキスタン東部のラホールに到着した。CH47はラホールで組み立てと試験飛行の後、自衛隊が拠点としているムルタンのパキスタン陸軍飛行場に移動してUH1ヘリとともに輸送任務に就く。

Img_2001  残る2機のCH47を積んで8月26日に横須賀を出発した海自輸送艦「しもきた」は9月18日にもパキスタンのカラチ港に到着する見込みで、9月下旬からUH1ヘリと合わせて全6機体制が整う。http://www.asagumo-news.com/news.html 朝雲新聞からの引用は以上です。

Img_9993  日本でも募金などは行われているのですが、どれだけ募金を集めても救援物資は空港に積まれていてもヘリコプターで空輸しなければ孤立地帯に届かない、という厳しい事態が続いていて、そこに自衛隊が派遣され、孤立地域への物資輸送を実施しています。この実情が日本ではあまり報じられていないのですよね。

Img_8213  今回の災害派遣は九州福岡駐屯地の第4師団を中心に200名で編成され、第4広報支援連隊の石崎連隊長が指揮を執り、第4飛行隊の多用途ヘリコプターによる派遣部隊が最初に3機、航空自衛隊のC-130H輸送機で高遊原駐屯地に隣接する熊本空港を出発、到着し既に任務に当たっています。

Img_9420  今回の記事は、この多用途ヘリコプター部隊に加えてロシアの大型輸送機により木更津駐屯地の第1ヘリコプター団に所属するCH-47輸送ヘリコプターがパキスタンに到着したという報道で、UH-1よりもエンジン出力が大きい同機による高山部での支援には期待が集まります。

Img_9220  パキスタンはアフガニスタンと高山部の国境を経て隣接しており、現在、災害派遣が遅れたことによる無政府状態に乗じてアフガニスタンから武装勢力が浸透を始めている状態です。こうした状況を抑止するにはパキスタン政府の災害復旧支援活動を国際社会が支援するほか無いのですが、ヘリコプターの活動さえも難しい高山部と寸断された道路、という状況が立ちはだかってます。

Img_0282  ここにエンジン出力の大きな陸上自衛隊のCH-47JAが加わるという事なのですが、もともとこの機体はアメリカ政府から自民党政権時代にアフガニスタンへ派遣を要請されるほど、米軍でさえ不足気味の機体で、米軍は前述の状況からアフガニスタン情勢との関連からも大型ヘリコプターの人道援助派遣を行っているものの、やはり足りない、という状況です。

Img_9602  既に浸透した武装勢力による政府機関への襲撃事案等も生じており、自衛隊の任務は今までの国際緊急援助隊派遣の実績と比べても活動地域によっては安全とは言いにくいのが実情です。しかし、NATO加盟国の多くがアフガニスタン派遣で手一杯、という状況にあるので、自衛隊の活動には責任も大きいです。

Img_9859  今後、オバマ政権はアフガニスタンからの米軍撤退を決定しているのですから、パキスタンはテロとの戦いの最前線となる可能性がありまして、いわばアフガニスタンへイスラム原理主義過激派組織を封じ込める最前線としてアメリカがパキスタンを最重要視するという構図になるわけです。

Img_6975  するとあまり長期間とどまっていた場合、多用途ヘリコプターや輸送ヘリコプター以外もアメリカから日本に対して派遣要請が、という事も考えられない訳ではありません。緊急人道援助ならば短期集中で行われるべきで、次の要請が来る以前に復旧を達成することが何よりも重要です。このあたりの見極めを政治は慎重に判断するべきでしょう。

HARUNA

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東海豪雨から10年 大規模災害に対応する自衛隊の配置体制

2010-09-12 22:25:27 | 国際・政治

◆名古屋を襲った500年に一度の豪雨

 同時多発テロから9年、という記事を掲載しましたが本日は一日遅れで東海豪雨の話題を掲載。

Img_1331 500年に一度と言われる規模の東海豪雨から10年が経ちました。名古屋は京都以上の大都市、人口は200万を越えるのですが、その大都市が機能付随に陥るという豪雨は、当方としても衝撃で、半年後、当時災害派遣に当たった第10施設大隊が駐屯する春日井駐屯地祭に足を運び、いろいろと聞いて回りました。あの頃はODの66式作業服が中心で、第10対戦車隊も健在でしたね。

Img_6242 当時第10師団は管区内に水害の多い部隊ということを教えてもらいまして、施設大隊の展示では、東海豪雨に際して部隊がどの時点でどのように投入されたか、という詳細が展示されていまして、被災地から若干距離はあったものの、守山駐屯地の師団主力とよく連携して迅速に対応していた、というのが印象的でした。

Img_6970 京都市にあっては災害即応は桂駐屯地の中部方面後方支援隊がその任務に当たり、福知山駐屯地の第7普通科連隊、大久保駐屯地の第4施設団を主力に災害を含む有事の際には対応することとなっています。桂駐屯地は京都市中心部へも比較的近く、加えて駐屯地も中部方面隊有数の規模を誇りますので100万都市京都が災害や大水害に見舞われ機能付随となった際にも対応することが期待されます。

Img_6399 阪神大震災においても伊丹駐屯地の第36普通科連隊は即応して阪急伊丹駅周辺での近傍災害派遣を行っていますし、災害派遣においては駐屯地が全国に配置されていることにより即応することができる点、そして自治体のと連絡体制を密にとることができ、加えて防災訓練なども実施が容易となることから、連隊や大隊規模での駐屯地の配置、ということは毎年多くの災害に見舞われるそれなりに意義があるといえるでしょう。

Img_4628 しかし近年、防衛費削減の観点から駐屯地の全国への均一的な配置というものを見直そう、という構想があるようです。財務省としては檜町の防衛庁跡地を売却した際の、六本木ヒルズ再開発などの事例がありますので、駐屯地を集約してその分都市部の駐屯地を売却すれば、という思いはあるのかもしれません。確かに師団が中演習場近傍に戦闘部隊の主力を駐屯させる、という方式は米軍などではとられている手法ではあります。

Img_48621  他方で日本の災害の多発、という状況に鑑みれば、もちろん激甚災害のような規模の事案に対して少なくとも24時間は対応できる規模の即応部隊を自治体や消防に警察が整備できるのならば話は変わってくるのですが、そもそも予算縮減がこの検討の骨子にあるわけですから、災害時、自治体に自衛隊を補う能力の整備ということは本末転倒であり無意味でしょう。

Img_0297 空中機動能力や海上輸送能力の抜本的強化により機動力を確保して、その駐屯地の配置を補う、ということも考えられるかもしれないのですが、しかし元々は自衛隊が日本列島の広大さに比べて人員規模が少ないわけですから、一機数十億円で十数人から数十人を輸送できるヘリコプターや、数百億円で数百人程度を輸送できる輸送艦を整備知るとしても一個普通科連隊が戦闘団を組んだ場合の規模は2000名、防衛出動であれば事前展開、ということもあり得るのですが地震予知連絡会が関し対象としているのは東海地震だけでして、台風や豪雨災害に対しては事前展開、ということがそもそも不可能なわけです。

Img_2086 昨今、当時500年に一度と言われた東海豪雨規模の災害は多発するのでは、と気候変動の観点から指摘されています。仮にですが今後、日本において豪雨災害や台風災害、火山や大規模地震よる被害が根本的に減少するような都市計画、例えば全道路の防火拡幅、高層建築物の長周波振動を含めた耐震化の徹底、建築落下物の全面規制というような方策や市町村の堤防かさ上げや河川付近の居住制限といった防災体制がとられる、というようなことがないのであれば、減災には限界があるわけで、防災を主眼とした全国への自衛隊の均一配置、ということは維持されるべきだと考えます。

HARUNA

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9.11アメリカ本土同時多発テロ(2001.09.11)から本日で9年

2010-09-11 22:51:34 | 国際・政治

◆大きな転換点、そして視野狭窄と変化

 本日で同時多発テロから9年を数えることとなりました。そこで本日は9.11からの世界について、少し考えたいと思います。

Img_2497  歴史の大河を一つ渡ったというような大きな事件、当時は当方夕食の途中、テレビ番組が突然と報道特別番組に切り替わり、いきなりもくもくと煙を上げる世界貿易センタービルが俯瞰風景で流されましたが、なにが起きていたのか日本の報道当局も把握し切れていなかったようで、大変なことが起きました、と連呼するばかり。

Img_6461  歴史の転換点、というのは後々の評価により定まるのでしょうけれども、どうやらテロらしい、ということで93年の世界貿易センタービル爆弾テロを思い出したものの、地下駐車場で爆発した事件とは異なり、911ではもう一機がタワーに突入し、ジェット燃料が鉄骨部分を溶かしたことでタワーは自重で崩壊しました。

Img_8886  二つのタワーへの衝突は振動となって周囲を揺らせたそうで、大学の特命教授の方はすぐ傍に当時いらして、地面が揺れた途端に周りのアメリカ人は避難を始めました、さてどうしたのですか、と聞くと曰く、マンハッタン島は古い地層の上にあるんだ!地震は起きることがない地層の上にあるんだ!そこが揺れたということは理由は一つだ!、と避難されたとのこと。

Img_4050  情報網とともに世界に映画のように伝えられたこの状況、後に友人となった方は当時留学中でこの日一つ中心部に遊びに行こうか、と窓の外を眺めたらば見覚えのある風景に煙が上っていた、と。一昔ならば、あのときなにをしていたのか、という引き合いに三島事件を持ち出す方が多かったようですが、昨今はこの911でしょう。多くは遅めの夕食中だったかたがおおいようですが。

Img_4145  国家と武装勢力の戦争というものは過去にいくつも例があるのですが、ここまで大規模なものは中々挙げにくくこの先どうなっているのか、文字通り、大変なことになった、これで世界は変わる、ということは認識されたのでしょうけれども、まさか9年を経ていまだにアフガニスタンで戦闘がくりひろげられる、ということは想像できなかったのではないでしょうか。

Img_9910  兆しはあったのです。新聞の国際欄を俯瞰して少し前にマスード司令官暗殺の一報が載せられていても、ここまで状況が急展開するとは考えるのが難しく、米軍がアフガニスタン空爆を開始した際にロシアの退役軍人が警告していたような米軍の苦戦は当時なく、やはりソ連の苦戦はアメリカの武器援助があって成り立っていたのか、と感じました。

Img_7650  そう思ったのもつかの間、2003年に米軍が今度はイラクに先制的自衛権の行使を掲げて介入した後には、イラク戦争に集中するあまりいつの間にかアフガニスタン情勢が緊迫化、ソ連のアフガニスタン侵攻のはるか以前、イギリスがアフガン戦争の際に独力で消耗戦に持ち込んだことを思い出すこととなりました。

Img_7661  そこで生じたのは覇権国でも視野狭窄に陥るのか、という事でしょうか。大変なことになった、という思いが先行して判断が曖昧になっていた、ということが当時いえたのでしょうね。アメリカでは愛国法が成立して少しでも国論に反したり素振りの怪しい奴は非国民で同時にそれはアメリカを脅かすテロリストだ、と拡大解釈されるなんとなく1950年代のレッドパージ、アメリカファシズムの時代を彷彿させる状況になりまして、その潮流に乗ってアメリカの中東政策に批判的なフランスを敵視する風潮から何故かフレンチフライが道路にぶちまけられました。

Img_7669  そこで突き進むところまで進んだ、というべきか勢いアフガニスタンを空爆するとともにイスラム原理主義というものの本質を見誤って元々社会主義革命で政権を獲得してイスラム原理主義とは水と油の政治姿勢を貫くイラクへ進攻、結果イラクの統治能力が破綻してこの空白に乗じて本当にイスラム原理主義の武装組織が浸透してくる、という状況にもなってしまった訳です。

Img_9004  テロリズムからアメリカを守る、という思考が先行に先行を重ねまして、なにが起きたかといいますと先制的自衛権の行使、早い話がやられる前にられ、という論理に正当性を与えてしまったことなのですけれども、これを元にイラクとアフガニスタンで実施した軍事行動はアメリカの国防装備体系に深刻な消耗を強いることになりまして、予算という面で響きました。

Img_8228  前方展開から機動力向上による展開を意図した米軍再編計画、中心となるべき将来装備は削減の対象となり、海軍のDD21将来駆逐艦を中心とした艦隊構想が遅れに遅れて規模は縮小、結果単価に跳ね返り駆逐艦が30億ドルに達して余計に計画を苦しめることとなり、海軍の次世代航空母艦計画にも影響が生じました。

Img_8999  進むべき道は明確だったのに、目的地が急に不明確になった、というべきでしょうか。理由は間接的なのですけれども戦費捻出の関係から空軍のF22調達計画も下方修正を強いられ、陸軍も次世代観測ヘリコプター計画がRAH66ごと破綻、次世代砲兵計画も破綻して代替となるはずの将来戦闘システムFCSは計画遅延と無理な仕様盛り込みのために風前の灯火、代わって車高が大きく正規戦には使いにくい無数の耐爆装甲車と航空優勢確保が運用の前提となる多数の無人機が揃う、という状況になっています。

Img_3106  こうした中で、海洋の自由や資源、世界秩序に関する構想が急速な経済成長を続ける大陸中国と現在の世界秩序を創世したアメリカとが合致しない、ということが明らかになり、気がつけば沿海域での能力では中国が急激にアメリカを追い上げているという状況になっていて、テロリストといいますか、アメリカが展開した先での近接戦闘に備えた装備から慌てて太平洋正面の安全保障に関して関心を寄せるようになりました。

Img_9142  近接戦闘よりも制海権確保と絶対航空優勢確保が必要になってきたわけでして、テロリストはサリンや炭疽菌、爆薬はもっていても潜水艦や戦闘機、駆逐艦や戦車は持っていない訳なのですからこうした装備を持っている中国軍がアメリカの世界秩序へ挑戦しようとした場合、その脅威に対応できるように装備体系を転換しなくてはいけないのだけれども、転換というのは急にはできないものです。

Img_5159  急激な装備体系の転換には慎重で基盤的防衛力を維持してきた保守的な日本の自衛隊が正解だったわけでして、個々の面では技術的に進んだものが多い米軍なのですけれどもこれはミクロ的に見た場合でマクロ的な面で方向性に問題があったわけです。そこで空対空戦闘に機動性の面で問題が指摘されるF35など、従来型の脅威へは必ずしも万全に対応できない米軍は今後苦労するのかもしれません。

Img_8310 一方で、大きく変わったのは日本も同じといえるでしょう。気づいたらば舞台の中央にいました。これまでは国際武力紛争とは距離を置いていたのですが、まさかアラビア海、イラクやパキスタンが活動範囲にはいるとは、と。同時多発テロの以前には日米安全保障条約の極東条項でさえも台湾海峡が含まれるのか、という議論があったのですから、日本がこうした遠い地域での任務を考える、ということは同時多発テロ以前では文字通り想定外だったはずです。

Img_7874  日本はかつてほどの経済成長を維持することが出来なくなりつつも、しかし現在の国際秩序の基盤の部分を支える重要なアクターであることには変わりありません。一方で同時多発テロ以降の一連のテロとの戦いによる戦費と、軍の装備体系への影響によりアメリカの特に通常戦力の面でのパワーは絶対的位置から局地的には相対的になることもあり、これは日本の安全保障にも及ぼす影響を無視することはできません。

Img_0916  結果的に、日本にとっての安全保障の選択肢は元々限られていたのですけれども、アメリカの覇権国としての地位が地域的に相対化した際、日本はある程度の責任を持った行動、特に自衛の面で決断が必要となるでしょう。一方で、同盟国としてのアメリカを見た場合、誤った情報に基づく行動に対しては的確な助言を与えられるような情報の集積と分析の能力を強化する必要があるように思います。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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