北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

全日空、成田⇔関空を5000円で結ぶLCCの傘下設立を検討

2010-09-10 22:27:26 | コラム

◆LCC新会社による低価格路線は歓迎、しかし・・・

 大阪と東京はJR在来線で8510円、新幹線自由席で新幹線特急料金4730円が加算されます。その東京と大阪を全日空が5000円で結ぶ計画を立てているとのことが報じられました。

Img_1212  関空-成田5000円、全日空が格安航空会社新設で検討  全日本空輸が、傘下に設立する格安航空会社(LCC)で、関西国際空港と首都圏の空港を結ぶ路線の運賃を5000円前後とする方向で検討していることが8日、わかった。東海道・山陽新幹線「のぞみ」の通常料金(東京―新大阪間)の3分の1程度に抑え、競合する鉄道や高速バスの顧客を奪いたい考えだ。 全日空は近くLCCの設立を正式に発表する。関空を拠点に2011年度中に国内線と国際線の運航を始める計画だ。具体的な路線は今後決めるが、国内線では、関空―成田便や関空―福岡便などを5000円前後、関空―那覇便を8000円前後で運航する案が有力とみられる。

Img_8870  国際線は中国や韓国を結ぶ路線が中心になる見通しで、運賃は大手の半額以下を目指す。 LCCはANAとは別ブランドとし、別の給与体系で新たに従業員や外国人のパイロットを採用するなど、大幅なコスト低減を図る。全日空が筆頭株主となるが、国内の旅行会社や流通業界などの異業種や海外のファンドなどからも出資を募る。副社長クラスに海外のLCCでの経営経験者を迎え入れることも検討している。 全日空は、関空会社に利用料が安いLCC向けの旅客ターミナルビル建設を求めて交渉しており、近く合意する見通しだ。(2010年9月8日  読売新聞http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100908-OYO1T00825.htm?from=top

Img_1123  JR東海ではリニア新幹線の建設計画を進めているのですが、自民党時代の緊急経済対策で行われた高速道路休日割引制度により乗客の一部が高速道路利用に流れてしまい、続いて高速道路無料化を掲げた民主党政権が成立した事により、その建設計画そのものは維持されるものの、開業時期については遅れる見通しと伝えられています。5000円という安く関空から成田まで移動でき、往復割引切符が頑張る山陽新幹線の新大阪博多間にも対抗できる関空から福岡までの5000円、そして鉄道では行くことが出来ないのですが、関空から那覇まで8000円、という価格は魅力なのですけれども、過当競争となって新幹線とLCCが共倒れになる事はないのか、運賃は5000円×200名でも100万円なので採算性は大丈夫なのか、そして安全性にも不安は残るのですが、ね。

Img_3171  日本ではスカイマークエアラインズがLCCとして頑張っていますが、全日空系列がLCCに参入する、という事は新幹線特急体系に対して価格競争やサービス向上という好影響をもたらすことになるかもしれません。前述の通り東海道新幹線、山陽新幹線の運賃は競合相手が無い状況で値下げは無く、一方で食堂車の廃止やビュッフェの廃止、コンパートメントの廃止、車内売店の廃止等簡素化が続いており、のぞみ増発による運行頻度の向上や車内無線LANの設置によるインターネット接続サービスなどに向かっています。一方で輸送能力は物凄く、東海道新幹線は全て1322席を確保している編成により運行されています。言い換えればスピードを重視してサービスを簡素化、ともとれる訳で、全日空系列のLCC,これが新幹線独占時代に対しての一石を投じる形になるのか興味は尽きません。

Img_2442  しかし、新幹線との競合を考えると格安航空という事なのでぜいたくは言えないかもしれませんが、国際空港として整備された二つの空港は中心部から離れているのが難点でしょうか。成田空港と関西国際空港ということで、羽田空港や伊丹空港と比べた場合、交通の利便性の低さが目に付きます。東京から名古屋まで一時間半、名古屋から大阪まで50分少々で結ぶ東海道新幹線は運行頻度も高く、航空機の場合特急を乗り継ぐように簡単に搭乗手続きが出来るわけではなく、手荷物検査や荷物預かりなどで時間がかかります。そしてそれ以上に成田空港からは京成電鉄のスカイライナーやJR東日本の特急成田エクスプレスでも時間的にも特急料金を含めた運賃の面でも羽田空港などとくらべ不利な気がします。伊丹空港も大阪モノレールをはじめ接続が便利ですが、関西国際空港となると南海電鉄の特急ラピート、JR西日本の空港特急はるか、などで移動したとしても時間がかかります。

Img_0241 京成電鉄の場合1200時に京成上野駅を出発した場合、スカイライナー29号で1200時発、空港線を利用して成田空港駅には1244時に到着して運賃は1200円と特急料金1200円を加え2400円。特急スカイライナーを利用しない場合、通勤車両を用いた京成本線を1207時に特急で出発し1348時に到着して所要時間は1時間21分、運賃は1000円です。スカイライナーと本線の通勤車両利用の特急では速度の差が如実に出ている、という事には驚きますが、一方で写真のスカイライナーに続いて登場した新型スカイライナーを利用しても、やはり遠い、というのが成田空港の印象でしょうか。

Img_1847 JR東日本を利用では、1233時に東京駅を出発した場合、成田エクスプレス25号で成田空港駅到着は1327時、所要時間が54分となっており、運賃は1280円に加え特急料金が1660円で2940円、グリーン車利用の場合は特急料金が3150円となります。特急を利用しない場合は1233時に京浜東北線か山手線で上野に1238時、1242時に常磐線快速で我孫子に1315時、成田線へ1316時出発で1358時に成田到着となり、所要時間は1時間25分で運賃が1110円となっています、乗り換えがある訳ですね。

Img_0005  南海電鉄利用では、もちろんこちらは成田空港ではなく関西国際空港まで、という事なのですけれども、難波駅を空港特急ラピートβ37号で1200時に出発、1237時に関西空港へ到着するので所要時間は37分、料金は運賃890円に特急料金500円が加わり合計1390円。特急を利用しない場合は1215時に出発する急行関西空港行きを利用した場合47分、特急サザン一般車を利用した場合1215時に出発し岸和田で急行乗り換え、関西空港へは1257時到着で所要時間は42分、運賃はともに890円です。難波までは大阪駅から若干地下鉄を利用しなくてはならないのですが、梅田と並び大阪の中心部です。

Img_3501  JR西日本利用では、空港特急が大阪駅ではなく、京都駅を出発して新大阪から空港方面に向かうので1215時に新大阪駅を特急はるか83号で出発、関西国際空港へは48分後の1303時に到着しまして、運賃は1320円に自由席特急料金が1150円、指定席の場合は1660円でこの場合の合計運賃は2980円、グリーン車利用の場合は特急料金が2390円。空港快速を利用した場合は大阪駅を1213時に出発して関西空港駅へは1318時に到着するので所要時間は1時間5分、運賃は1160円です。もともと神戸に建設する予定だった関西国際空港は和歌山県の泉佐野沖に建設されたため、やはり遠くなってしまっているのが難点です。

Img_8303  全日空が格安航空、関空 国内線充実へ弾み・・・専用施設整備で支援 全日本空輸が関西国際空港を拠点とする格安航空会社(LCC)設立を発表したことを受け、関西国際空港会社の福島伸一社長は9日、「専用ターミナルの整備を通じて、低運賃による新たな需要発掘の実現に協力したい」とのコメントを発表し、LCC専用ターミナルビルの建設を正式に表明した。関空会社は、減少が続いていた国内線の拡充や、増加が見込まれる中国人観光客らの取り込みにつながると期待している。  日本では現在、海外のLCC5社が12路線で運航している。

Img_7148  うち関空は国内で最多の5社7路線。首都圏より市場規模は小さいものの、発着枠に余裕があるためだ。だが、国内に本格的なLCCはなく、これまで国内線は飛んでいなかった。 関空の国内線は現在、経営破綻(はたん)した日本航空の減便などで、羽田や札幌など6路線だけ。1996年のピーク時(34路線)の6分の1近くにまで落ち込んでおり、国内路線網が充実することへの期待は大きい。関空会社幹部は「国内線が充実すれば国際線誘致の呼び水になり、国際ハブ(拠点)空港へと飛躍できる」と話す。さらに、アジア路線が増えれば、中国人観光客らの往来が増え、空港の需要も増す。 関空会社は、全日空が設立するLCCが2011年度後半の運航開始を目指しているのに合わせて、2期島に専用ターミナルの建設を進める方針だ。

Img_5622  運航便数は数年で1日40便程度になるとみられ、建設費は一般の旅客ターミナルよりも安い30億~40億円とされる。低コストで建設することで使用料を抑え、LCCの負担を軽くするのが狙いだ。 課題は、1兆円超に及ぶ有利子負債の金利負担で高額に設定せざるをえない着陸料だ。他の航空会社とのバランスから、LCCに限定して着陸料を割り引くことは難しい。専用ターミナルの使用料を安く抑えるだけで、LCCが安定的に運営できるかどうかは不透明で、新たな優遇策が求められる可能性もある。 利用者にとっては、LCCと既存の航空各社との価格競争が激しくなり、航空運賃が安くなることが期待できる。国内を長距離バス並みの料金で運航することになれば、新幹線など他の交通機関の料金の引き下げにもつながりそうだ。(2010年9月10日  読売新聞http://osaka.yomiuri.co.jp/eco/news/20100910-OYO8T00306.htm

Img_8537  こちらは本日10日の記事なので、LCC構想の続報、ということになります。関西国際空港の活性化に期待が寄せられる、という事なのですが、記事にある通り高額な空港使用料で折り合いがつくのか、という事に注視したいです。また、関西国際空港を起点とする、ということなので、いい方を変えれば格安航空会社の受け皿として期待されていた富士山静岡空港や茨城空港を始めとする地方空港、こちらは海外からの格安航空会社の乗り入れを期待しているので、一概に重なるとは言えないのですけれども、違った視点から競合となりそうです。国際線をみますと韓国のハブ空港であるインチョン空港とを結ぶ構想となるのか、観光客の旅客需要を見込んでいるのか、もし前者であれば、国土交通省の進める羽田空港のハブ空港化計画にも影響が出てくるかもしれません。

Img_6010  新幹線等の交通機関への割引、という点についてですが、今回提示された額は在来線料金とも競合するほどの低さです。ただ、ぷらっとこだま、前日までに予約が必要なのですけれども、こちらでは在来線料金に少し足した程度の料金ですし、山陽新幹線が高速道路料金値下げ対策で行った大幅な、こだま往復割引切符、では、在来線の往復料金と比べても割安感のある料金体系を構築していますので、東海道新幹線についても値上げ一辺倒だった運賃体系についても、割引切符などでは、大きな経営判断が行われるかもしれません。しかし、それ以上に、LCCが全日空系列とは言え開始された場合、既存の全日空や日本航空の航空路線にはどの程度影響が生じるのか、ということにも注目してゆきたいです。また、新会社がどういう機体を使い、どういう会社名になるのかも、興味がありますね。

HARUNA

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平成二十二年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報2

2010-09-09 19:52:08 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

台風9号が通過しまして、一挙に秋がやってきた、という涼しさですが土日はまた暑くなるとの予報、果たしてどうなるのか、そんな中の今週末の行事です。

Img_5171  今週末ですが、11日土曜日と12日日曜日に北海道の函館港で護衛艦くらま、が一般公開されます。護衛艦くらま、は佐世保基地を母港とする第2護衛隊群の護衛艦で、長く直轄艦として旗艦を務めてきました。満載排水量は7200t、ヘリコプター3機を運用する対潜中枢艦ですが、なによりも二門が並ぶ5インチ砲というのが、護衛艦という名前以上に戦艦(いくさぶね)という印象を強く見せつけるのがこの艦最大の特色です。

Img_6854  護衛艦くらま、といえば観艦式の帰路、横須賀から佐世保へ帰投途中の関門海峡で韓国貨物船が突如航路をはみ出してきて激突され、艦首を破壊されてしまった事は記憶に新しいですが、無事修理を完了し、今回は北海道で一般公開、ということになったようです。なかなか北海道では見ることが出来ない護衛艦ですし、足を運んでみてはいかがでしょうか。

Img_2709  海上自衛隊関連でもう一つ、砕氷艦しらせ、が秋田港へ入港します。今年は南極観測開始100周年にあたる、ということで11日土曜日には入港歓迎を兼ねてブルーインパルスが飛行展示を行うとのことです。白瀬中尉の白瀬日本南極探検隊が東京を出発したのが明治43年11月29日、排水量204トンの木造船開南丸という掃海艇の半分くらいの大きさの船に18馬力エンジンを搭載して明治45年1月28日に南極へ到達したのが日本の南極観測の始まり。それから100年ということですね。

Img_9962  南極観測は、地球温暖化に関する過去の気象データやオゾンホール拡大の現状を計るなど、大きな意義があります。そこで、観測隊の輸送支援にあたっているのが砕氷艦しらせ、ということです。通称は南極観測船、といわれているのですが、れっきとした海上自衛隊の砕氷艦です。先週は稚内に入港した、しらせ、ですが、この一般公開、土曜日に秋田港中島三号岸壁へ入港してブルーインパルスが飛行した上で、一般公開が二つ用に行われるとのことのようです。

Img_4262  陸上自衛隊の駐屯地祭としては九州で相浦駐屯地祭が行われます。相浦駐屯地というと、九州と南西諸島の有事即応部隊として期待されている西部方面普通科連隊が駐屯しているとともに、第3教育団本部、第5陸曹教育隊、第118教育大隊などが駐屯しています。西部方面普通科連隊は、西部方面航空隊と協力して、有事の際に切り込み部隊としての役割が求められているのですが、同時に西部方面隊の教育中枢であるわけでもあるのです。

Img_2277_1第3教育団、といいますと大津の第2教育団が中部方面混成団に改編されて、武山の第1教育団も新年度には東部方面混成団に改編されていて、遠くない将来には第3教育団も西部方面混成団へ改編される計画ですので、教育団の行事、というものは今のうちに見学しておいた方がいいかもしれません。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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島嶼部防衛:提案した輸送艦の普通科部隊洋上待機構想の補足

2010-09-08 23:50:55 | 防衛・安全保障

◆尖閣諸島での緊張状態を背景に

 尖閣諸島の事案、拡大する様子は幸い無いようです、現段階は、ですが。さて、先日掲載した一個普通科中隊の洋上待機構想ですが、考えてみればかなり大きな問題点がありました。

Img_6949  一個中隊、ということで洋上に常に海上自衛隊の輸送艦で展開出来る部隊を確保して、普段は遠隔地の演習場を利用する訓練に向かう途上で、少なくとも一個普通科中隊と少々が洋上に展開、としたのですが、難しい事は確かなのですよね。なによりも現行の編成はこういう待機を想定していない。しかし、島嶼部防衛という任務は存在するのでして、なんとかならないか、というお話。

Img_9269 戦車小隊と特科戦砲隊、戦車小隊と少数の支援部隊を以て即応部隊を編成して、転地訓練の移動という形で実質的な洋上待機を行う、という案なのですが、普通科部隊の能力に差異があるのです。例えば、74式戦車と軽装甲機動車か高機動車、FH-70榴弾砲により構成される部隊もあるのですが、違う事もあります。

Img_2884 待機部隊が第11普通科連隊なんかで編成されていれば、即応の際に相手は、輸送艦から降りてくるのは89式装甲戦闘車や90式戦車、99式自走榴弾砲、ということで相手はびっくりするでしょうね。まあ、個人的に89式装甲戦闘車かそれに相当する装軌式装甲車は普通科第五中隊を中心にもっと配備されるべきと思うのですが、これは後々。

Img_0669  実行可能か、という事なのですが、補足すると理想的な状況は“協同転地演習を恒常的に実施している状態”です。例えば、協同転地演習ということで一個師団がカーフェリーやRoRo船、輸送艦や輸送機、ヘリコプターで移動しようとしているときに「有事だ!」となれば、そのまま展開できるのです。もっともこの場合は鉄道貨物輸送の部隊はそうはいかないでしょうけれどもね。

Img_8353 しかし、師団規模の協同転地演習、ざっと40日程度を要するのですが、一年中行うと14個師団/旅団が必要になり、一巡してしまいます。これはこれで練度向上になりそうですけれども、実際にはそこまで訓練を行ってしまっても、師団訓練検閲を始め、独自の訓練がありますので難しい訳です。。

Img_9197 陸上自衛隊の任務は地上戦に打ち勝つ事であって、遠くへ機動するのは主任務ではなく手段である訳ですから、手段と目的の履き違えには注意が必要でしょう。そこで、中隊規模の協同転地演習を持続的に行って、常に洋上をどこかの部隊が移動している、という体制の構築を以て目的を達することは出来ないだろうか、ということです。

Img_0728  そこで、提示したモデルを、たとえで出してみます。今ざっと思いついたままに書いたので単純ミスもあると思います、お気づきの方はご指摘いただければありがたいです。洋上の移動を72時間として実質三日間で例えば大阪港から輸送艦おおすみ、で室蘭へ北海道の演習場に信太山第37連隊の中隊を移動。到着後第37連隊の部隊が降りると真駒内の第18連隊の中隊が入れ替わりで乗艦、入港時間は24時間で室蘭から舞鶴基地へ72時間かけ移動して第18連隊は饗庭野演習場で近接戦闘訓練を実施、これで一週間です。

Img_7915 舞鶴基地で米子の第8連隊の中隊を乗艦させて72時間かけて宮崎港へ移動して日出生台演習場でゲリラコマンドー対処訓練、入れ替わって国分駐屯地の第42連隊を乗せて72時間かけて仙台港に入港して王子原演習場での野戦訓練を実施、入れ替わるのが多賀城駐屯地の第22普通科連隊で72時間もかからないと思うのだけれども津軽海峡経由で小樽港に入港、ここで第22連隊と交代に北海道で二週間の訓練を行った第37普通科連隊が乗艦して、72時間をかけて名古屋港に。

Img_2474  ・・・、というかたちでしょうか。・・・、これで足してみると24日。土日を挟んでみれば、なんとか一ヶ月。移動は37連隊,18連隊、8連隊、42連隊、22連隊・・・。各一個中隊として、ざっと一個連隊に匹敵する数。・・・、すなわち、四か月で一個師団に匹敵する数が移動する訳ですね。協同転地演習は、北海道に向かう演習と北海道から展開する演習とぜざっと三か月と見積もって、この間訓練は洋上待機を行わなくていい、ということで・・・、それでも厳しい。戦車が不足する師団の場合には一個小隊ではなく2両で臨時部隊を編成しなくてはならないかも。

Img_0888   さて、やはり能力的に無理なのでは、というコメントを多数いただきました。洋上待機、となれば中隊規模とは言っても負担は少なくない事も事実です。選択肢としては、もちろん、中隊待機の態勢が確立するまでは、という暫定的な手段としてなのですが、米軍が紛争地近傍に事前配備船として旅団規模の装備を備蓄している方式があり、有事の際には事前配備船が紛争地に直行、兵員のみ輸送機やチャーター機で迅速に展開すれば装備と人員の合流で即座に完全武装の部隊を展開できる、という米軍の方法です。

Img_7168 しかし、現用部隊の装備更新さえ四苦八苦している状況では現実的ではないのですけれども、他方で、中隊規模であるならば、なんとかなるかも、と思ったりもしました。海上自衛隊としては、輸送艦に常時陸上自衛隊の車両が乗っていると邪魔でしょうが無いかもしれませんが、一方で予備自衛官の教育訓練を洋上で行うなどすれば、船上学校ではありませんけれども、バッテリーが上がったり、動かなくなることはないでしょう。

Img_3975 もっとも、整備訓練以外は船上では実施できないのですが・・・。しかし、予備自衛官は駐屯地警備隊や弾庫整備中隊に配属される、ということですし、何とかなるかもしれません。難しそうですが・・・、何分、難しい島嶼部防衛という任務を行おうとしているのですから、無理の中から難易度の低い無理を探して実行する、ということしか出来ないのですけれども…。

HARUNA

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自衛隊でも使われる屋外作業における熱中症への対処、キャメルバック

2010-09-07 23:43:59 | 先端軍事テクノロジー

◆熱中症は死に直面する危険なもの

NHKを見ていましたら九月に入って建築現場や施設保守の関係で熱中症で重篤に陥る方が増えているとのことですが、キャメルバックという携帯性に優れた水筒があります。

Img_6798  熱中症の危険あふれる暑い最中での外の務め、キャメルバック、これを揃えていただければ多少は乗り切れるのでは、と思います。とにかく水分補給が絶対必要です、その昔、給水の負担に耐えかねたイスラエル軍が水分補給を少なめにして作戦行動を継続する研究を行ったのですが、バタバタ倒れて、結局そんな努力をするよりは給水の努力をした方がいい、という結論が出されたりしています。屋外での作業では特に水筒をもって仕事が出来ない状況では、持ち運びと給水が容易で、自衛隊でも使われているほどです。これは背負うタイプの水筒で、普通の水筒のようにいちいち蓋を開けて飲まなくてもチューブが口元まで伸びているので作業しながらチューブから給水できます。

Img_8733_1  水筒なんて持ち歩けない、といわれるかもしれませんが、これならばなんとかなるかもしれません。キャメルバック、写真では情報小隊の斥候の方、バックパックから伸びているホースの様なものがキャメルバックのチューブなのですが、背負う本体はバックパックに収められていて、1.5リットル入りから4リットル入りなんてものもあります、90年代に軍の特殊部隊でたくさん水が入るし休憩のために立ち止まらなくとも給水出来るという事で使われはじめました。そして自衛隊にも愛用者が、とのこと。当初は陸幕も制式装備ではないということから使用には難色を示していたのですが、何年か前の軍事研究の記事で、イラク派遣が迫った頃、訓練を有効に行う観点から黙認されはじめた、と記述がありました。

Img_07001  軍用品(自衛隊用品)を使うのはちょっと難色がある方もいるかもしれませんが、民生品でも結構出ています。カバーは迷彩が自衛隊では使われているのですが、ブラックから登山用品店では蛍光色まであります。軍用、ということではあるのですけれども、民間用としての歴史も長く、もともとは砂漠のキャラバンが水を入れて背負った袋型水筒にたどり着くとのことで、砂漠戦、映画の「モロッコ」にでてくるフランス外人部隊あたりがイメージなのでしょうか、使用を始めたことから欧州で認識されるようになり、特に登山用品や自転車によるツーリング用品として普及が始まったようです。

Img_0699  写真左側のグレーのチューブがキャメルバックのチューブです。ここが背負った後ろの本体と繋がっていて水が飲めます。ちなみに隣の黒いコイル状のものは無線機、繋がった黒い丸いのは喉に当てて声帯から音を拾うマイクです。イラク戦争やアフガニスタン空爆後、米軍が大量に使用している様子が報道などに写っていたのですが、背中から転ぶと、何分、袋に水を入れているものですから体重で潰れて破裂してしまう、という難点が指摘されています。これが軍用のキャンティーン、2クオート入り水筒に劣る点で、普及を妨げた、といえるのでしょうけれども、使ってみると便利とのことです。当方はロードレーサーで短距離のツーリングの際には2クオート入り水筒二つを弾帯に装着して使っているのですが、今度上野に行ったらば中田商店で購入しよう、と考えています次第。

Img_2366_1  熱中症は重篤化すれば、簡単に死亡してしまう危険なものです。水を撒いて気化熱で気温を下げる、という方法もあるのでしょうが限定的で、やはり補給が一番の方法です。先日、暑い最中のロードレーサーでのツーリングを行った経験上、屋外にでて作業がある場合には水分補給でけっこう乗り切れてしまうのですけれども、工事現場などの近くを通った際、見てみてこういう水分を携行している人がいないのに驚きました。ペットボトルと比べれば多少、値段は張ります。キャメルパックは背負うカバー付きで5000円前後、単体なら2000円前後のものもあり、ナップサックに入れてチューブだけ口元に寄せて使うことも出来ます。ミリタリーショップの現用装備品を中心に扱っているお店か、登山用品店、アウトドアショップなどで入手できるので、お勧めです。

Img_1644_1  しかし、ニュースや新聞見ていますと、公立の小中学校で冷房のないところでは相当大変なようですね。高等学校なんかは受験の関係上、この時期に体育祭を設定していて熱中症、という事案があったり、東北の公立学校なんかは冷房は勿論扇風機もなく、仕方なく消防団が出動して校舎の屋根に放水したり、今更ながら校舎を植物のツタで覆って体感温度を下げよう、という試みもあるようです。ううむ、聞くところではドイツなんかは32度を超えると熱波警報が出て学校は休校になるそうで、日本も春休み、冬休みの時期を夏休みに振り分けて対処したり、37度以上の猛暑日には熱波警報の導入など、考えなければならないのかな、と思ったりしました。もっともNHKによれば、ここまでの猛暑酷暑は平安時代までさかのぼって分遣を見ても記録が無く、千年に一度の猛暑、ということで考えてください、と言っていたのですが。来年の夏はどうなるのでしょうかね。

HARUNA

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島嶼部防衛:日本版海兵隊編成よりも輸送艦で普通科中隊任務群洋上待機を!

2010-09-06 23:31:12 | 防衛・安全保障

◆有事即応!全国展開!!

 日本版海兵隊、ということで先日から少し載せている北大路機関ですけれども、本日は洋上待機、という方法から考えてみます。

Img_6852  輸送艦の増強が前提にはなるのですが、本日のお話を最初に少し挙げますと、普通科中隊を基本とした300名前後の一定数部隊を常時、防災訓練でも長距離射撃訓練でも、展開訓練でもいいので、輸送艦1隻分が常に艦上に待機している体制を構築できないか、ということです。戦車小隊や特科中隊、施設小隊とともに、連隊戦闘団の中隊版である中隊任務群、というかたちで、ね。

Img_3647  南九州の第8師団と沖縄の第15旅団を海兵隊のような編成に改編する、と検討されているようなのですが、まさか水陸両用大隊を編成に盛り込んで両用戦を行うわけにも行きませんし、特科連隊を縮小して代わりに航空連隊を盛り込んでヘリコプターを50機ぐらい配備して空中機動、という訳にも行かないでしょう。すると、方面航空隊に配備されている約50機のヘリコプターと方面普通科連隊との協同で空中機動を行う離島防衛、というのが予算的には限界でしょうか。

Img_8110  ヘリコプターは高いです。徒歩一個小隊を空輸できる多用途ヘリコプターは安価なUH1でも、縮小編成で3機分33~40億円、必要ではあるのですけれども一気に多数を調達することは難しいのです。さて、ここで考えるのが第8師団と第15旅団の部隊について、輸送艦と協同しての訓練を重ねて、上陸作戦に熟達した部隊としての海兵隊、いわば、一般にイメージされるような上陸作戦第一波を実施できるような部隊の編成、というところでしょうか。これならば日本の現在の装備体系でも実現可能だ、と思われるかもしれません。

Img_0647  しかし、この方策には大きな難点があります。協同転地演習として北海道の部隊を本土へ、本土の部隊を北海道に展開させる戦略機動能力向上の訓練を毎年重ねているのですけれども、輸送艦による訓練を第8師団と第15旅団が独占してしまった場合、他の師団や旅団は西方有事の際にどうするのでしょうか。遊兵化してしまうのではないでしょうか。そういう危惧から、個人的にこの手法には反対します。

Img_06081  おおすみ型輸送艦の輸送能力は人員で340名、短期的には1000名、そこに戦車を搭載できる車両甲板に500トン程度までの戦車、そして上甲板にFH70榴弾砲や96式装輪装甲車等を含めて搭載できます。しかし、第8師団で定数9000名、戦車44、特科火砲が60、それに無数の施設車両や支援車両などが加わりますので運べる数は限られています。

Img_4389  もっとも、RORO船を徴用して用いる、といいうことも考えられます。私自身、先日カーフェリーで輸送された第14旅団の車両をみる機会に恵まれたのですが、昨年、おおすみ型輸送艦に搭載されていた第10師団の車両よりもやや多く、もっとも輸送艦のように74式戦車を搭載しているところはみることができなかったのですが、輸送能力には驚かされました。湾岸戦争の兵力展開の際に日本政府へこの種の船舶の提供をアメリカ政府が強く認めたのも頷けました。

Img_2535  しかし、上陸第一波は、輸送艦でなければ無理でしょう。というのも、RORO船は港湾設備でなければ接岸できないので、LCACから揚陸させるわけには行かないのです。例えば、第二次大戦のノルマンディー上陸でも、港湾設備のない海岸にマールベリーという移動式の埠頭設備を展開させて通常のリバティー船から装備を揚陸させていたのですが、荷揚げ設備や支援設備が欠如していて効率が悪かったことから、要港シェルブールの制圧を急いだわけです。

Img_0188  つまり、輸送艦から港湾設備以外に揚陸して一定の部隊を展開、その部隊が港湾設備を制圧して、その港湾設備からRORO船を含む船舶での揚陸を行う、という方式が考えられるわけです。ちなみに、輸送艦が展開する海岸線付近は、空中機動部隊か空挺部隊が制圧して、その支援下での揚陸、というのが理想なのですが、ね。まあ、ガダルカナルの強行輸送のように、貨物船をそのまま海岸線に乗り上げて、ということも無いとは言い切れないのですが、基本は民間船が先頭を切って護衛艦とともに突入、というのではなく、輸送艦が第一波、第二波が民間輸送船で港湾設備から、というのがあり方でしょう。

Img_0122  さて、輸送艦で部隊を輸送するのですけれども、これをどうやるか。有事の際にさあ、輸送艦に乗艦だ!、と意気込んでも九州南部や沖縄近海に輸送艦が展開しているとは限りません、母港は広島の呉基地ですし、輸送訓練や防災訓練や友愛ボートなどで便利に活躍していますので、即座に乗れるとは限らないわけです。九州や沖縄で輸送艦を待つよりは、ヘリコプターや輸送機で出来る限り何度に分けてでも輸送した方が早そうです。

Img_3558  そこで輸送艦に訓練目的で移動する部隊を常時配置する、という案です。普通科中隊は全国に150はありますので、常時一個中隊、というのならば、港まで輸送する師団後方支援連隊や方面後方支援隊にはもの凄い負担がかかるのは分かるのですが、それでも何とかならないでしょうか。

Img_1585  北海道沖でも小笠原諸島付近でも新潟沖でもどこでもいいのですが、揚陸中か乗艦中か、それとも洋上を移動中か、とにかく一個中隊がそのまま洋上にいて、訓練に向かう態勢、しかし、待機中に有事、西方有事でも北方有事でも中央構造線地震でもいいのですが、何かあれば22ノットで現地に駆けつける、という事です。

Img_9011  普通科中隊は、旅団普通科中隊と師団普通科中隊とでは小隊の数も定員も違いますので規模は言い切れないのですけれども、師団の普通科中隊には軽装甲機動車か高機動車が配備されていて、対戦車小隊には87式対戦車誘導弾が、迫撃砲小隊には81mm迫撃砲が配備されていて、ここに戦車一個小隊で74式か90式、近い将来には10式戦車を4両搭載、特科中隊か戦砲隊を配置するとして2~4門のFH70榴弾砲、中隊本部には携帯SAMが配備されていますし、なかなかの規模といえるのではないでしょうか。

Img_6563  臨時編成の中隊任務群、初動では大きな威力を発揮しますし、そういう部隊が駆けつけられる態勢を整えていればもの凄い抑止力にもなるでしょうね。特定の、例えば第8師団や第15旅団を海兵隊のような運用に限定してしまうと、輸送艦に乗るまでが、まず輸送艦の回航を待たなくてはなりませんし、駐屯地から港湾設備まで近いとも限りません。戦車なんかは内陸にいますので、展開までに時間がかかりそうですね。一方、常時部隊が、それこそ東北の部隊でも北陸の部隊でも九州の部隊でも乗り組んでいれば、そのまま緊急事態の第一線に駆けつけられます。

Img_6015  想定はこういうところでしょうか、いざ鎌倉、鎌倉でなくともいいのですが、護衛艦とともに中隊任務群が駆けつけると同時に、担当管区の師団/旅団は出来うる限りの方面航空隊の支援を受けて空中機動の準備を行います。方面航空隊の全力支援を受けられれば、徒歩一個中隊、輸送ヘリコプターがあれば機数×2の高機動車か軽装甲機動車、もしくは120mm重迫撃砲を輸送できますので、対戦車ヘリコプターか戦闘ヘリコプターの支援を受けつつ当該地域か当該地域近傍に展開、輸送艦の到着まで力の限り抵抗します。

Img_9742  第1空挺団や中央即応集団も順次空路で展開して、揚陸できる態勢を構築、そこに戦車を先頭に中隊任務群が揚陸するわけです。22ノットで24時間の移動距離は1000km弱、突発的状況でもなんとか間に合うでしょう、間に合わない場合は次の洋上待機に備え陸上にある別の中隊任務群が別の輸送艦に乗り込んでもいいのですが。中隊任務群が戦車を中心に港湾設備の確保をめざし、その後にRORO船から管区の師団/旅団の本隊が展開、離島から敵を掃討します。

Img_9096  輸送艦の訓練とは別に、陸上自衛隊の輸送という洋上待機を行い、その上で災害派遣対処訓練や友愛ボート任務に備えるのですから、現在の3隻では足りません。インド洋給油支援の補給艦ローテーションを考えると、距離はインド洋よりも日本近海ですから近いものの、別の任務も大きいですから補給艦の5隻、という規模での苦労を考えれば最低6隻、可能ならば8隻の、おおすみ型輸送艦が必要になります。

Img_6959  ひゅうが型や22DDHでは、LCACを運用出来ないので代わることは出来ませんし、大型輸送艦でも一隻で同時に多方面へ展開することは出来ませんから駄目です、地方隊が運用する、ゆら型や輸送艇1号型も任務は軽輸送で戦車を輸送できないので対応できません。すると、おおすみ型と同等の輸送能力を持つ新輸送艦5隻が必要になるので、これは少々予算的に厳しい負担です。

Img_0025_1  しかし、基準排水量16500トン、満載排水量21500トンのフランス強襲揚陸艦ミストラルは、クルーズ船構造を利用したことで、NH90ヘリコプター8機、装甲車両50両、兵員450名とLCAC2隻を搭載できる能力があって2隻で建造費は9億1400万ドル、商船構造を利用すれば、ダメージコントロールなどで不安は残りますが思ったよりも安価に建造できたりするのです。やってみる価値はあるのではないか、と思ったのですがどうでしょうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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一回記事を作成して保存したらアプリケーションエラー、二回目の記事作成は回線自動切断で全文消失

2010-09-05 23:26:07 | 防衛・安全保障

◆話題は韓国イージス艦二番艦引き渡し

 POMERAで作成したHTML形式の文書を記事に使うのが一番安全と言えば安全なのですが、どうしても変換ミスが多々出てしまって、これはよく指摘されます。

Img_1785_2  するとどうしてもPCで作成するしかないのですが、一時間以上かけて作成した記事が飛んでしまうと、再度作成するのは非常に大変です。閉じてしまった資料をもう一度開いて並べなければなりませんし、写真も再度、決して速くないワイヤレス回線で一枚一枚UPしなければならないからです。しかし、再度作成して、今度は短めなのですがこれが飛んでしまうと、ちょっと、ね。今度は回線が勝手に切断してしまいました。同じ記事を三回連続で書く、というのは、流石にいやになりますので、少々はしょった記事になりますがご了承ください。日経新聞に掲載されていた、韓国海軍へのセジョンデワン級イージス艦二番艦引き渡しの記事です。記事には引き渡し、とありますがこれは就役ではなく公試実施のための海軍への引き渡しを意味しているようで、正式な竣工は2011年となるようです。

Img_0406_2  韓国海軍にイージス艦2番艦、大宇造船海洋が引き渡し 【ソウル=尾島島雄】韓国の大宇造船海洋は31日、韓国南部の巨済島にある造船所で建造していたイージス艦を韓国海軍に引き渡したと発表した。2008年末に就役したイージス艦に次ぐ2番艦となる。北朝鮮による攻撃を受け哨戒艦が沈没した韓国海軍は、新造艦の就役を機に国防力を再構築したい考えだ。艦名は「栗谷李珥(ユルゴクイイ)」。国防への備えを説いた朝鮮王朝時代の学者にちなんで命名された。7600トン級で最大速力は30ノット。120基以上の対艦、対空ミサイルや長距離タイプの対潜水艦魚雷などを搭載する。約1千個の標的を同時に探知し、そのうちの20の標的を同時に攻撃できるhttp://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE1E3E2E0948DE1E3E2EAE0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL

Img_1805_2  韓国海軍は、冷戦時代、北朝鮮のミサイル艇や魚雷艇、潜水艦に対処するべく第二次大戦中のアメリカ製駆逐艦を艦隊旗艦として、2250㌧のウルサン級フリゲイト9隻、1200㌧のポーハン級コルベット24隻を建造してきましたが1998年から3000㌧以上の大型水上戦闘艦の整備を開始、現在は3800㌧のクワンゲドデワン級3隻、5500㌧のチュムンゴンイスンシン級6隻を整備していて、このうち二隻は昨年舞鶴基地を表敬訪問した際に撮影することが出来ました。海上自衛隊の護衛艦は、はつゆき型で4000㌧ありますし、むらさめ型は6200㌧、たかなみ型で6300㌧ありますから、あまり韓国艦は大型、という印象はないものの、セジョンデワン級イージス艦は10290㌧と、10000㌧の、あたご型よりも大きく、大型艦、という名に恥じないものとなっています。しかし、1998年から韓国海軍は今回の二番艦を含めて12年で11隻を建造してきましたが、旧式艦の除籍を補えない状況に陥っています。

Img_1817_3  平均艦齢、就役した艦一隻一隻の艦齢を総計して就役数で割った数を見てみたのですが、ウルサン級9隻は22.4年、ポーハン級23隻は22.58年となっていました。水上戦闘艦の寿命は24年とされ、海上自衛隊の、はつゆき型護衛艦は頑張ったのですが28年で除籍されました。みてゆくと、韓国海軍は、もう少し建造ペースを上げなければ水上戦闘艦勢力は、今後大きく減退してゆくことになる訳です。570㌧のユンヨンハ級ミサイル艇を40隻建造して、コルベットと92隻が就役しているドルフィン級高速哨戒艇の後継に充てる、という計画もあるのですが、このミサイル艇は潜水艦に対処することはできませんし、設計の不具合も指摘されていますので、将来的には韓国海軍はコルベットの建造を再検討しなくてはならなくなるかもしれません。

Img_1917  韓国は長大化するシーレーンを睨んで艦艇を大型化させたのはいいのですが、北朝鮮の沿岸での脅威に対処するには、大型水上戦闘艦というのは使いにくいのですね。日本のように距離がある場合は、航続距離に限界のある小型艦艇は進出が難しく、個艦防空能力が極めて低いことから多数が運用されても、能力は非常に限定的なのですが、韓国は沿岸が繋がっているためかなり大きな脅威となります。一方、装備体系を一旦一つの方向にシフトしてしまうと、用兵体系から運用基盤まで長期的な変化が生じてしまいますので、再転換は容易では無く、出来る限り先までを見通して装備体系というものは考えてゆかなければ、限られた国防費が無駄に使われてしまう、ということにもなりかねません。韓国では、黄海海戦の際に哨戒艇が撃沈されたことから取り急ぎミサイル艇の量産計画を発表しています。そして今年に入り北朝鮮によりコルベットが撃沈されると、沿岸哨戒能力の再構築を計画しているとのこと。

Img_1927  これらをみていますと、韓国海軍のイージス艦は、あたご型や、アーレイバーク級のような艦隊防空型ではなく、ノルウェーのフリチョフナンセン級のような中型のもので数を揃えるべきだったのでは、と思います、防空中枢とともに艦隊防空では無く僚艦防空程度の能力を持つ艦を日本海と黄海に常時一隻が稼働できる程度に、ということです。また、3000㌧クラスの汎用艦を毎年2隻程度は建造する方が優先度は高いのではないか、と思ったりしました。韓国の海上防衛力と北朝鮮への抑止力は、そのまま日本とも関係してきますので、対岸の出来事、と無関心でいる事は出来ないのですし、ね。

Img_1940  韓国海軍としては、ひゅうが型を始めとして独自の作戦能力を整備している海上自衛隊に代わり、米海軍空母機動部隊の護衛を考えているように、例えばリムパック等における運用をみていますと思えてくるのですけれども、一方で本来有していた沿岸海軍としての能力の重要性も優先度が高い点への認識が薄いように感じました。他方で、長期的な防衛に関する視点の欠如は、昨今の日本についても当てはまるので、何とも言えないようにも思うのですが、一旦、装備体系の舵を切ってしまうとどうしても優先度や予算配分に影響が出てしまいます。どういった脅威が想定され、どういう対応能力が必要なのか、という命題は慎重かつ大胆に数字を分析して導き出す必要があると思ったりした次第です。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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ハワイ(SSN-776 Hawaii)横須賀入港 ヴァージニア級原潜初の日本寄港

2010-09-04 20:50:23 | 在日米軍

◆米海軍は潜水艦の六割を太平洋艦隊に配備

 ハワイは海洋底マントル対流の関係で少しづつ日本に近付いている、といわれていますが、ハワイが日本に到着しました。。

Img_6925  NHKニュースを見ていましたら、最新鋭の原子力潜水艦ヴァージニア級のハワイが横須賀基地へ入港したとのことです。原潜といえばロサンゼルス級を遠くからしか見た事のない当方は驚きました。さて、潜水艦といえば防衛予算概算要求を見ていますと潜水艦一隻の予算が計上されていて、潜水艦あさしお後継艦に充てるとのこと。あさしお、はAIP実験潜水艦として知られ、はるしお型にAIP区画を追加装備した潜水艦です。これができるのならば、おやしお型のAIP化改修という事もあり得るのかな、という視点を加えて一部で検討されているとされた潜水艦勢力拡大、現在16年で現役引退している潜水艦を諸外国並みに20年以上運用することで保有潜水艦数を増大させよう、という試みがもう少し先延ばしされる事になりました。一隻建造しても一隻除籍してしまうのですから、ね。ゆうしお型はともなくとして除籍が始まった、はるしお型はまだまだ使えると思うのですが、ね。潜水艦脅威に対抗するには通常動力潜水艦の哨戒も重要性はかなりある訳でして、まだ使える潜水艦を、・・・。もっとも現在の予算概算要求では現行防衛大綱の縛りがあるため、こう記述したともいえるのですが。

Img_5711 そんななかで横須賀基地に米海軍のヴァージニア級原潜が入港したとのことです。米最新鋭の原潜 日本に初入港 9月3日 21時8分   ・・・中国の海軍力増強などを受けて、アメリカが太平洋地域への潜水艦の重点配備を進めるなか、アメリカ海軍最新鋭の原子力潜水艦が、3日、国内では初めて神奈川県の横須賀基地に入港しました。横須賀基地に入港したのは、アメリカ海軍のバージニア級原子力潜水艦「ハワイ」(7800トン)です。「ハワイ」は先月、母港としているハワイのパールハーバーを出港したあと、初めてアジア周辺の海域に入り、3日、乗組員の休養と補給のため横須賀基地に入港しました。「ハワイ」などバージニア級潜水艦は、中国の海軍力増強や対テロ作戦などに対応するため、アメリカ海軍が導入を進めている最新鋭の潜水艦で、巡航ミサイル「トマホーク」の発射装置を備えているほか、特殊部隊を陸地にひそかに送り込む能力も備えています。潜水艦「ハワイ」は、今後半年間、アジア地域にとどまり、第7艦隊の指揮下でグアムや日本国内の基地などを補給の拠点にして任務に当たるということです。アメリカ海軍は、潜水艦の60%を太平洋地域に重点的に配備する計画をすでに完了し、朝鮮半島情勢や中国海軍の動向への警戒を強めていく方針で、バージニア級潜水艦が、今後、その中心を担うものとみられます。http://www.nhk.or.jp/news/html/20100903/t10013758831000.html

Img_1981  ヴァージニア級原潜は、ロサンゼルス級攻撃型原潜の後継艦として建造されているもので、水中排水量7800㌧、というのは大きさだけを見た場合の話ですが海上自衛隊の、そうりゅう型潜水艦の4200㌧よりもかなり大型の潜水艦です。水中速力34ノット、潜航深度488㍍で533mm魚雷発射管4基と艦内に38発の魚雷など各種装備を搭載できるほか、トマホーク巡航ミサイル用の垂直発射器12基を搭載している潜水艦で、SSN-776ハワイは2007年に就役した新鋭艦です。現在、ヴァージニア、テキサス、ハワイ、ノースカロライナ、ニューハンプシャー、ニューメキシコが就役、来年にはミズーリが就役します。この名前を聞くと映画“沈黙の戦艦”の戦艦ミズーリを思い出す方がいるかもしれませんが、実は戦艦の名前は潜水艦発射弾道弾を運用する戦略ミサイル原潜に継がれていた名称でした。戦略ミサイル原潜は100~454?の核弾頭を複数搭載した潜水艦発射弾道弾を多数搭載したもので、その威力は一たび使用されれば世界史を書きかえる威力を持っているのですが、その名前をそのまま攻撃型原潜につけた、ということがヴァージニア級の米海軍から寄せられる期待度の高さを示していると言えるやもしれません。

Img_19701  米海軍はシーウルフ級原潜をロサンゼルス級の後継潜水艦として配備したかったのですが、水中速力39ノット、660mm魚雷発射管8基と50発の各種装備を搭載した水中排水量9200㌧の原子力潜水艦は、冷戦時代のソ連将来潜水艦を想定していただけあって物凄い高性能なのですが建造費も大きくなってしまい、一番艦シーウルフが就役したのは1997年、二番艦はコネチカットで州の名前が冠せられ、最終艦はジミーカーター、本来原子力空母に冠せられる大統領の名前が冠せられるほどの建造費となってしまい、三隻で建造が終了しました。シーウルフ級はコストと高性能が大きくなりすぎたためヴァージニア級はこの廉価版、という形になっているのですが、廉価版とはいえ要求性能は高くなっており、一方で民生用コンピュータを最大限使用することで機器更新の頻度の向上と処理速度の向上を実現、船体構造の工夫で民生用コンピュータの脆弱性を補った、という設計を採っています。ヴァージニア級の寄港はシーウルフ級が横須賀に寄港した事もあるので、ヴァージニア級が寄港したという事が戦略的な意味は、そこまで大きくも無いのかもしれませんが、一定の意義はあります。

Img_7063  なお、アメリカ海軍は原子力航空母艦を中心に多数のイージス艦を横須賀へ前方展開させていて、佐世保には強襲揚陸艦やドック型揚陸艦を中心とした強力な両用戦部隊を前方展開させているのですが、潜水艦は展開させていません。海上自衛隊の潜水艦隊が横須賀と呉に配備されているのですが、日本は原子力潜水艦を保有していませんので、冒頭に述べたとおり当方も原子力潜水艦を見たことが限られていますので、その分、横須賀への寄港は貴重です。回数としてはそれなりに来ているのですけれども、常駐はしていないわけです。しかし、通常動力のキティーホークに代わり原子力推進のジョージワシントンが日本に前方展開している訳ですし、遠からず横須賀に原潜が前方展開するようにもなるのでしょうか、ね。ハワイは、日本を起点として数ヶ月間は周辺での対潜訓練等各種訓練を支援するとのことですが、前述ん太平洋艦隊の潜水艦集中を加えて中国海軍に対する米海軍の決意を示すもので、米中関係の緊迫化を明示しています。

HARUNA

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平成二十二年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報1

2010-09-03 18:20:37 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 夕方からは冷涼な空気が水辺に戻るようになり夜には鈴虫が音色を響かせるようになった一方で日中は依然として暑い今週末の行事を北は稚内から南は那覇まで紹介。

Img_8753  北海道の当別分屯基地では開庁55周年記念行事が行われます。石狩郡当別町にある当別分屯基地は第45警戒群のレーダーサイトで、一部施設が公開されるほか千歳基地や三沢基地の航空機が航過飛行を実施、警備小隊による近接戦闘展示等も行われるようです。当別はいった事が無いので岐阜で代用。

Img_6050  秋田駐屯地祭、秋田駐屯地創設58周年記念行事が行われます。JR土崎駅から徒歩20分の位置にある秋田駐屯地には第21普通科連隊を始めとした部隊が駐屯しており、0800から1430まで一般公開され、市中パレード、観閲式、コンバットショー(?、訓練展示のことかな?)等が実施されるとのことです。市中パレードは行っている駐屯地も多くはなく、一見の価値あり、というところでしょう。秋田はいった事が無いので相馬原の写真で代用。

Img_6517  明日9月4日と日曜日の5日、北海道稚内港に海上自衛隊の砕氷艦しらせ、が入港します。艦艇広報ということで、一般公開が行われるようなのですが、旭川地方協力本部HPを見ますと、“お申込みお問い合わせが必要なイベント”に区分されています。共同通信によれば29日に横須賀を出航して、訓練と広報の為に本日稚内入港、6日1000に出航して、秋田港や舞鶴基地等を回る予定とのことです。

Img_9808_1  下関市あるかぽーと、にはヘリコプター搭載護衛艦ひえい、が入港します。来年三月に護衛艦いせ、にその任を譲り除籍される事になっているため、はるな型護衛艦ひえい、を見学することが出来る機会は僅かです。日曜日は0930~1130,1300~1530に一般公開、月曜日は0900~1100,1300~1530に一般公開予定です。映画男たちの大和では本艦機関室が大和機関室として撮影され、航跡も大和の航跡として合成素材に利用されたとのことです。

Img_7039  ひゅうが、が沖縄で一般公開されます。土曜日、0900~1500、沖縄県那覇新港9号岸壁で19000㌧の大型護衛艦が一般公開されます。国際コンテナターミナルが会場となっているので、おもろまち那覇第二地方合同庁舎の駐車場が一般開放され、岸壁までシャトルバスが運行されるとのことです。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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防衛予算を圧迫する防衛省職員子供手当 児童手当だけで年額98億円

2010-09-02 23:46:16 | 国際・政治

◆子供手当の為に増大する防衛予算!

 丸を読んでいて少々驚いたのですが、国家公務員世帯に支給される子供手当は各省庁の予算枠で実施され、これが職員数の多い防衛省の場合、かなりの負担になっているとのことです。

Img_6522  これは軍事総合誌「丸 2010年10月号」のdefense reviewのコラムにて紹介されていたのですが、平成19年度防衛予算に占める児童手当だけで98億円に達しているという事で、これが子供手当満額支給となれば最低でも現行の数倍の支出となるのでは、と記されていました。児童手当が防衛予算から捻出されていた、という事も知らなかった不勉強な私ですが、子供手当も防衛予算から、それも縮減傾向にあり、装備品調達や訓練にまでしわ寄せがきている防衛予算から、隠れるようにしっかりと子供手当が引かれていたとは、と驚きました次第。

Img_6523  児童手当は、十二歳以下の児童が対象で一人目、二人目の児童に対して月額5000円、三人目の児童に対しては月額10000円を支給する、という制度で厚生年金加入者の場合、数字は人数により異なるのですが年収532万円以下が受給対象となります。防衛省は、受給額が98億円とのことですが、これは省庁では一位で、二位の国土交通省が受給額19億円といいますから、この額はかなりの負担です。子供手当は、現在半額の13000円が支給されていて、これでも一人目二人目の児童手当が5000円ですから、かなりの増額なのですが満額支給の26000円となった場合、これを全て防衛省が防衛予算から捻出する場合、かなりの負担となり、中期防あたりでみると護衛艦二隻分程度の費用となってしまう訳で、予算全体の抑制を求められている防衛省としては、厳しいものがあります。

Img_0972  一人あたりの支給額は二人目までの子供で五倍、そして所得制限がありませんので、受給額と受給対象の増大で下手をすると300~400億円、ということにもなるのでしょうか。防衛予算一割減を求めつつ、防衛予算削減要求額の一割に当たる部分が増加する、という事にもなる訳で、これは厳しい。しかも、子供手当分が増額した防衛予算は、そのまま、日本の防衛予算として各国の国防費と比較される訳ですから、日本の防衛力に実質影響の少ない子供手当の部分でも、増額して防衛予算が膨れれば、そのまま額面では軍拡している、という非難の要素を創ってしまっている事にもなります。いわば、子供手当の為に増大する防衛予算、子供軍拡、ううむ、何か腑に落ちないのは気のせいなのでしょうか。

HARUNA

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平成23年度防衛予算 概算要求の俯瞰② 中期防・防衛大綱・政権未定下での予算作成

2010-09-01 12:50:33 | 北大路機関特別企画

◆見通し立たない状況下

 九月最初の記事ですが、防衛予算概算要求について、本日は見通し、という点に注視して考えてみたいと思います。

Img_0704  自衛隊の任務は世界中で継続、陸上自衛隊のパキスタンでの活動が開始され、国土の1/5が水没という未曽有の大災害に見舞われた災厄に国際社会が一致して立ち向かう、という姿勢を示しました。海賊対処任務では累積1178隻を護衛、航空哨戒も294回を数える事となりました。

Img_0834  こうしたなかで、国内の政治情勢の不透明さが予算面に暗い影を落としています。民主党総裁選が公示され、小沢前幹事長と菅首相が総裁の座を争う形となっています。税収と国債新規発行分を合わせても20兆円ほど不足するという来年度予算の枠を菅首相は提示したのですが、無駄を削減してこういう状況ですので、概算要求はどうなるのでしょうか。

Img_8126  また、政権公約としてマニフェスト完遂を目指す小沢前幹事長が総裁となれば、子供手当や高速道路無料化、農家個別所得保障に高校授業料無償化を実現するその財源はどうなるのか、未知数です。場合によっては鳩山内閣が成立した際のように再提出を命じられる可能性もあり、概算要求というものはどうなるのか、現時点から不安です。

Img_8073  付け加えれば、政権交代を契機として昨年は中期防衛力整備計画の確定と、防衛大綱改訂が中断され、いわば長期計画と中期計画を明示しないまま、そこれそ当たり障りのない装備計画を現行の防衛大綱に基づいて実施している、という状況で、ここまで視程不良が続くのはこれは異例です。

Img_4282  現在の防衛大綱は、弾道ミサイル防衛の重要性に鑑み、陸海空の重装備について、その数を下方修正して費用を捻出することが主眼となった構成となっており、中国海軍の規模拡大と行動活性化、そしてロシア軍の極東地域における戦力向上は想定されていないという内容になっています。

Img_7354  弾道ミサイルによる日本本土への脅威は依然として無視できない状況ではありますが、日本本土への脅威に備える一手段として弾道ミサイル防衛を提示しているのですから、脅威が高まる本土直接武力侵攻という事案や島嶼部への脅威という事案も存在する以上、防衛大綱に明示して基盤を構築する必要がある訳です。

Img_3731  中期防衛力整備計画の未定下での二年連続の概算要求提出も前代未聞です。今回出された防衛予算概算要求では、既に数年前から実績を積んできた多年度分の一括取得による取得費用節約、という方策が用いられているのですけれども、先の数年分を一括発注するこの方式は中期防衛力整備計画が間もなく切り替えられる、という状況下で、少し説得力が無いようにも思えます。

Img_11011  そもそも、どういう脅威が我が国や国民に迫っており、この脅威から社会の安定と秩序を維持することで国民福祉を実現する、ということが防衛政策の最大の目的なのですが、シビリアンコントロールを徹底するわが国において、この政策を画定するのは政治の責務です。

Img_1970  今回の予算は、このように、内閣がどうなるのか未知数、防衛大綱に盛り込まれる自衛隊の任務の範囲が未知数、中期防衛力整備計画が定められていないためどの程度の防衛力を来年度整備すればいいのかが未知数、と未知数尽くしの概算要求となっています。そして防衛のみならず、わが国がどのような来年度を迎えられるかも、未知数である、という現状の延長線上にあるようにも思えてきます次第です。

HARUNA

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